頑張りたいけど頑張れない日もある。みんな今、どう働いてる?【飯綱町の夜喫茶・消灯珈琲「問い会」第5回イベントレポート】
自分らしい働き方って、なんだろう。
今はまだ進みたい道の途中にいるかもしれない。生きているうちに、やりたいことが変わってくるかもしれない。憧れていたから、自分で選んだからとはいえ、それが必ずしも自分に合っているとは限りません。みんなはどうやって今の働き方を選んで、今の自分をどう思っているんだろう。
長野県・飯綱町の夜喫茶「消灯珈琲」で、月に一度開かれる「問会」。「問い会」では、毎月一つのテーマにそって、参加者たちが問いと言葉を交わします。
▼前回の様子はこちら。
第五回のテーマは「働き方」。この場所だから、この時間だから話せること、聞いてみたいことがある。当日の様子をレポートします。
みんなは今、どう働いている?
いよいよ雪が降り始めた12月の半ば。今回は、「働き方」がテーマということで学生の参加者はおらず、さまざまな働き方をしている20代の大人たちが県内各地から集まりました
まずは、彩花さんから問い会の趣旨と今回のテーマについて説明されます。
問い会は、『生きづらさ』を軸として、毎月決まったテーマについてみんなで言葉を交わします。問いの答えをその場で出す必要はありません。
彩花さん「私は自営業をしていて、一般社団法人『わけしょ』の理事もしています。型にはまらない働き方でやりたいことを仕事にしている一方で、どうしても頑張れない日もあるし、頑張っても頑張っても満たされない日もある。自分では自分の働き方しか見えないから、みんなの働き方や心の動きが知れたらと思い、『働き方』というテーマを選びました」
彩花さんの挨拶のあとは、まずは自己紹介。それぞれが、普段何をしているか、今日はどうして「問い会」に参加しようと思ったかを話していきます。
「問い会のことはずっと知っていましたが、普段は仕事終わりになかなか飯綱まで来ることができなくて。今日は、夜勤明けに仮眠を取ってから来ました。コミュニティ外の人と話してみたいと思っています」
「今年から飯綱町の小学校で理科と英語を教えています。転職を経て、仕事との向き合い方に試行錯誤中です。問い会は、自分にとって一か月に一度自分について考える機会になっています」
今日の最初の問いは、「今の働き方を選んだ理由は?」。参加者それぞれが、今の働き方とその働き方を選んだ理由を話していきます。
「自分はこれまでハウスメーカーで営業の仕事をしてきました。実は、個人事業を始めるためにもうすぐ今の会社を退社するんです。会社員としての働き方には全然不満はありませんし、仕事も楽しいです。でも、長い目で見たときに、『ずっとこのまま働いていていいのかな?』という不安があって。20代のうちに、もっとスキルを身に着けたい」
「僕はこれまで旅をしてふらふらしていました。一度は正社員としてフルタイムで働いてみたかったのと、教育学部卒だったので先生をやってみたくて、小学校で働くことにしました。いろいろ思うところはあるけれど、今は楽しみながらやっていこうと思っています」
「大学生の頃、茶髪だったみんなが急に髪を黒く染めてスーツを着て就活をし始めたことに違和感を感じて。自分も就活をしてみたけれど、だめだと思ったんです。毎日スーツを着て通勤する以外の働き方がしたかった。もともと政治家になりたいと思っていたので、そのまま就活をせずに政治家になりました」
「私は今は看護師をしていますが、看護師になりたかったわけではありません。自分の中の最終的なゴールに向かうには、看護師の資格が必要だった。スキルを身に着けるために今の職場を選んだので、働き方を選んだ感覚はありません。今は道半ばにいます。」
「四年生の前期まで東京の大学に通っていて、東京に疲れてしまって大学を辞めました。ゲストハウスで働きながら体調を整えて、『もう一度やりたいことに向き合えるかな』というところまで来たので、美ヶ原にあるホテルで働き始めました。今の仕事は、寮生活でお金がかからないし、山が好きなので山の中にあるのがいいなと思っています」
「地元の工場に勤めています。今の仕事を選んだ理由は特にないです。あんまり就職する気がなかったので、とりあえず受けた会社に受かってそのまま働いています。今の会社は好きじゃないので、正直辞めたい。でも、辞めて何をするかはまだわかりません」
「社会人一年目は、やりたいことを100%叶えるために仕事を選びました。働く前は自分の人生=仕事になったらいいなと思っていましたが、常にオンの自分でいるのが苦しくなって。でも、それに対して愚痴を言うのは過去の自分を否定してしまう気がして、とても悩みました。社会人二年目で地元に帰ってきて、縁あって小学校の教員をしています」
変化していく自分。今の働き方について、どう思っている?
