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JA全農東北プロジェクト・阿部浩人事務局長に聞く/産地と消費地近づける

 JA全農は2015年から東北6県を一つの産地として捉え、農畜産物のPRや販売力強化を図りながら、生産地と消費地を近づける「全農東北プロジェクト」に取り組んでいる。阿部浩人事務局長に10年目を迎えたプロジェクトの成果や、今後の展望を聞いた。

―プロジェクトの狙いは。

「東北6県の垣根を越えて連携し、『食と農』を活性化させたい。マルシェイベントの開催などプロモーション事業や、オリジナル商品の開発、交流サイト(SNS)を活用したブランディングを進めてきた」

―これまでの成果は。

「各県のブランド米を詰め合わせた『東北六県絆米』の販売が伸びている。生花や和牛といった商品のブランディングにも力を入れた。課題もあるが、少しずつ東北産品の認知度は高まっていると感じている」

―プロジェクトを通じ、企業や団体との連携強化も図っている。

「仙台スイーツ&カフェ専門学校(仙台市)の生徒たちに、仙台曲がりねぎなど地元食材を使ったメニューを開発してもらった。全農の直営飲食店で期間限定で提供した。料理人やパティシエを目指す若者に、東北の食材の魅力を『語り部』のように発信してもらいたい思いもある」

―各地で増加傾向が続くインバウンド(訪日客)向けの取り組みは。

「東北観光推進機構(仙台市)とともに、台湾やタイで開催した観光イベントで、東北のコメや食材をPRした。海外で和食への関心が高まっており、『食』を目当てに東北を繰り返し訪れてもらえるようアピールし続けたい」

―食料品を含め物価高が続く中、消費者ニーズの変化にどう対応する。

「商品の生まれた背景や歴史といったストーリーを伝える工夫を重ね、東北の食材を売り込んでいく。売り場の小さなポップや、SNSをうまく活用したい」

―生産振興を図るための情報発信にも力を入れる。

「東北各地で人口が減り、人手不足が続く中、『91(キュウイチ)農業』というライフスタイルを提案している。9割の時間は仕事や自分のやりたいことに使い、残りの1割で農業に関わってもらう、という考え方だ。例えば旅行と組み合わせて、東北で農業に参加してもらうようなイメージ。全農東北プロジェクトの一環として今後も推進していく」


【略歴】あべ・ひろと 筑波大大学院農学研究科修了。1995年全農入会。営農・技術センターつくば営農企画室長、生産振興・グリーン農業推進課長などを経て、2024年4月から東北営農資材事業所長兼全農東北プロジェクト事務局長。55歳。北海道出身。

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