雑な読みの技法の第1問(例題)
またアマゾンで本を出そうと思い立ちました。読みについて、ひとり必要ないと叫んでいる現状なわけですが、全く不要と思っているわけでもありません。
ただ、最低限どの程度が必要なのか、どうしても誇張されているように感じているので、自分がどうやって着手決定を行っているか書いていこうと考えています。
以下はその例題となる予定の第1問の草稿です。もっとこういうのが聞きたいとの感想もらえたらうれしいです(特に5級前の方)。
雰囲気をつかむための例題です。雰囲気をつかむため、自分ならこう指すなと、予想して軽く次に進んでみてください。
5級以下向け
まず気づいていますか。7九金を取られそうなことを。もっとも大事な情報です。
「この図を見てください」と言われても気づけないようでは、実戦ではまず気づけないでしょう。気づけなかった方は大駒の利きをよく確認するようにしましょう。
とくに角の利きはうっかりしやすいようです。
初段以下向け
次に何を考えるべきかはひとそれぞれですが、必要な情報を列挙してみましょう。
7九金をタダで取られそう。
攻めるなら▲6四桂がいちばんよさそう。
自分のほうが玉が堅い。
などなど。次に、自分の狙いである▲6四桂と相手の狙いである△7九竜のどちらが厳しいかを比較しますが、△7九竜のほうが明らかに厳しいでしょう。
攻めても勝てない≒受けなければいけない。
受けに回らなければいけないと分かりました。ちなみにここまでは、慣れた方なら直感でわかると思います。直感でわかる人にとっては面倒でしょうが、こういう部分をていねいに書いていくのが私の特徴ですので、お付き合いください。
受けを考えるには、以下のセオリーを使います。
守り駒は玉の近いほうがいい。
自玉の周りはしっかり駒を投入して守ったほうが無難。
また、ここまで考えてきた要素にもヒントがあります。
「攻めるなら▲6四桂がいちばんよさそう」といっていました。桂は攻めに使いたいので消去法で消します。
残りは角。▲6六角と▲7七角の二択で、それぞれ▲6六角△同角▲同金と▲7七角△同角▲同金の比較だったら、後者の方が玉に近い守り駒が残ります。よって、後者がまさると予想されます。私も▲7七角としました。十分初段以上の手といえるでしょう。
ちなみに、ここでようやく読みを使ったのに気づいたでしょうか。6六角△同角▲同金と▲7七角△同角▲同金の3手づつ読みました。そんなに難しい読みではないでしょう。逆にいうと、それ以外の読みはしていません。
初段以上向け
それ以上向けでは、筆者の指した将棋では、筆者の指し手も検討します。
私は▲7七角と指しましたが、正解の手を指したわけではありません。実際は形勢を損ねる悪い手でした。将棋ソフト(技巧2)によると、正解は▲6六桂だそうです。消去したはずの桂打ちでした。では、なぜ▲7七角ではなかったのかの反省をしていきましょう。
正確には▲7七角に△同金が特に悪い手だと将棋ソフトは評価します。△4六角と打たれて、▲6八桂と受けざるを得ないからです。
思い出してください。桂は攻めに使いたいので、守りには使いたくないといっていたのを。それなのに、▲6八桂と使わされてしまいました。桂を攻めに使うという前提が崩れてしまっています。この前提が崩れていると気づければ、戻って△4四角に▲6六桂、▲7七桂打はどうかと考える価値が出てきます。
▲7七桂打と▲6六桂なら、攻めに使える分、▲6六桂がまさります。この比較は形に対する知識でできますね。美濃崩しの知識が豊富だと、何となく▲7四桂と跳ねる形をイメージできて、▲6六桂がよさそうだと思えます。それと最初の、▲7七角△同角成▲同金△4六角▲6八桂の局面を比較します。4四角より4六角の潜在能力が高いので、先手側としては△4四角に▲6六桂のほうがいいでしょう。
ということでこの局面では、3手読めれば初段以上、それ以上にいくには5手読まなければいけないと言えます。
こういうことを伝える本を書こうかと思っております。どうでしょうか。