断水下を生き抜く力、その極意(C-014 2018.08.07)
2018年7月の西日本豪雨。断水被害が長期化した場所の一つである広島県呉市川尻地区を訪れた時の話です。時期は断水解除直後の8月4、5日。現地へ行き「土地」というもの肌で感じ、「ここで起きたこと」を知ることができました。今日の気づきは、「水を使わなくてもできることに水を使わない」「生きる力をつける」です。
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(2018年8月7日配信)の転載です。
呉市川尻町を訪問しました
『この世界の片隅に』は「戦争と広島」をテーマに、呉市を舞台に描かれた漫画作品です。2016年に映画が公開され国内外の数々の映画賞を受賞。上映は600日を超え異例のロングランとなりました。7月からテレビドラマも始まり再び話題となった矢先、西日本豪雨がこの町を襲いました。
8月4、5日、呉市川尻町を訪問しました。町内で民間給水ボランティアとして活躍した「お尻愛プロジェクト」のメンバーに会うためです。丸2日間彼らと過ごし、川尻、そして瀬戸内の島を巡り、被災の爪痕を見て、たくさんの人と話しました。
美濃加茂でも感じた不思議な「縁」をおなじく川尻にも強く感じました。話題のドラマの舞台の地というのも共通点の一つです。
感じたこと、気づいたことは、とても1回のメルマガでは書き切れません。今日のコンテンツは、悩みながら選んだ話です。
水を使わなくてもできることに水を使わない
人口約8,500人の町、呉市川尻町。
元は豊田郡川尻町で2004年に呉市に編入されました。北には野呂山、南には安芸灘の島々と瀬戸内の海を臨む美しい町です。呉市街からは車で30分ほど。山間部が多い呉市にあって三方が山に囲われ、残り一辺が海に面した独立した集落の一つです。
7月7日に始まった断水は8月1日まで続きました。今回の豪雨で呉市ほかへ水を送る管路に土砂が流入し、当初は呉市全体が断水しました。管路の損壊が原因で断水する一部地域を除き、12~19日に市内全域で順次断水が解除されました。
しかし川尻だけは例外でした。
川尻町に水を送る管のルート上に峠があり、それを越えるための中継ポンプがありました。そのポンプが建屋ごと土砂で流されました。
呆然とする景色でした。
隣町の安浦に比べれば土砂崩れが少なかった中、川尻は「水の心臓部」を失いました。一時は半年以上続くと噂された断水が、結果として1ヵ月で解除されたのは奇跡とも言えます。国と連携して復旧に尽力した市長をはじめとする呉市行政の知られざる努力がありました。
井戸のある家が多くありました。お尻愛プロジェクトの中原さんをはじめ、自宅の井戸を開放し互いに助け合いました。自衛隊による入浴支援。仮設洗濯所の開設。20日以降は「取り残された川尻」に支援が集中し、他県を含む各地からの給水車が町中を回りました。
川尻町は呉市の中で最も断水期間が長かった。
「なぜ川尻だけが…」
「いつまで続くのか」
不安と苛立ち。
情報に翻弄される住民。
「よりによってここが…」というピンポイントの被災。
復旧に尽力する人々の力が起こす奇跡。
井戸があったこと。
そこから自然に生まれた給水ボランティア。
現地へ行き「土地」というもの肌で感じ、「ここで起きたこと」を知ることができました。
例外だったから、辛かった。
例外だったから、最後は支援を集中できた。
でも、そもそも例外という考え方が違うのではないか。そう思いました。
「例内」は存在しない。
● 水源の水質が悪化する
● 上流の管路が土砂で埋まる
● 中継ポンプが建屋ごと流される
断水の原因を想定しきることは無意味です。断水はいつ起きてもおかしくない。断水が完全に起きないようにするのではなく、蛇口から水が出なくても生きられるようにする。
○ お皿にラップを巻く(洗い物の水を使わない)
○ ウェットティッシュ(手を洗いの水を使わない)
など「水を使わなくてもできることに水を使わない」。これを身に付けることが具体策のひとつです。
もっとも多く水を使うものの一つがトイレ。
水を使わないトイレ、あります。
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◇今回の気づき
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水を使わなくてもできることに水を使わない
生きる力をつける
【関連情報】
水を使わないトイレ
民間給水ボランティアとして活躍した「川尻お尻愛プロジェクト」の活動紹介記事
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(vol.014 2018年8月7日配信)のコンテンツ部の転載です。(タイトルの"C"は、"Content"の頭文字)
あきらかな誤字・脱字を除き、当時の文章をそのまま「軌跡」として残します。
この日の「編集後記」はこちら。
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