気付けば 五十路前6(虐待の始まり)


「母親がお店のお客さんとコタツの中で手を繋いでいた」と勇気を振り絞って祖母に話をした私。それを父親から聞いた母親に「あの子は前から嘘つきだから」と言われた、その後。

母親から「何故、嘘を付いたの?」なんて話はなかった。仮に私が嘘をついていたのなら父親や祖母の前で「なんでそんな嘘を付いたんや!!」と私を責めればいい。私が以前から嘘をつくならば、母親として自分の子供を正そうとしないのか?「事実とは違う事を言われたら、私は悲しい」と説き伏せたりしないものか。

母親が営むお好み焼き屋には、常連客が何人か居て、その中に私や兄と遊んでくれるおじさんが居た。お好み焼き屋の店内で遊ぶ子供は目障りだったのか母親はよく「おっちゃんと2階で遊んでもらい」と言い、私と兄を2階の住居スペースによく追いやった。

おじさんは当時、30代に入ったところ程で、父親と同世代だったと思う。

2階では本を読んだり、テレビを観たりしてして過ごしていた。

この日も私と兄はおじさんと一緒に2階へ上がり、本を読んでいた。兄は「外に行く」と出掛けて行った。おじさんが「昼寝でもしたらどうや」と言うので、私は2階の台所スペースの床で眠る事にした。

暫くすると何か違和感があり、目が醒めた。

違和感の先を見ると、おじさんが私の下半身を服の上から触っていた。     私は何も言えずにいると

「お母さんに、言うたらあかんで。誰にも言うたらあかん」と言われた。

私は黙っていた。そのまま黙っていると、おじさんは服の下に手を入れてきた。

これが私の悪夢の始まりだった。

当時の私は5歳、その行為が何かは分からなかったが、何かいけない事をされているのは薄々と感じていた。

私は母親のお店にあまり行かなくなった。

幼稚園では虐められ、母親からは嘘つきだと言われ、優しいと思っていたおじさんからのいけない行為。

毎日が全く楽しくなかった。幼稚園から帰宅すると直ぐに テレビをつけた。面白い番組がやっていても、おじさんにされた行為が頭をよぎり、腹の底から笑えない。

そんな毎日が続き、私は自宅の2階の子供部屋で【ヒーローごっこ】をするようになった。たまに兄が参加する事もあったが、基本一人だ。

当時から男の子っぽかった私は、自分がヒーローになり、敵を倒す遊びにハマった。部屋にある人形や服、布団を敵に見立て「えいっ!!とうっ!!」と叩いたり、蹴ったりして倒していく。完全な現実逃避だった。ヒーローみたいに強くなりたい。そしたら、悩みなんてなくなるし、みんなから英雄扱いされるのに。そう思っていた。

この日も幼稚園から帰宅し、2階に駆け上がり、【ヒーローごっこ】をしていた。沢山の敵を倒していた時に声がした。

「元気やなぁ、下まで響いてるぞ」

ヒーローになりきった私の目の前に最大の敵 【おじさん】が現れた。

自宅にまで来られたら、もう終わりだ。





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といちゃん
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