無題/戦争画をテーマにした物語(第2部のつもり⑤)
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2日後、私は漁村風景を描くのを諦めて東京に戻った。九十九里浜に滞在したのは10日ほどだったが、その間の増治はじめ当地の連中との関わりを思い出せばやはり描く気にはなれなかったし、無理に描いてみたとしても卒業制作にふさわしくない仕上がりになるのは明らかだった。嫌な場所を描いてどうする、ろくな仕上がりにならないだろう。そう割り切って、一から仕切り直すことにした。
例えば古刹やお社、そのどこか寂しいような、森閑とした情景。そんなものを描いてみてもいいのかな、と思いもし