無題/戦争画をテーマにした物語(第5部のつもり③)
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小笠原君自身が言っていたように、一連の話に矛盾を感じないでもなかった。でも矛盾があって当たり前というか、彼自身きっと矛盾や葛藤、混乱の中でもがきつつ描いているうちに、逃げに徹した私などが知りえない境地に達した瞬間があったのだろう。
「一閃」を描いていた時、激情に駆られて叫びそうになるのを口に手拭いを突っこんで押さえた、と話してくれたことがあったが、あれは「こんなに怖ろしい絵を描いているのに、面白いと思ってしまっている」という混乱からだった、と彼は補足し