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たまごごはんの無職生活 その3-暇人がやるといえばDIY

 無職になる前に決めたことはやりたいと思いながらも仕事の忙しさにかまけて手付かずだったり考えたいと思っていたことに時間を使うこと、辞めた仕事のことや再就職のことは考えないことのふたつ。
 月予算も決めたしハードやらソフトの環境も整った。
 これまでオフィスデザインにかかわってきたためコンピューターを使うのは必須、管理職になってからはTeamやZoomなどでのプレゼンやミーティングはほぼ毎日、図面を描くことはめっきり減ったがレイアウトなどのスケッチやプレゼンテーションのドキュメント作成等は仕事の内だ。そしてその反動だろうか、せっかくいいノートパソコンを買ってソフトも入れてデスクや椅子、モニターなどのの環境まで整えたのにどうにも足が気が向かない。むしろノートパソコンに触るのがおっくう。
 なるほどこういう感覚から自分がいかに疲弊していたかわかる。ならばパソコンに触らなくていいことから始めることにした。

額縁づくり
 1年ほど前にグリネッジのマーケットを相棒と散策していて一目ぼれしたプリントがある。おもにオペラを題材にゴシックなエッチング風のイラストを描いているアーティストで、悩みに悩んで一つ買った。題材は「ドン・キホーテ」。サイズはA0よりすこし小さい、特注の額縁になる。200ポンドだったから30,000円くらい。
 デカダンゴシックっぽいといえばいいのか、写実っぽくもある精巧なスタイルなのでフレームはシンプルな角形フレームよりよりはクラシックモダンな感じがいい。色も黒よりはシルバー系なイメージ。

 それと一緒に2年前にやっぱり相棒と近所を散歩していて路肩に放置されていたフレームの壊れた鏡があってそのフレームも欲しい。こっちはアンティークシルバーかな。これもA1よりは大きいけどサイズは変形でやっぱり特注になっちゃう。
 ネット等でいろいろ調べるけれど、サイズがかなり大きめだしちょっとゴテッとしたのがいいなと思うと値段がどんどん上がっていく。しかも時間もかかる。えー、これ作れるんじゃないか?
 と思い立ったが吉日、どうやってつくるか、道具と素材はなにが必要かを考える。新プロジェクトの立ち上げなり。
 建築を学びインテリア設計を職としてきて現場もよく知っている、だから大工のような腕を必要とするような作りが無理なのはわかっている。とにかく自分のしょぼい腕でできる方法を考えた。

安く、かっこよく、かつ簡単に
 まずプリントの方は台が必要だ。四角、いわゆる直角を実際に作るのは大変なのでなにかベースになるものがないかAmazonで探す。すると笑っちゃうくらいお手軽な値段でA0の黒板発見。1,500円くらい。お店なんかでメニューボードに使われているようなやつだ。これにモールディングを表面にぐるっと張り付ければええ感じになるのでは? 絵をカバーするアクリルは反射して好きなじゃないし高い、じゃあなくっていいや。えーじゃあどうやって台から滑り落ちないようにすればいいんだ?
 などなど基本的な道具と黒板をAmazonでポチってから原寸の詳細図を描いてみる。数パターン描いてみてなんとかなりそうだと次はモールディングを探す。1本2,4メートル。1本あたり900円くらいで4本もあれば十分だけどそれだと配達してくれない。

 じゃあ買いに行くか。帰りはバスに乗ればいいから行きは1時間かかるけどウォーキングがてら歩きで。こっちはDIYが盛んなので日本でいうホームセンターにあたるものがあちこちにある。うちから近いのはメジャーなB&Q。

 とはる晴れた冬の日、てくてく歩いていきました。世の中はセミロックダウンでレストランやバーはやってない、なので寄り道もなし。モール材に下地用にラワン合板、それにアンティークシルバーとグレーのペイントを買って無事帰宅。

たまごごはん工法

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 基本は釘なしネジなしで切った貼ったのみで。木工ボンドや速乾ボンドでも十分持つように。問題はどうやって角の留め継ぎをつくるか。要はどうやって木材を45度に切るかだ。それを夕食時につぶやくと相棒が言うにはマイタ―ブロックなる便利なものがあるという。さすがDIY大国。
 なんでもコの字型になった木材に切れ込みが入っている。切れ込みは30,45,60、90度とありコの字に木材を嵌めて切れ込みに入れる形でのこぎりを引けばその角度どおりに木材が切れるといういたってシンプルな、けれどこれ以上なく簡単でお手軽に留め継ぎのが作れるのだ。

 日本でもある。これすごいよー。電ノコなんて大金払って数回使って終わりなんてことを考えるとこれすごい。
 実際始めると予想通りとはいえなかなかの重労働。まずスペース。代替わりにスツールを並べてのこぎりを引くけれど、作業スペースって結構必要で。本来なら台があって材料を置いて、人間がその周りを自在に動いてものを切ったり貼ったりするのがその周りのスペースがないので材料を動かすことになる。うっかりのこぎりを落としてまだまだ新しいフローリングを傷つけるのも避けたい。ので段ボールを床中に引いて、ホームオフィスとして整えた部屋は手狭なワークショップに用途変更。
 材料が切れたら1か所糊付けしてマスキングテープで固めて1日放置。翌日は次の角。なにせ釘もネジも使わないからボンドが固まるのを待たないといけない。効率はすこぶる悪し。けれど角材をつなぎ合わせるのに継ぎ手とかダボとかやるほどの根性と情熱もなし。幸いにも時間はたっぷりある。というわけでなんだかんだで3つのフレームを作るまで1か月くらいかかったかも。毎日やっていたわけではないし、エクササイズやら料理やら他にもいろいろやっていたのでとんでもない亀工程ではあったが無事完成。絵も鏡も滑り落ちることなく収まった。
 一番楽しかった工程はやっぱりペイント作業で。シルバーのペイントはプリントに、グレーのペイントはキャンバスにプリントされた奈良那智さんの絵のプリントに、鏡のフレームはシルバーを塗った後にグレーで荒っぽく塗って錆感を出すのに成功。

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 壁のどこに飾るかを悩んで決めたら週末でのんびりしている相棒をたきつけてこっちは真面目なDIY、出来上がったフレームに紐を張り、コンクリの壁にネジをひねりこんでもらう。結果は大満足。
 どうせならと他にも2つほど床に置いていたポスターと浮世絵も壁に。うちが一気にグレードアップした。一つ一つが好きで買ったものだから感慨も深し。
 アートのある家っていいねぇ。
 ともあれ怪我もなく、うちをどこも傷つけることなくプロジェクト完了。それとともにDIY熱もあっさりと去っていった。一緒に載せてる写真、ズームインしてみないでね。手作り感たっぷりの感じはアートに合わせてあるってことで。

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 さてお次は。

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