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【企業メモ】株式会社ガーデン【274A】好立地物件に着目したロールアップ戦略
ビジネスモデルを考える上で、興味を持った企業を【企業メモ】として書き留めておきます。
今回採り上げる企業は、
株式会社ガーデン【274A】
です。
◆同社概要:四季報抜粋
M&A活用し、飲食事業を首都圏中心に展開。家系ラーメン「壱角家」、「山下本気うどん」主力
【大幅増益】直営店中心に店舗純増6(前期は純減10)。主力のラーメン、うどんが伸長。人件費などコスト増吸収のため段階的に値上げ実施も客数への影響軽微。肉ずし(FC店)は苦戦だが、営業益は大幅増。
【還元政策】配当性向40%超で累進配当の方針。2年以内に株主優待も導入。3~6年内に純利益30億円目標。上場での資金調達は借入金返済や出店資金などに充当。
◆採り上げた理由 M&Aを活用した飲食事業
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同社は、株式会社チカラめし、株式会社神戸らんぷ亭を買収し、業容を拡大したことで知られています。
これまで、連続的にM&Aを実施することで成長するロールアップ戦略を採用している企業を複数社見てきましたが、同社も連続的にM&Aを実施し、成長する企業のひとつです。
ロールアップ戦略という観点から、今回、同社を採り上げました。
◆業績推移 M&Aにより着実に成長
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説明資料に記載があるように、他社から引き継いだアセットを最大限利用し、M&Aにより業容を拡大しています。
◆気になるポイント① M&Aによる好立地物件取得が競争源泉
同社主力事業のラーメン店は、同社資料に記載があるように株式会社ギフト(町田商店運営)のプロデュース店です。
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そのため、再現性の高い多店舗展開が可能となっている一方で、ラーメン業態での大きな差別化はない印象です。
同社は、飲食事業を営んでいるようで、実態は、企業再生型M&Aを軸とした好立地戦略で伸びている企業です。
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上記ページが、これまでの同社の成長を支えた肝となる戦略であると思われます。
居抜き物件を取得し、「ラーメン店」に業態変えすることで、収益化するビジネスモデルです。
これは、後述する高利益率業態とセットで成立する戦略と言えるのではないでしょうか。
◆気になるポイント② 驚異の営業利益率
Q:壱角家って業界トップクラスの利益率、どれくらい出てるんですか?
A:当社の店舗、100店舗ぐらいあるんですけども、トップの店舗、トップクラスの店舗だと40~45%営業利益出ています。これはみなさんびっくりされるんですけど。
これは、昨年末、同社社長が出演されたラジオ番組での発言の抜粋です。
以下は、黒字ラーメン店60社(「期末純資産がプラス」かつ「当期損益がプラス」の企業)のデータである。複数店舗展開をしている事業者も多く、その全体の合計数値となっている。
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/restaurant/food08.html
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https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/restaurant/food08.html
同社のトップクラス店舗で40~45%の営業利益率となっている点、業界平均値と比べても驚異的な数字になっています。
飲食事業の場合、食材費と人件費を合わせてFLコストが売上に対して60%以下が望ましいとか、家賃も含めたFLRコストで70%以下が望ましいとか聞きますが、この目安となる数字が霞むぐらいの40~45%の利益率。
恐らく、株式会社ギフトからの仕入れで、高品質な食材を低い食材費比率をで仕入れ、ラーメン業態という回転率が比較的高い店舗を、駅前の好立地に出店することで成しえる数字でしょう。
サービスが規格化・標準化されていることで、スタッフの熟練度が低くても、食材比率や人件費率が大きく変動しない点も影響してそうです。
ここでも、競争力の源泉になっているのが、立地です。
◆ロールアップ戦略企業の言語化
これまで、このnoteでロールアップ戦略企業として以下、3つの企業を採り上げてきました。
同社も含めて、名前をつけてみると
株式会社技術承継機構は、製造業特化型ロールアップ戦略
株式会社WOLVES HANDSは、動物病院特化型ロールアップ戦略
株式会社ライスカレーは、SNSマーケティング軸のロールアップ戦略
株式会社ガーデンは、好立地不動産軸のロールアップ戦略
と言えます。
また、各社のロールアップ戦略に合わせて、M&Aで取得した企業に対する成長プログラムについても、一定の型があることが特徴となっています。
今後、これらの企業を定点観測することで、少子高齢化する日本において、どのような軸でのロールアップ戦略が企業成長にとって有効なのか、見ていきたいと思います。
◆個人的なメモ スゴロクの上がりの先に
私が同社を知ったきっかけは、私のお客様が所有する駅前の自社ビルに当時の同社が運営する「カラオケ マック」が入居していたことでした。
当時、そのお客様は駅前に自社ビルを所有し、4階でカラオケ店を自ら運営していました。しかし、運営方針を見直し、テナントへ賃貸することを決定。その際に入居したのが、同社の旧社名「株式会社マック」が運営する「カラオケ マック」でした。
「カラオケ マック」は、私の記憶では、居抜きで入居後、アジアンテイストな内装に改装。ソフトクリーム食べ放題など、若者に人気のサービスで集客していました。
駅前には競合となるカラオケ店が複数ありましたが、「カラオケ マック」は価格設定やキャンペーンを巧みに活用し、他店に引けを取らない営業を続けていた印象があります。
その後、「株式会社マック」は社名変更に伴い、賃貸契約を巻き直しました。そして2017年、カラオケ事業を株式会社第一興商へ売却。お客様のビルに入居するテナントも第一興商へと引き継がれました。その後、駅前再開発によりビルが取り壊されるまで、第一興商が同店舗を運営していたという流れです。
また、当時から「株式会社マック」はラーメン店も展開しており、カラオケ店とラーメン店をセットで同じビル内に出店するケースもありました。
私も複数回、同社とのビルテナント契約の場に立ち会いましたが、「株式会社マック」の店舗開発担当者は若く、かつ非常に丁寧な対応をされており、好印象を持ったことを覚えています。
当時のカラオケ店の出店地域は、私が関わった店舗も含めて、どちらかと言えば、都心から離れた、関東圏の郊外都市から出発していった印象です。
郊外都市のカラオケ居抜き店舗の運営で徐々に力をつけ、都心部に登りながら、家系ラーメンという勝ち筋を見つけ、M&Aで好立地を手中におさめながら、飲食事業を強化した上で、カラオケ事業を売却。
家系ラーメンに焦点を絞って収益性を高め、都心の駅前一等地をおさえていき、そして株式上場。
双六(スゴロク)を見ているような流れで、事業を成長させた、魅力的な企業です。
一方で、個人的には、カラオケからラーメンへと事業という武器を強化しながら、関東の郊外都市から都心部へと駆け登り、株式上場という流れは、双六でいう「あがり」のように感じます。
この「あがり」の状況から、どのような野心を抱いて、更なる成長を目指すのか、公表情報ですと海外展開を目指すとのことですが、この進捗もあわせて、気になる企業です。
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