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書く習慣 Day15 | 誰かにオススメしたい本・映画・アニメ・ドラマ
なんとなく過ぎていく日常が退屈に思える。何かインパクトが欲しいけど、物理で体験するのはちょっと刺激が強すぎる。
そんなとき、何かしらの「物語に触れる」のがちょうどいい。
現実世界から離れて作品に没頭しているときのゆるやかな快感。現実世界に戻ってきたときのレモン水のような爽やかさ。
本、映画、アニメ、ドラマからしか得られない栄養ってあると思います。
そして、それらを摂取したあとに数日間余韻に浸るのが個人的に好きだったりします。
ということで、物語の余韻に浸りたいあなたにオススメしたい作品を紹介します。ちょっと長くなりました。もしよかったらお付き合いください。
【本】そして生活は続く
“事実は小説より奇なり” という言葉があるように、日常にひそむ物語こそ複雑でおもしろい。あらゆる方々のエッセイを読むたびに感じることだ。
星野源さん初のエッセイ集『そして生活は続く』もそのひとつ。ふとしたときに手に取り、何度も読んでしまう。
源さんの書く文章は、とにかく誠実。それは「嘘がない」という意味ではなく、自分自身としっかり向き合ってきたからこそ生まれる言葉で紡がれているから。
本人の苦しみが漂う重たい話も、最後にはクスッと笑えるくだらない話になっている。かと思えば、「どうでもいいわ!」という話をくそ真面目に語っていたりする。そこに源さんのあらゆる葛藤や不器用さが見えて、思わず親近感がわいてしまうのだ。
携帯電話の料金を払い忘れても、部屋が荒れ放題でも、人付き合いが苦手でも、誰にでも朝日は昇り、何があっても生活はつづいていく。ならば、そんな素晴らしくない日常を、つまらない生活をおもしろがろう。
「日常は勝手におもしろくなってくれない。おもしろくできるのは他でもない、自分自身なんだ」というほのかな希望に満たされる、そんな一冊です。
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【映画】しあわせのパン
誰しも、同じ作品を何度も繰り返し摂取しまう時期ってあると思う。
私にも数年に一度そういう時期があって、「しあわせのパン」もそのひとつだった。
北海道の静かな町・月浦に若い“夫婦”が営むパンカフェがあった。実らぬ恋に未練する女性、出ていった母への思慕から父を避ける少女、生きる希望を失った老夫婦が次々と店を訪れる。彼らを優しく迎えるのは、二人が心を込めて作る温かなパンと手料理、そして一杯の珈琲だった。
この映画を初めて観たのは、新社会人として奮闘していた23歳のとき。
慣れない土地での生活に、知らず知らず疲労がたまっていたのだろう。ある日、会社帰りにレンタルショップでたまたま目にした優しげなタイトルに惹かれ、思わずDVDを借りてしまった。
この映画の魅力は「一度観ただけではよくわからないところ」。
たとえば、登場人物たちの台詞。
言葉自体はシンプルで、何も難しくはない。でも、心情・状態を明確に語っているわけではないから、たびたび「それってどういう意味なんだろう」と考えさせられる。
特に、主人公の水縞夫妻の言葉。
彼らは夫婦のはずなのに、なぜか「水縞くん」「りえさん」と呼び合っている。この不思議な距離感のふたりから発せられる言葉が、なんだか無償に「刺さる」。
彼らの言葉の意味が知りたくて、何度も繰り返し観た。毎晩DVDを流しながらでないと眠れない時期もあった。でも結局、答えはわからないまま。
この「よくわからない」という感覚が好きなのかもしれません。答えがないということ、考え続けることができるということ。「しあわせのパン」は、そんな思考の余白を与えてくれる一作です。
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【アニメ】BANANA FISH
2018年に放送されたアニメ『BANANA FISH』。
私は、放送終了後(2019年)に全24話を一気見したのだが、いまだに余韻に浸っている。いや、浸っているというか引きずっているというか……
ニューヨーク。並外れて整った容姿と、卓越した戦闘力を持つ少年・アッシュ・リンクスは、17歳にしてストリート・ギャングをまとめ上げていた。
ある夜、アッシュは自身の手下によって銃撃された男からある住所とともに「バナナフィッシュ」という言葉を伝えられる。
それは廃人同然の兄・グリフィンがしばしば口にする言葉だった。
時を同じくして、カメラマンのアシスタントとしてやってきた日本人の少年・奥村英二と出会う。
書き始めて気付いたのですがこの作品、ネタバレなしで説明するのかなり難しいのでは?くじけそう……
とにかく余韻がすごいんです(圧)。
原作漫画は、1985~1994年まで「別冊少女コミック」で連載されており、当時リアルタイムで作品に触れていた読者から不屈の名作と称されるほどの人気ぶり。
どうやら、マフィアの抗争、ドラッグ、性暴力、銃撃戦など、かなりハードボイルドな描写が多いよう。「不屈の名作」と呼ばれる理由はいったいどこにあるのか、アニメを観始めた当初はあまり深く考えていなかった。
この見目麗しい主人公・アッシュなる少年が、悪い大人たちを成敗していくのだろうか。舞台はアメリカなのに、突然現れたこの日本人青年はいったい誰?
