伝統と革新が交わる 若き蔵元が織りなす未来への挑戦④ 【とうほくGenki × 山形県酒造組合】
海外での日本酒人気が高まる中、国内では若者の日本酒離れが課題となっています。その中で、日本酒の魅力を若い世代にアピールしようと、各酒蔵による伝統にとらわれない新しい「日本酒」へのアプローチが注目を集めています。
若き蔵元たちの日本酒に懸ける新たな挑戦について、山形県酒造組合技術研究委員会委員を務める武田秀和さん(有限会社秀鳳酒造場 代表取締役社長)へお聞きしました。
独自の酒造好適米の開発と
それを生かした酒づくりが開花
山形県では独自の酒造好適米の開発と、それを生かした酒づくりに取り組んできました。1980年代までは本県を代表するようなコメがありませんでしたが、90年代に「出羽燦々」がデビューして以降、「出羽の里」「雪女神」が相次いで開発されました。「出羽燦々」で醸した純米吟醸酒「DEWA33」などを通して醸造技術にも磨きをかけてきました。その結果、山形県産酒の評価が徐々に高まりました。2022酒造年度の全国新酒鑑評会で本県は20銘柄が金賞を獲得し、金賞獲得数で日本一になりました。このうち10銘柄が「雪女神」を使用したものです。これまでの取り組みが大きく花開いたのだと思います。
食中酒として輝く、優しい
飲みやすい味わいを実現したい
日本酒は地域を表すものでなければならないと考えています。携わる一人一人が「自分たちの地域にはこの酒がある」という誇りを共有できるような酒を造りたいです。具体的には、食中酒として料理と一緒に味わったときに良さが実感できる酒。日本酒は醸造酒としてはアルコール度数が高いほうですが、豊かな味わいを残しつつアルコール度数を下げ、優しく飲みやすい味わいを実現できれば、新たな需要が開拓できるのではないでしょうか。山形県は、ワインの醸造に用いられる「マロラクティック発酵」を日本酒製造に応用する技術で特許を取得しており、これを用いればまろやかな味わいの酒ができます。既にいくつかの酒蔵が採用しており、今後増えていくのではないでしょうか。
先日、台湾のお客さまが弊社を訪ねてくれました。日本酒を通して山形に興味を持ってくれたのだそうです。酒を通して世界中の人たちに山形の存在を知ってもらえるようになればいいですね。
山形県酒造組合 技術研究委員会委員
有限会社秀鳳酒造場 代表取締役社長
武田秀和(たけだ・ひでかず)氏
1977年生まれ。山形市出身。東京工業大学大学院総合理工学専攻物理情報システム創造専攻博士課程修了後、通信機器の開発に従事。2015年、専務取締役として秀鳳酒造場入社。23年10月、代表取締役社長就任。20年から山形県酒造組合技術研究委員会委員、22年からは若手蔵元で組織する山形県醸青会の会長も務める。
山形県酒造組合
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