組織の原理に染まってしまってはいけない
ドラッカーは「明日を支配するもの」(ダイヤモンド社・上田惇生訳)という著書の中で、企業や組織の寿命よりも人の寿命の方がはるかに長くなっている以上、好むと好まざるとにかかわらず、誰にでも第二の人生がやってくるといい、具体的には定年前に次のステップに移るパターンを3つ紹介しています。
ひとつは、文字通り会社を辞めて、新しい仕事を始めるやり方。
二つ目に、パラレルキャリアという考え方。
つまり、今の仕事は続けながらもう一つの世界を持つというやり方。
副業的な考え方のようです。
そして三つ目に、ソーシャル・アントレプレナーになること。
今の仕事はもはや心躍るのもではなくなり、仕事は続けるけれども、時間を減らしていき、社会貢献のために事業を始めるやり方。
でも、現実にはドラッカーも次のように言っています。
「もちろん、誰もが第二の人生をもてるわけではない。
今していることをそのまま続けている人たち、あるいは似たことを繰り返しつつ、退屈しきって定年の日を待つ人たちの方が多い。」
そう簡単ではないということです。
でも、多くの50代、特に日本では団塊ジュニア世代と言われる、人口ボリュームの大きい層の人々が、「退屈しきって定年の日を待つ」ようでは、大きな社会的損失ですし、当人にとっても不幸なことです。
そこで、第二の人生となるわけですが、ドラッカーはこう教えています。
「第二の人生をもつには、一つだけ条件がある。
本格的に踏み切るはるか前から、助走していなければならない。」
上に挙げた3つの事例で成功した人たちもみな、相当以前から助走していたと言います。
助走に関して私は何度も「他流試合」に挑むことの重要性を主張していますが、このことに関連して面白い記事をネット上で見つけました。
ダイヤモンドオンラインの1月23日配信の以下の記事です。
(読了には会員登録が必要ですが無料ですのでご興味のある方は登録後お読みください。なお、私はこの会社とは何の関りもありません。)
この記事を書いた心理学者の方は、組織人間としてうまくやってきた人ほど、定年という第二の人生のスタートにあたって、どうしていいかわからないという状態に陥りやすいと指摘しています。
「組織において有能な働き手として何の疑問もなく働いてきた人は、組織に適応し安定した生活を手に入れる代わりに、自己疎外による思考停止に陥っていた」
自分の欲求や気持ちを抑えて、組織の原理に則って行動してきたサラリーマン生活に、何の疑いも持たずに適応してきた人ほど、危ないということです。
だから、少なくとも50歳になったら(できればその前から)、自分のやりたいこと、やってみたいと思う趣味や学び、社会貢献事業などに関して、どんどん外に出て、知らない人たちとの交流を体験して準備する必要があります。
組織の原理に染まってしまうほど危険なことはありません。
繰り返しになりますが、他流試合にチャレンジすることを強くお勧めします。