たとえ自分が選んだ道でも、生きているうちに進みたい方向が変わってくることもあります。彩花さんは、これまでの働き方と今の自分のあり方に乖離を感じ始めているといいます。
彩花さん「独身で子供がいなかった頃は、『やりたいことがやれるなら、プライベートがぶっこわれてもいいや』と思っていたんです。でも今、育児をしながら自営業をやっていくのはかなりハードで。『やりたいことを仕事にするんだ!』と今の働き方を選んだはずが、『子どもとの時間を減らしてまで、私のやりたかったことってなんだったっけ?』と考えるようになりました」
そこで、彩花さんからの次の問いは「今の働き方について思うところはある?」。かつて思い描いていた通りの働き方ができているのか、昔と比べてどう感じているのか、それぞれの思いを聞いていきます。
「働く環境が大きく変わったので、今は自分に合う働き方を探っています。転職をして、オンとオフをつけやすい環境で働いてみて、私には今の働き方が合っているなと感じています。」
「会社を辞めると決めてから、初めて会社組織のすごさに気が付きました。営業の仕事で売り上げが立てられなくても、会社で働いていれば毎月決まったお金がもらえるというのは実はすごいことだったんだなと」
「政治の仕事は、オンオフがあまりありません。自分で自由には動けるけれど、プライベートの時間がないし、土日も仕事をすることが多く、心が休まらない。やっていることは楽しいけど、ずっとゆるーく働いている感覚があります。それが楽しかったり、つらかったり……」
「看護師は家に持って帰れる仕事がないので、オンオフが本当にはっきりしています。家に帰ってきたらオフ。休みの日に仕事のことを考えることはあるけれど、かといって出来ることはない。仕事はお金を稼ぐ手段で、あとは遊びというのがはっきりしているのは、自分に合っているなと思います」
「旅をしながら暮らしていた頃より、今の働き方の方がバランスが取りやすいですね。勤務の時間がある程度決まっているのは自分に合っていると思います。今までは、好きなことを仕事にしたいと思っていたけど、プライベートとの境目がなく自分でやり続けるより、『仕事は仕事』と割り切って自分のやりたいことは自分でやったほうがいいんじゃないかと思い始めています」
働き方を変えることで、周りの見え方が変わったり、自分の中の次のフェーズが見えてきたりした人たちも。まだ模索中という人もいます。
「今は、普通に仕事をこなすのが精一杯で。その状態でなにかを始めてもものにならないんじゃないかと、一旦今の仕事を続けています」
「標高2000メートルのホテルで住み込みで働いているので、毎日出会うのは同じ部署の人達だけ。お客さんは毎日変わりますが、受け持つのは20人ほどなので、人と出会う母数が少ないです。ゲストハウスで働いていたころは、毎日いろんな人と出会っていたので、どうしても比べてしまいます。今は、新しいことを始めたいと思っているフェーズです。働く場所に不満はないけれど、周りに仕事以外のことをしている人もいないので、自分が先駆者にならないといけないからどうしようかなと」
どうしても頑張れないとき、どうしてる?
次の問いは、「働くモチベーションをどうやって保ってる?」。みんなが「どうしても頑張れない」というときにすることを聞いていきます。
「会社員として働いているときは、そんなに気持ちの波がなかったです。ある程度やることが決まっているし、自分で考えてやらないといけないことももちろんたくさんあったけど、枠組みがある中で頑張っていた。会社を辞めてからは、与えられるタスクがなくなるのでどうやってモチベーションを保っていけるのか怖いです」
「平日働いて土日に休む働き方なので、平日は『土日になにをしてやろうか』というモチベーションで働いています」
「『今週の土日は遊ぶ』をモチベーションにとりあえず一週間を乗り切っています。あとは『仕事行きたくない〜』って家族に言う(笑)。頑張れない自分を否定すると苦しくなるので、仕事に行きたくないと思う自分も受け入れて『そんな日もあるよな』と、考えるようにしています。」
「がんばらないことです。多少やることがあっても寝る。『無理だ』という時は、仕事をやめて帰る。そうしたら、ずっと『やりたくない』と悩むことはありません。無理な時は、だいたい休めばなんとかなっています。それから、誰かに自分の状況を話すこと。愚痴でも、まったく違う話でも。こうして問い会に来たことも、モチベーションを保つことになっています」
「今は職場まで30秒の寮に住んでいるので、起きてから15分で出勤出来るんです。『行きたくない』と考える時間がありません。仕事中も、自分の心が不安定になっていく暇がない。仕事に慣れてきてモチベーションが下がってきているときこそ、新しくやりたいことが出てくるのと思うので、まずは自分の心が豊かになることを大事にしていこうと思っています」
「私も、仕事に行くまでをルーティン化して考える時間を自分に与えないようにしています。人が亡くなったり、職場の人間関係だったり、行きたくなくなることは多々あるけれど、そういうときも休めないから死んだ顔で仕事に行っています。仕事を始めたばかりの頃は、『つらい』と泣いたり暴飲暴食したり、買い物したりしていました。最近は、職場から離れるために旅行に行っています。そこからいなくなって、強制的にリフレッシュする」
「さぼりたい時もあります。でも、飲み会に行くまでがめんどくさかったけど、行ったら楽しかった、ってことがありますよね。だから、何も考えないようにとりあえず行く。行ったら自分を褒める。頑張れないときは、あんまり詰め込みすぎない。無理なく予定を入れて、頑張れた時は自分を褒めます」
これからどんな方向に進んでいきたい?
