その人はいつも笑っていた(C-012 2018.07.24)
2018年夏、広島県呉市の女性とその仲間に出会いました。豪雨災害による断水被害の只中、彼女らは「困っている人」を助ける活動をしていました。自らも被災者でありながら……。彼女はいつも笑っていました。今日の気づきは、「助ける人におれはなる」「笑顔で助ける人になる」です。
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(2018年7月24日配信)の転載です。
断水続く呉で"被災者"自らが給水ボランティアに
広島県呉市川尻地区。
今回の豪雨被害で今も断水が続いています。
地区に水を送っていた「柳迫第1ポンプ所」が土砂崩れで跡形もなく流されました。ポンプ所の施設、配水池につながる管路が損壊。3基のポンプは見つからず復旧を断念した呉市。ポンプ所新設にあたり、仮設ポンプを設けても、断水解除には1ヵ月を要すると21日に発表しました。
川尻町は2004年に編入された呉市東部の集落です。人口は8,500人ほどで高齢化率が高いのが特徴。連日の猛暑。その中での断水は災害関連死のリスクが高まる危機的状況です。
地元で給水ボランティアを始めた女性がいます。その活動は必然的にトイレ支援に拡がりました。今日のコンテンツは、彼女とその仲間の活動の紹介です。
笑顔で助ける人になる
「川尻お尻愛プロジェクト」代表の中原祐美さんは、一年前川尻町の男性と結婚し、町民となりました。
底抜けに明るい女性で「川尻にお尻あいつくりたい」「8,500人を巻き込みたい」と活動を開始。呉市や広島市の町おこしイベントに積極的に参加し「川尻、尻ませんか?」と地元をPRしました。いつしか彼女は「尻姉さん」と呼ばれていました。
災害の次の日から彼女は動き始めました。
活動のメインは、井戸水による応急給水です。給水所に水を取りに行けない高齢者世帯を一軒ずつまわり、井戸水を届けました。夫の家業は創業50年を超えるの地元建設会社。住民は彼女の支援を安心して受け入れられました。尻姉さんの活動を尻(知り)、ボランティアと物資があっという間に集まりました。彼女の自宅は結果としてボランティアセンターに。
その支援者の一人、東広島市の三宅さんからトイレの備え(注:現在は「トイレの自由」)に連絡があったのは18日の深夜でした。尻姉さんたちは、トイレ問題に直面していました。
1)高齢者の多くが、トイレを水で流せない
(数リットルの水を持ち上げただけで肘傷める)
2)流す回数を減らすため尿を便器に溜め、臭う
3)水分を控え、トイレを我慢する
(猛暑の中、命に関わる危険な行為)
「バケツでトイレを流す良い方法はないか」
三宅さんからの切なる訴えでした。
私は三宅さんに「水を使わない、携帯トイレ」を勧めました。在庫していた600個をすぐに三宅さん宅へ発送。先週紹介した福山市の伊勢本さんも、かき集めた携帯トイレを夜中に車で運んでくれました。
「携帯トイレ配布は教えることとセットでなくちゃ」と伊勢本さんが中原さんへ携帯トイレトレーニング。翌日から「お尻愛プロジェクト」にトイレ部隊ができました。
「トイレに苦労していた方に喜んでもらえた」
「携帯トイレを使ってもらうことで、給水ボランティアの負担が減る」
「高齢者は下地袋を一緒に外してしまいがち。テープをしっかり貼るとよい」
トイレ支援現場からの貴重なフィードバックです。
中原さんらの訴えに加え、呉市議会議員の尽力もあり、行政が携帯トイレの手配を始めました。日本赤十字社の給水支援部隊も現地入りしました。走り続ける尻姉さんも、お尻をおろしてようやく小休止できそうです(すぐにまた走り始めるでしょうが)。
● 次の日からサクッと動き出せたのは、1年温めた期間と賛同する仲間がたくさん居たから
● まちづくり。「作るもんではなく、出来るもんだ」
● 川尻の尻のことだし、携帯トイレを普及させた。「尻の町」になれたらいいですよね(^^)
● お尻愛のメンバーには笑顔で楽しく活動して欲しい。だって死ぬほどしんどいから。笑顔交換、元気交換
Facebookに投稿される写真の彼女はいつも満面の笑顔。その笑顔がまわりの人にエネルギーを与えます。
彼女だって被災者。
彼女こそ「助ける人」でした。
「川尻お尻愛プロジェクト」を応援してください。
https://polca.jp/projects/QB6sYl8bFFF(注:リンク先の企画は終了しました。)
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◇今回の気づき
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助ける人におれはなる
笑顔で助ける人になる
【関連情報】
当時「川尻お尻愛プロジェクト」が資金を支援を募ったページです。
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(vol.012 2018年7月24日配信)のコンテンツ部の転載です。(タイトルの"C"は、"Content"の頭文字)
あきらかな誤字・脱字を除き、当時の文章をそのまま「軌跡」として残します。
この日の「編集後記」はこちら。