しかし、物語が進むにつれて私の情緒はありとあらゆる方向に揺さぶられることになる。理不尽な現実に打ちのめされる者と屈しない者、愛憎渦巻く人間たちの出会いと別れ、そしてアッシュと英二のゆるぎない絆。
試しに再生したはずがあっという間に最終話。最後のエンドロールが流れたあと、しばらく放心状態でした。
それからというもの、工事現場のガードフェンスやドン・キホーテの看板のような「黒と黄色の組み合わせ」におびえ、スーパーの果物売り場でバナナを見るたびに動悸がする日々が続くことになる。
とまあ、若干トラウマに近い余韻に浸ってしまう作品ですが、出会えてよかったと心底思います。まさに、老若男女に愛される不屈の名作。
……余談だが、アニメと原作では舞台となる時代が違う。
原作の舞台は1980年代のニューヨークですが、アニメでは現代に改変されている。これには賛否両論あったようだが、個人的には「作品への入りやすさ」という点ではとても助かった。
アニメが入りやすかったおかげで、のちに原作を全巻揃えたり、作中に登場するサリンジャーやヘミングウェイの小説を読んだりと、新たな世界へとつながったのだと思う。
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【ドラマ】ムーブ・トゥ・ヘブン~私は遺品整理士です~
ふだんあまりドラマを観る機会がないのですが、おととし観た韓国ドラマがなかなかの余韻を残してくれたので、ぜひ紹介させてください。
アスペルガー症候群の青年と、これまでずっと疎遠だった彼の叔父が、ある事情から突然同居することに。二人は遺品整理会社を経営していくなかで、故人が生前に伝え切れなかった思いを残された人に届けていく。
それが、Netflix独占配信の韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン~私は遺品整理士です~」。
推しである声優の榎木淳弥さんが主人公の吹替えを担当していると知って観始めた本作。ここからしばらく、私のなかで「韓ドラブーム」が始まる。
タイトルから察する通り「遺品整理」がテーマとなっていて、そこを主軸に韓国のさまざまな社会情勢が描かれている。
労災問題、老人の孤独死や認知症、児童虐待、LGBT、違法建築、海外養子縁組……
これらが原因で理不尽に命を奪われた人、耐え切れずに自ら命を終えた人、そしてやむを得ず力尽きた人が数多くいる。そんな彼らがのこした遺品を整理することを、作中では「最後のお引越し」と呼んでいる。
主人公の青年・グルは、父と一緒に遺品整理の作業をする前に必ず個人に挨拶をするのだが、そのシーンがとても印象的なのだ。
まずは自己紹介をし、故人の名前を呼び「これから、あなたの最後のお引越しを始めます」と告げてから、黙々と作業を進めていく。
グルはいつもヘッドホンをつけてクラシックピアノを聴きながら遺品整理をするのだが、穏やかなピアノの音色もあいまって、故人の部屋はとても神聖な空気に包まれる。
作中の雰囲気は、基本とても静かだ。淡々と、粛々と、しかしひたすらまっすぐ、世界にはびこる問題を提示していく。
ドラマの原作がノンフィクションエッセイであることと「人の死」を描くことから、かなり入念に取材を重ねて制作されたとのこと。たしかに、「遺品整理士」という仕事に対するリスペクトが根底にあるのが伝わってくる。
また、現代社会のあらゆる問題について、何の偏見も歪んだ解釈もしない「アスペルガーの青年」を通して描くことに意味があると感じた。
主人公のグルは「僕は人の気持ちが理解できません。相手が何を考えているのかわからないんです」と言う。彼をよく知らない人たちからは、「AIみたいな喋り方すんじゃねえよ」などと罵声を浴びせられることもある。
でも、そういったある種の「人間くささ」が削がれたグルだからこそ、物事をありのまま受け入れられる面もあるのではないだろうか。
何が正しくて、何が間違っているのか。大人になればなるほど、その基準はあいまいになっていく。そして、その判断は一人ひとり違うのだという現実を身に染みて痛感する。「これって私が変なのかな」みたいな、そういう不安に苛まれる瞬間が増えていく。
「それでも、ありのままの君でいいんだよ」と言ってもらえたような、そんな温かい余韻が残るドラマだった。明日への活力にぜひ。
以上、物語の余韻に浸りたいあなたにオススメしたい4作品でした。
気付けばこの「書く習慣チャレンジ」も2週間。だんだん、書く量が増えてきた気がします。というか、2週間も続いてることが信じられない……!
はちゃめちゃに長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださった方がいましたら、心から感謝申し上げます。ありがとう!