【第11回レパードステークス】回顧「金子真人ブランド」
「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。ときに自らの馬券の悔恨と反省も。
基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。
【第11回レパードステークス】回顧
2019年8月4日(日)3歳、GⅢ、新潟ダート1800m
「ディープンインパクト追悼競走」
7月30日に永眠したディープインパクトへの追悼の意を込めてこの土日メインはそう掲げて施行されました。ドスケベ馬券野郎のボクは予想するのにディープインパクトを意識してみました。父ディープインパクト、武豊騎手騎乗馬など必ずどこかで絡むと考えていたものの、土曜日はもっとも絡みそうな芝の長距離戦、札幌日経OPでは1番人気モンドインテロが6着と奮わず。武豊騎手は小倉の九州スポーツ杯ダノンロイヤルに騎乗するも2番人気14着。
そう都合よくはいかんよなぁと、ディープに怒られないように真面目に日曜日は予想しようと気をとり直しました。
で、最後の最後6レース目のレパードSですよ。
10番人気で勝ったハヤヤッコは馬主がディープと同じ金子真人HD。それだけじゃないんです。
父キングカメハメハ
母マシュマロ
母父クロフネ
母母シラユキヒメ
血統表にディープの勝負服がテンコ盛り。
ここかよ~、最後まで我慢してディープインパクト関連を探せばよかったのかぁ~。
ドスケベな癖に淡白なんですね、ボク。
このレパードSですが、新潟ダート1800mで1000m通過60秒1のハイペース。レパードSでこれより速いペースだったのは第1回の59秒7、勝ち馬の名前はトランセンド。のちにダートGⅠ4勝、ドバイワールドカップ2着の名馬です。
新潟って、芝コースファーストな競馬場でして、名物の600m以上ある外回りのホームストレッチ、芝一直線1000mのほかに短距離戦が施行できるように内回りコースも配した芝優先なレイアウトなんです。で、その煽りをモロに受けたダートコースはその内側に半ば無理やり作られたような形になっていて、周回コースはほぼ円状。コーナーは急角度ですし、コースに占める曲線部分の割合が
多い。おかげで、1800m戦はラップが速くならず、基本的に最終着順は4角の順位が上下するだけの単調な競馬になりがちです。
そのコースで1000m通過は60秒1ですからね。前は止まります。すっ飛ばした逃げ馬が記録したものではなく、前半600m34秒6と先行集団が突っ込んで入り、ペースが落ちるはずの次の1ハロンで人気のデルマルーブルがインで動くなど落ち着かない展開になり、結果ハイペース。
ヴァイトブリックは淀みない流れで揉まれるという最悪な形になってしまいました。
そんなとき、威力を発揮するのが田辺裕信騎手。先週は逃げの田辺騎手を紹介しましたが、この人の真骨頂はやはりノーストレス、ノープレッシャーの追い込みです。ハヤヤッコは揉まれるヴァイトブリックのかなり外というストレスフリーなポジション。この形になって展開待ちするのが田辺騎手。ゴチャゴチャ考えんと、どれがいちばん力を出せるか考えたらええんやという競馬がこのハイペースでビッっと決まりました。
かつて穴党を歓喜させていた田辺騎手も売れっ子になり、関東圏では上位人気騎乗が多くなりましたが、こうして時よりやってくれます。人気がない馬とある馬でちょっと乗り方が違いすぎるところはありますが、やはり二桁人気に騎乗した田辺騎手は恐ろしい。
これは再認識しておきたいのが、ハヤヤッコは新潟滞在だったということです。以前は結構、夏の新潟滞在馬って多くて、柴田善臣騎手のように半分バカンス気分で新潟に長期滞在して調教つけるジョッキーもいました。新潟滞在が夏開催の穴セオリーだった時代は終わったのかと思いきや、ここで出現しました。覚えておいて損はない作戦です。
にしても、ハヤヤッコは抽選除外の可能性があった馬、それを新潟滞在で結果につなげるんですから、勝負師・国枝栄、恐るべしです。
ディープインパクト追悼競走というサイン馬券的な結末の裏には、こんな騎手と調教師の勝つべくして勝つ技術があるわけです。
ディープインパクトといえば、エクイロックスという接着装蹄が有名でした。それを管理した装蹄師・西内 荘さんの自叙伝が弊社から発売されました。「ガラリ一変! 競馬の見方」(西内 荘)。ディープやウオッカ、メジロマックイーンといった名馬とのお話もたくさん書かれています。
(編集部K)