観光名所は知らない。
和菓子屋さん上、4階のワンルームだった。エレベーターが店の中にあるので住人は2階からしかエレベーターを使えない仕組みだ。
たしかにスウェット姿のグダグダで店内のエレベーターからいきなり出てくるのはまずい。客にえらいラフな職人雇っていると思われかねないからだろう。
エレベーターの1階のボタンは押しても光らないし動かない。そういう設定になっていたのだろう。隠しコマンドがあるはずと、開閉ボタン同時押しとか長押し連打とかやったが1階には行けなかった。みやげに和菓子をたまに買うだけで店の人と交流はなかった。
引っ越しと言っても大荷物はないので、小さい荷物をスクーターで京都-大阪間を何回か運ぶ。
キャブ型のヘルメットをちゃんと被らないで、ひもで首に引っかけるだけ。到着すること鼻の穴は黒くなり、首が異常に痛い。風圧をナメていた。パラシュートのようにヘルメットが風をもろ受けて、ひもで首を引っ張られる。ダウンフォースをつけすぎた。高速コーナーはあまりない。
学校は歩いていけた。すぐにバイトを始めた。配送会社の深夜の伝票整理だ。夕方帰るなり速攻寝る。夜11時に起きてバイトに行く。朝7時に終わって帰るが直ぐに学校へ行く。
とにかく眠かった。ある日、夕方眠りだしてすぐインターホンがなった。ドアスコープから覗くと小さい女の子がたっていた。ドアを開けるとお母さんらしい人もいた。宗教の話がしたいらしい。すごく熱心に話されてしばらく聞いていたが、猛烈に眠かったので「仕事があるので眠りたい」といって横になった。それでもしばらく話し続けていた。起きたら帰ったらしく誰もいなかった。3日くらい続いた。
昔、実家にオレンジの袈裟をきたインド人らしい人が突然玄関に立っていたのを思い出した。仕事場に突然、しろくまの毛皮を買ってくれと男が現れたこともあった。しばらく経つと夢の話か現実かわからなくなる。でも確かに全部あったはず。
「このまま、朝イチで名古屋遠征いくで」新幹線に乗って名古屋までパチンコにいくらしい。その人は深夜バイトなのにスーツを着てくる。仕事中はシャツの袖をまくって作業する姿は、やりて商社マンみたいだ。昼は中央卸市場で働いてる人もいた。気さくに話してくれたが常時目が真っ赤で寝ていないようだった。マグロと同じで止まれないのだろうか。
間違った伝票の混入を伝票の束から抜き取る作業をする。指サックをした指ですごい速さで伝票の束をめくる。ハイパーオリンピックというひたすら連打するゲームが流行った時にあみだした、腕の筋肉を自らケイレンさせてボタンを連打する方法をつかった。多分一番伝票をめくるのが早くなって班長みたいな感じになった。
洗濯は一週間溜め込んでコインランドリーに持ち込んだ。店の中で乾燥待ちの時、外国のおばちゃん5人位がいっせいになんかしゃべってきた。英語ではなさそうだし、なにかわからない。多分使い方を聞いているのだろう。
それでどうしたかは覚えていない。でもその時、地元の人になった気分になった。