「憧れ」の香港と「親戚」の台湾:異なる形の親日感情 /香港レンズ
日本でも人気の観光地である香港。そして「哈日族(日本フリーク)」という言葉が生まれるほど日本文化を愛する台湾。
一見すると同じように見える「親日」の感情は、実はその質が大きく異なることを、私は最近の往来の中で強く感じています。
香港:手本にしたい、あこがれの国
香港では近年、人口の3分の1が日本を訪れ、連日行列のできるスシローやミスタードーナツの進出など、日本への関心は高まる一方です。(下:以前のコラム参照)
その思いは、まるで私たち昭和世代が抱いていたアメリカ文化への憧れに近いのかもしれません。
ハリウッド映画に心躍らせ、コカ・コーラに青春を重ねたように、香港の若い世代はドラえもんやピカチュー、ジブリ作品といった日本のポップカルチャーと共に育ち、日本文化は彼らのアイデンティティの重要な一部となっていると感じます。
また私の香港人のドローン仲間は、「立鳥後を濁さず」という日本の言葉を引用しながら、日本の山々でのトレッキング時には「日本人がするように」現場をより美しく保つと語ります。まさに、憧れの対象としての「日本」を体現しようとする姿勢がそこからは感じられます。
台湾:まるで古くからの家族のように
一方、台湾の人々の日本への思いは、より深い歴史的な絆に根ざしているのではないでしょうか。
疲れた体を癒やそうと訪れた台中の盲人マッサージ店で、年配の女性は母語話者と見紛うほどの自然な日本語で「力を抜いて」「少し薬を塗ってもいい?」と、まるで親戚のおばさんがするように接してくれました。
2年前に九份の宿で出会ったオーナーのおじいさんは、「私は小学校まで日本語で話していたんだよ」と懐かしそうに語り、今回訪れた台中の「宮原眼科」は日本統治時代の建物をそのまま活用していることに驚きました。
約50年に及ぶ日本統治時代の記憶は、今も生きた形で息づいているのです。
商いの文化にも違いが表れます。香港の喧騒に慣れた身には、台湾の「ゆとり」が印象的です。レストランでの食事一つとっても、香港の効率重視に対し、台湾では日本と同じような、ゆったりとした時の流れを感じます。
これからの絆のために
香港人の「憧れと尊敬」、台湾人の「親近感と家族的な愛情」。この異なる形の絆は、両地域の歴史や文化が育んだかけがえのない個性です。これからも、一人一人の草の根の交流を通じて、それぞれの関係性を大切に育てていきたいと思います。
※香港人の妻とすでに香港に30年以上住んでいるので香港人の感情は比較的理解していますが、台湾の経験はまだまだ浅く、勘違いもあるのかもしれません。より多くの方々の経験や見解をお聞かせいただければ幸いです。
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