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黄金のレガシー 感想#3 ウクラマトについて

© SQUARE ENIX

私は作中の登場人物の中で主人公が一番好きだったことが人生で一度もない。

悟空とベジータならベジータが好きで、一番好きなのはピッコロさんだし、
セーラー戦士ではマーキュリーとサターンが好きだし、
ワンピースで一番好きなのはクロコダイルで、麦わらの一味から選ぶならブルック、
FFシリーズ全体ではカイン・ハイウインドが一番好き。

14で一番好きなキャラクターはアルフィノで、次点がエメトセルク。
黄金では暁同士が敵対関係になります! と言われて、
「アルフィノと敵対するくらいならゲームやめる……」
と、言っていた。
今回はそういう人間から見たウクラマトについて。

ここからネタバレあり、クリア後推奨です
また、マンガ「ONE PIECE」の中盤の展開に関してのネタバレがありますのでご注意ください。













黄金で一番好きなキャラはグルージャ。
バクージャジャと悩むが、グルージャのかわいさとけなげさに負けた。
FF9ではビビが一番好き。利口すぎる不幸な少年が好きなんだろうな。


ウクラマトは初めからほぼ完成されたメンター

ウクラマトは黄金の物語の中心にいる人物だ。そこに異論を挟む余地はないだろう。しかも最初からメンター寄りの人物である。この点は、FF9の主人公ジタンと同じだ。ウクラマトはジタンを意識して描かれたキャラであり、ゾラージャはクジャを意識して描かれている。
スフェーンも、「ジタンと出会うのが遅すぎて行き詰まったガーネット」を想定して描かれているのではないかと思う。ジタン=ウクラマトなので、スフェーンは最後に「もっと早く出会っていれば違ったかも」と言うのだろう。

黄金において本当に未熟なキャラクターとは、コーナ、ゾラージャ、バクージャジャ(、グルージャ、ヴォーポーロー、ゼレージャなど……)であり、最初からメンタルがほぼ完成の域に達しているウクラマトは、自分の行動で彼らを導いていく立場にある。
実際、ウクラマトが克服した弱点とは、「虚勢を張るのをやめる」という一点だけ。これを克服しただけで、ウクラマトは王にふさわしい人物になっている。
「そんな人物をヒカセンが見守らなければならない理由とは、ヒカセンでなければならない理由とは?」となってしまった人がいるのも理解はできる。そのことについては別記事に譲る。

ウクラマトはかわいい、かわいいが……

何も考えていないように見えて実は物事の本質を突くし、悩める人に対してその人がもっとも望む言葉を選ぶことができるし、とにかく王の器である。それでいて危なっかしいところがあり、ご飯を食べるのが大好きで、目がよくうるうるなってかわいいし、口元もかわいいし、スタイルも抜群だし。

目がうるうるなってかわいい

だが、ハヌハヌ族のストーリーをやっているときにちらついた、モンキー・D・ルフィの影がその後ずっと……

……

クロコダイルが一番好きだし、ダイよりポップが好きな私にとって、少年マンガの主人公にふさわしい属性をすべて兼ね備えているウクラマトというキャラクターを激推しするのは、ちょっと難しかった。

とはいえウクラマトは好き。嫌いになる要素がない。ウクラマトを演じた下山田綾華さんがものすごく好きなので、加点が1億点ある。
ウクラマトは本当にいい子だし、無意識の言葉や行動が特にいい。敵対したヨカフイ族をかばったり、自分を陥れたバクージャジャにも優しい言葉をかけられる。コーナ兄さんが「かなわない」と言った「あいつらも腹減ってるかもしれない」というセリフが最高によかった。これがウクラマト最大の美点だと思うし、彼女が最も王にふさわしい人物であると決定づける言葉だ。それが理解できるコーナ兄さんもまた優れた人物であることが伝わるので、とてもよかった。
コーナとゾラージャが王にふさわしい器を持っていないわけではなく、ウクラマトの器が一番大きかったというだけ。バクージャジャはトップじゃない方がよさそうだ。継承の儀自体は丸い決着だったと思う。

そんなわけで、彼女はキラキラ輝く最高の王様なのだが、それと「推せる」かどうかは別問題である。
こういう完全な主人公タイプのキャラクターは好みが分かれがちだと思う。私のように一生銀メダリストしか好きになれない業を背負っている者もいる。
ただ、ウクラマトを好きになれたかどうかとは別に、ウクラマトを「悪い奴だ」と思った人はいないだろう。キャラクター造形としてはそれで十分だと思う。

もっとウクラマトに寄り添う機会がほしかった

ウクラマトはトライヨラを滅ぼそうとするスフェーンに対し、彼女の事情を理解した上で「倒す」という選択ができる人間である。限界まで対話を試みて、相手が対話を拒否したときようやく力に訴える。世界最強の味方(ヒカセン)がいるのだから、問答無用で殴り勝つこともできるのに。
ゾラージャに対しても、ゾラージャを兄として慕う己の心を殺して戦おうとしたが、最後には「やっぱり兄さんなんだ」「それでも倒す」となる。自分の心が傷つくことを厭わずに前進する姿勢は一途すぎて怖いくらいだった。
そういう瞬間に彼女に寄り添ってあげたかったなと思うし、そのためにも、もっと弱いところを見せてほしかったなあと思う。船酔いするとか高いところが怖いとか、そういうのは「王として完璧な彼女」にとってはチャームポイントでしかない。ウクラマト自身が強すぎるんだよね。

