遠野物語109
盆のころには雨風祭とて藁にて人よりも大きな人形を作って送っていき、分岐路に立てる。紙で顔を描き瓜で陰陽の形を作り添えたりする。虫祭の藁人形にはこのようなことはなく、その形も小さい。雨風祭の折は一部落の中から当直所を選定し、里人は集まって酒を飲んだあと、一同笛太鼓でこれを道の辻まで送っていく。笛の中には桐の木で作ったホラなどがあり。これを高く吹く。さてその折の歌は「二百十日の雨風まつるよ、どちの方さ祭る、北の方さ祭る」という。
○『東国輿地(よち)勝覧』によれば韓国でも厲壇(れいだん:祭礼の絶えた者の霊を祀る壇)を必ず城の北方に作るのを見る。ともに玄武神の信仰から来たのだろう。