最後の問いは、「これからの自分が選んでいきたい働き方は?」。
「もっとまちづくりに関わりたいと思っても今の仕事の範囲ではそこまでうまくいかない部分があります。友達と起業して何かやろうかという話もしていいて。今の仕事と、やりたいことの二刀流になって、両方満たしていければいいな」
「昔は自分のゴールがはっきり見えていたけれど、歳を重ねるごとに、いろんな働き方や考え方を知って、ゴールが見えなくなっていました。今は会社員として働いているから、自営業やフルリモートの働き方に憧れていたけれど、みんなの話を聞いてみて、自分は会社で働いてお金を貯めながら、やりたいことは別でやる方が合っているかもとわかりました。自分の人生の中でやりたいことは変わるから、柔軟に仕事を選択していきたいです」
「自分の好きなことを仕事にしようとした頃、好きなことだからこそ人に否定されないレベルまで持っていきたいという思いと、自分に自信が持てない矛盾に心がもたなくて。好きだったはずのことを好きでいられなくなる不安と、切なさがあったんです。これからは、肩ひじ張らずに好きなことにゆったりと寄り添えたらいいな。収益を考えずに、ただやりたいからやる『おままごと実写版!』みたいな感じで」
「働き方を突き詰めると、生き方になると思うんです。大学生の時の自分は、すごい成長志向でゴール設定をするタイプでした。それだと、だいたいうまくいかないことが多くてストレスになっていた。今も成長志向な部分はあるけれど、ゴールは立てずに、どういう人になっていたいかを大事にしたい。」
「僕は今、会社からもらった給料で生活をしています。収入源が一つなのが良くないなと思っていて。やりたくないこと、求められていること、やりたいこと。何か一つ、趣味でもいいから好きなことを仕事にして、その比率を増やしていけたら」
「これまでいろんな働き方をしてきた中で、いずれにしても調整する余白を作ることが大切だなと。サラリーマン時代、会社にしか自分のコミュニティがなくてつらかった。今はいろんな人との関わりの中で調整する枠があります。漕がなくなった自転車は倒れるだけ。あらゆる責任をしょい込んでいる中で、進んでいくしかない。速度をゆるめたり早めたりしながら、調整できる範囲で仕事をすることを心がけています」
「これから自分で事業をするようになったらすべてが自分の責任になるので、今はより一層自分の存在意義を求めています。自分自身が誰かの役に立っているのか、という焦りが強くて、タスクを詰め込んで何かをしていないと不安なんです。まずは今の自分を見つめなおして、自分のキャパシティを知りたいと思いました」
「仕事でもなんでもそうだけど、自分を知るための環境が大事だと思います。自分をどうやって知っていくか。若いうちは、仕事が人生のすべてのように感じてしまっていたけれど、だんだんはっきり見えていたものが見えなくなる。そうやって迷いながら、自分をだんだん知っていく。問い会のような自分を顧みる体験は、場としてすごく意義があるんじゃないかな」
限りある時間の中で、あらゆる働き方を一つひとつ試してみることにはどうしても限界があります。ですが、自分と違う働き方をしている人の暮らしや考え方を知り、自分と照らし合わせてみることで、自分のことを知ることはできるはずです。
撮影:中嶋真也
執筆・構成:風音
「問い会」主催・企画:一般社団法人わけしょ
<次回の「問い会」>
問い会 第6回《 (未定) 》…消灯珈琲のInstagramにて随時更新
問い会とは…
“生きにくさ”を軸に、毎月ひとつの“問い”をテーマに話しをする。結論を出すのではなく、同世代が今をどう選択して生きているのか、モノゴトをどう捉えているのか、話したり聞いたりして自身が“問い”の答えを見つけていく。
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日にち 2025/1/21(火)
時間 19:00-21:00(1hトークセッション、1h茶話会)
場所 消灯珈琲
参加費 1000円(ワンドリンク付)
※席数が少ない為、定員に達し次第募集は締め切ります
※当日、通常の喫茶営業はしておりません
※分からないことや質問等気軽にDMでご連絡ください
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