何度も別作品の話をして申し訳ないが、ONE PIECEのルフィは一度、リーダーとして致命的な失敗をしている。ウォーターセブン、と言えば読者の方はわかってくれるだろう。ゴーイングメリー号を巡り、ウソップとケンカしてしまうところだ。
ウクラマトにもあのレベルのしくじりをしてもらって、それをヒカセンたちが助ける展開があったら、もう少しウクラマトの心に寄り添いやすかったんじゃないかと思う。
14において一番しんどい失敗をしたのはアルフィノだろう。そんなアルフィノもヒカセンに支えられて立ち直り、今では薪拾いのエキスパートに成長できた。過去の冒険の経験を活かして新しい仲間を支える展開がほしかったな。

よくネタにされるが、薪の話は蒼天以降のアルフィノの成長を一番端的に表現していて好き

あとは、ゾラージャがクジャ、ウクラマトがジタンをモチーフに描かれたキャラクターであることを活かして、ウクラマトが「独りじゃない」って再起する展開とかそういうのがあったらなあ、とか思ったりもした。
もしかすると、今後の7.xにあるかもしれないが。

しかし、挫折とか絶望といった展開が「夏休み」にふさわしい内容かというと……
黄金のシナリオは、ちょっとコンセプト上の制約が強すぎたんではないか、と思わなくもない。その中で一番割を食ったのがウクラマトだったのでは……という気がしてしまう。黄金のプレイヤーたちは全員暁月を超えてきているので、多少えぐめの展開を入れても問題ないと思うのだが。

とはいえ、同じ親に育てられていながら、ゾラージャが愛に飢えていたのに対し、ウクラマトがしっかりと愛されガールに育っていたのが、黄金の一番しんどいところだとは思う。

ナミーカの存在

ナミーカはウクラマトのキャラ性の一部だ。ナミーカがいることで、ウクラマトの物語がより鮮やかになる。ナミーカについて考えることは、ウクラマトを語る上で絶対に外せない。

しかし、ナミーカ自身のキャラクターは薄すぎる。申し訳ないのだが、ウクラマトのための舞台装置として登場したキャラクターという印象を拭いきれなかった。私は疑似親子の物語に弱いのでリビング・メモリーのウクラマトとナミーカのイベントで号泣したのだが、正直なところ、ヒカセンとナミーカの間にはほとんどなんの絆もないので、後方腕組みで見ているしかなかった人も結構いるのではないかと思ってしまった。

ナミーカが作ったご飯をヒカセンが食べるシーンはなぜないのか

黄金は明らかにフード理論を物語に組み込んでいる。
フード理論とは、食事を通じて登場人物の属性を紹介する演出方法のこと。バクージャジャがタコスを踏みつけるシーンなどに端的に表れている。
「ご飯を食べる」というシーンがどれだけ大事かは、FF14をここまでやってきた人ならもう語らずともわかるだろう。アイメリクとの食事会、水晶公のサンドイッチ、ゼロの激辛カレーなど、関係性の深まりや、キャラクターたちの人間くささや、人間らしさを表現するのに何度も使われている。
ナミーカはウクラマトのために食事を作ってくれる人だと劇中ではっきり示されている。それならヒカセンとウクラマトがナミーカの作った食事を一緒に食べるパートがほしかった。より正確に言えば、ナミーカ自身に対しても、何らかの感情を持ちたかった

ナミーカは、ウクラマトを愛している乳母である。
ナミーカがトライヨラを去り地元に帰るときに贈り物をするウクラマト、その贈り物を宝物と感じるナミーカ。
実子を亡くして悲しみに暮れていたとき、ウクラマトの乳母となったことで、心が救われた。
7.0をクリアしたが、ナミーカに関しては、それしかわからない。しかも、これらはすべてテキストでのみ語られたことだ。

ウクラマトが贈った腕輪が、その後ヘリテージファウンドでの時空のずれを説明してくれる。これがあるからスッと理解できる。言葉で説明したことを腕輪が補強してくれる。この腕輪自体は、物語上めちゃくちゃいい働きをしている。
いい働きをしているが、この腕輪、説明のために用意された感が否めない。この腕輪自体、ひいてはナミーカ自身の物語をプレイヤーが全然見ていないからだと思う。ウクラマトが腕輪を贈るところすら見ていないのだから、急に出てきても「ふーん」以上の感想は持てなかった。
たとえばモブリン族のところで関わったフォンジャンテーンが彫金師なのだから、ナミーカの腕輪を作ったのはフォンジャンテーンであると明言したりとか、腕輪を贈るという行為自体をウクラマトの旅路の結実として表現すればよかったのに、もったいないなあと思った。超える力で、ナミーカと幼少ウクラマトのやりとりを見ることができていたら、まったく違ったろうと思う。

ナミーカ自身のことがもっとよくわかっていれば、永久人のナミーカを消すシーンでもっとウクラマトのことを考えられたと思う。エレンヴィルがカフキワとの別れに迷っているのに対して、王であるウクラマトはナミーカとの別れに一切の迷いがない、という対比も、もっと鮮やかに描けたと思うのだ。

ワンピの頂上戦争編がしんどいのは、それまでにエースという人物が描写され続けてきたからだ。その後、エースを失ったルフィを見るたびに、読者はしんどくなる。
ウクラマトにより深く感情移入するために、ナミーカをもっと描いてほしかったなあ、というのが正直な気持ちだ。

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