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無題なんだけど、戦争画をテーマに書いてみた大長編の何かです。

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数年前に書いた話(小説とかいうのはちょっとおこがましい。小説の書き方的なことを勉強したわけじゃないので)を、去年とある賞に投稿してみるか、と整理/加筆したものを細々と更新。という…
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2024年5月の記事一覧

無題/戦争画をテーマにした物語(第5部のつもり④)

      40  私が所属する美術団体「ひらく会」は終戦の翌年、新田修哉さんという画家はじめ7人が「戦争で止まってしまった日本画の歩みを再開させ、さらに新しい道(可能性)を『ひらく』」を合言葉に創設した日本画専門の団体だ。会員は芸校の卒業生が多く、母校の先輩格や後輩、あるいは在学中に終戦を迎えた若手らとともに、年2回の団体展を軸とした活動を行なっている。  新田さんも芸校の卒業生で、島崎先生の2期先輩にあたる。卒業後は銀行員として働きながら制作活動を続け、その中で展

無題/戦争画をテーマにした物語(第5部のつもり③)

      39  小笠原君自身が言っていたように、一連の話に矛盾を感じないでもなかった。でも矛盾があって当たり前というか、彼自身きっと矛盾や葛藤、混乱の中でもがきつつ描いているうちに、逃げに徹した私などが知りえない境地に達した瞬間があったのだろう。 「一閃」を描いていた時、激情に駆られて叫びそうになるのを口に手拭いを突っこんで押さえた、と話してくれたことがあったが、あれは「こんなに怖ろしい絵を描いているのに、面白いと思ってしまっている」という混乱からだった、と彼は補足し