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読書記録22:『デザインのひきだし』51、54

「専門誌」は未開拓のネタの宝庫だと思っています。偏執的な編集者によって符丁に満ちた表現で雑誌が作られていて、その業界の中で「最近重要だと捉えられていること」が重み付けされてまとまっているわけです。
例えば高名な「月刊住職」。住職のための専門誌です。今月号の最初の特集は「後継にと住職が養子にした後で離縁を求めた裁判の判決とさらに紛糾の訳」と刺激的です。これが今、住職の中でアツいらしい。全国の住職たちがこれを読んで我が事のように考えているわけです。

オモコロチャンネルでもクイズ化されていました。月刊「財界」とかマジで誰が読むねん。

今回読んでみたのも、いわゆる専門誌の一角に当たります。
私はもともと本を読むのが好きで、派生して紙だとかフォントだとか、本にまつわる諸々も好きになっていました。そんな中、仕事上のとある理由で「本を作る」ことに首を突っ込んだほうが良い状況になってきています。

そんなことを美術に造詣が深い友人に話すと「この雑誌を知らないのはモグリだ」と紹介されたのが、グラフィック社『デザインのひきだし』でした。どモグリを恥じて早速買ってみたのです。

「グラフィック社ってあの割と安く印刷してくれる会社だったっけ…」と一瞬考えたのですがそれは京都に本社を置く「株式会社グラフィック」であり、今回読んだのは東京に本社を置く「株式会社グラフィック」のものでした。ややこしすぎるわ。しかも本文中に株式会社グラフィックの方も出てくるしメタリックカラー印刷ができるって何それ、という。

専門誌を読む楽しさは、「今そんなことになってんの???」と自分の常識が次々と更新されていくところにあります。
初めて読む業界の専門誌ですから、素人には驚きもひとしおですし、言葉がわからないものもある。読み取れたときの心の声はこういう感じ。
・「白インク積層印刷!!??」
・「広演色インクの印刷ってもうこれ紙が液晶やん!!!」
・「届いた雑誌を上製本化できるキットを思いついた人間には心の奥底に狂気がある」
・「世の中のものには「そんなところに名前がついているの」ってなるところまで名前がついているのね」
など。

製本とか印刷とかの工程1つに深さがあり、その他紙質・フォント、組版などまで考えていくと、今まで出会った本って何種類あったんだろうか、と見方が変わる。そりゃあこういう世界も知らずにナマ言ってすんませんっしたぁ!という気持ちにもなるよ。
弊害として、読もうとした本の物理的スペックが気にかかって内容に入りにくくなったというのがある。慣れよう。



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