たまごごはんの無職生活 その1―燃え尽き症候群
Work Life Balance、ワーク・ライフ・バランスとう言葉がある。日本では「生活と仕事の調和」とあるがどうもしっくりこない。ロンドンでオフィスデザインを15年以上やってきているが3、4年くらい前からよく聞くようになった言葉だ。特に意識高い系のヒトから。
ネットによるとイギリスではロバート・オーエンなるウエールズ人(イギリス人なんだけど彼らはそうは言わない)が人間は8時間働いて8時間遊んで8時間休むというのがいいと言ったところからきているという説があるらしい。じゃあ毎日働かなきゃじゃないか。
仕事が生活に及ぼす影響?
とはいえ最近よく言うのは仕事とプライベートのバランスが取れていないと結局は仕事の効率と成果に影響がでるということがデータという裏付けとともにわかってきているということだ。データが裏付けという、ここで経営者さまたちが「おや?」と思うところなのだ。
それと同時に日本のメディアで「働き方改革」という言葉をよく見聞きするようになった。プレミアムフライデーなんて日本の労働文化を考えると笑っちゃう試みもあった。ロンドンに住んでいるのでその恩恵?には預かっていないが、こっちでは暗黙の了解で金曜日の午後の会社は人がいないものなので今更感というか、日本はここまで国が提唱しないと物が動かないのかと興味深い思ったのを覚えている。
驚いたことにまだやってるー
日英で差はあれ、世界的にいろいろうまくいってない、人生のバランスの取れていない人が多いということだ。そしてそれが社会に及ぼす影響を無視できなくなってきたということでもあろう。食うために働くから働くことに価値を見出す時代でもある。かくなる自分もそのバランスのとり方がわからない人の一人で、もともとは将来の職を確実にするために20年ほど前にイギリスに来たのだ。予定では2年だったけどまぁ、人生は予定通りには進まないもので。
たまごごはんの働き方改革
ではそのワーク・ライフ・バランスをよくしよう、または働き方改革ということでワタシがまずやったことは退職、である。極端に聞こえるかもしれないがロンドンにあるとある中堅どころの建築事務所に勤めて早13年、やれることはやり切った感あり、頭打ち感ありでカイゼンできることはもう残っていない感もあった。
フリーランスというと聞こえはいいが、実際は無職。はや1年である。この1年で稼いだお金は500円ぽっきり。
90年代終わりに東京にある衣服店舗(いわゆるブランドショップ)設計施工の内装会社で3年間馬車馬のように働いて疲弊してロンドンに渡り、2年ほどちょろちょろお勉強に勤しんだら資金が切れてこっちで就職、なんとか働き始めたが結局またもや馬車馬のように1度勤め先を変え16年ほど働いて気づいたらすっかり擦り切れたぼろ雑巾状態。
そんなときに訪れたコロナはワタシにはなにかのサインのように思えた。中間管理職の上の方にいた自分には精神的には会社に残るほうがキツイのは目に見えており、リストラもこの会社でもう5回目だったっけかもっとあったっけか。自主退職の恩恵と貯金をエクセルにぶち込んで考える続けること半日、ウェールズ人の相棒が背中を押してくれたのもあってえいっと会社に辞めます宣言。
辞表を出してから3か月という縛りはあったものの、交渉で2か月におさめ、引継ぎは怠りなく済ませ、ポートフォリオ(作品集)に必要なデータはわしわしコピーし、2度目のロックダウンが始まる直前のロンドンでどうにか事務所近くのパブで仲間と飲んで円満に13年と7か月弱の勤務を終えた。
退職時のToDoリスト
退職してまずやったことはToDo(やること)リストの作成。まだまだビジネスマインドが抜けない。
• お金の計算
• お金のいろいろ
• 携帯電話
• ノートパソコンとクラウドソフト
• パスポートとビザ
• ジムの解約
• GPの登録
• 歯医者に行く
• 年金について調べる
• 折り畳み自転車のメンテ
• 鏡とプリントアートのフレームづくり
やろうやろうと思いつつもついつい後回しにしていたこと、いいかげんやらないとヤバイことのリストでもある。まずはパスポート。なにせ3か月前に切れている。本当は間に合うように切り替える予定だったのだが、凡ミスで在英日本大使館の予約日を間違えてしまい、その日がぎりぎりの申請日だったので新たに取れた日では間に合わず有効期限が切れてしまったのだ。コロナのせいでどこへ行くにも予約が必要で、なんでも早めに段取りをしないと思わぬところで躓くことになる。
やっかいだったのが滞在ビザの再申請。永住権にあたるビザは持っているのだが、日本が2重国籍を認めていないのでこっちでのパスポートが取れない、そして滞在ビザの制度はほぼ毎年なにかしら変更がある。ブレグジットからこっち、移民法は変更目白押しだ。
それこそ10年以上前に取ったワタシの永住権はパスポートにステッカーがぺらんと貼られているだけのものなのだがそれが数年前には指紋登録のカードに変更になったらしく、それがないと新たな職にはつけないそうな。めんどうくさい…
パスポートを取るのに1か月、それから永住ビザカード申請関連書類をそろえるのにまた1か月、それから指紋採取と写真撮るための予約に1か月、せっかく発行されたカードが自宅ではなく手続きを頼んだエージェントに配達されてそこはコロナで開いていないので戻ってしまったり再配達がまたエージェントに行ったりでなんだかんだで就職に必須な2つがそろったころには退職後半年が過ぎていた。
うーん、さすがイギリスというべきか。もちろんお金を払えばいろいろ短くはできるし、コロナがなければここまでひどくはならないけどこれにはちょっとびっくり。幸いなことに半年は就職活動しない予定ではあったからのんびりかまえてられたけど、相棒がいなかったら日本に帰ってたかもなぁとも思う。
こっちに長く住んでいる日本人って、これは完全に自分と自分の周りの人の経験談だけれども、不思議とイギリスが好きでイギリスに移り住みたくて来ました!って人ほど5年くらいで帰ってしまうパターンが多い。自分も含めて逆に2-3年くらいっていう人があれよあれよという感じで居つくというか。理想が大きすぎるとうまくいかないのかなと思う。
必要な投資
パスポートとビザ関連と同時にやったこともいろいろ。まずは個人ケータイとノートパソコン。この13年はほぼ会社の携帯を使っていたがいつまで続くかわからなかったので個人の番号もキープはしていたのだ。皮肉なことに結局は会社の携帯がほとんどメインの番号になっていたせいで個人の番号を会社で使っていた番号に変えることになった。数年前とは違って番号も持って携帯会社を変えるのも簡単。値段も安い。
次に必要なのがノートパソコン。これも携帯、いやスマホと同じで個人のノートパソコンはえーと5年くらい前だったかに買ったアップルのMacBookAir。全然使ってないよ… しかも電源入らないよ… 出費は押さえたいがパソコンがないとなにも始まらない、ということで悩みに悩んだ挙句アップルに別れを告げてAsusのZenを購入。薄い、軽い、早いの台湾産!
今のところ大満足。
入れるソフトはマイクロソフトのオフィスとAdobeは思い切ってフルバージョンを契約。この際だしアニメーションとかWebデザインとかいろいろ手を出したい。でも今って全部クラウドなのね。
と、最低限の環境が整ったところで次は財形の見直しなわけです。
つづく