サラマンドラの星空で演じた考古学者・巨勢教授のこと
サラマンドラの星空にてわたくしが演じた役、考古学者の巨勢教授についてちょいと語ります。主に自分へ向けての覚え書きです。
※以下ネタバレがありますので舞台を未見でこれから配信やDVDで観る予定の人はお気を付けください
まず演技の根本的なことなんですけど、セリフの通りの感情を喋るのは演技じゃなくて説明です
日常で、人は怒ってるときは歯を食いしばって笑顔で「怒ってません」といいます
嬉しくてしかたないときは出来るだけ喜びを悟られないようにします
好きな人には「あんたのこと嫌いやねん」て言うし
嫌いな人には愛想笑いをして
早く帰ってほしい人には「ぶぶ漬け食べはります?」と聞きます
それが何故か演技の時はセリフに書いてある感情で喋ろうとしがちです、そんな人普通いません、これが大前提です。
もう一度書きます、怒りのセリフを怒りながら喋るのは演技じゃありません説明です
ということで巨勢教授のセリフは常に怒ってます
これは実は怒ってないということです
怒りながら怒りのセリフを喋る人が日常にいたら頭がおかしい人です、狂人です
巨勢はめんどくさいヤバめの人だけど、狂人ではありません
例えば「絶対に石版を読み解きますから」と宣言する古生さんに向かって
「バイトのついでにやってるお前には絶対に無理だ」と言い捨てます
このときのわたしの感情は「君なら絶対に出来る、がんばれ」です
この感情を悟られないように冷たく言い放ちます
「お前には絶対に無理だ」と思って言ってたら全く違う言い方になるし、そもそもあのシーンにはならないのです
月刊アトランピスの天野くんを怒鳴りつけるシーン
「それがまじめに研究してると言えるのか!わたしはそういう奴らが大嫌いだ」
これは天野くんに言ってる体で助手の鳴海と元弟子の江川に向かって言ってます。「せっかくの才能を殺すな」「手を抜くな」「考古学に対して誠実にあってください」という愛の感情を、ウソの怒りにかくして伝えてます
そしてずっと探していた遺跡を見つけたシーン
このときの感情は「安堵」です
これを見つけるまでは引退出来ないという意地から解放された喜びです
このとき江川が大伴に向かって
「すぐ行く、先に行ってて」と、とてもさりげなく明るく言います
まるで「コンビニでコーヒー買っていくから」くらいの軽さで明るく言ってくれます。粋です、オツです。
このセリフで巨勢の感情は崩壊してしまいます
このシーンのメインはほとんどセリフの無い鳴海の娘です
鳴海の娘が父から考古学のバトンを受け取るシーンです
わたくし巨勢はその橋渡しをしただけです
このシーンの鳴海のセリフは
「・・・教授」だけです
伊藤麻菜美さんは声優さんです
こういうシーンで普通の声優さんはこの一言のセリフに入魂して
感情を込めて良い声で「教授」って言います
そして大概もったいない感じになっちゃいます
「いやいやおいおいこらこら、なんでそんな言い方しちゃうのよ」
って感じになりがちです
しかし伊藤さんは声で勝負してきませんでした
声優なのに表情・感情・佇まいで演技してます
自然にこれが出来ちゃってるのって、これは相当凄いことです
舞台中央で思いっきり叫んでいるので巨勢のシーンと思われがちですが
実は鳴海の娘と、ここにはいない鳴海父の2人のシーンです
邪魔なのは分かってるけど、感情が崩壊しちゃってるので抑えることが出来ません、いつもの冷静な巨勢ではなくなってるのです
という解釈で演じてみました
これはわたくしの勝手な役作りなので、作・演出の浅野さんに聞いたら全然違うよと言うかも知れません
これを踏まえて是非とも配信で演技を確かめてみてください
ちなみにわたくしの演技ワークショップでは
映像でも通用する様にこういう演技の仕方を教えてます
興味ある方はぜひご参加を、激安です