
「深く聴く」ことの素晴らしい効果|文学作品の中にあったコーチングスキル
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深い傾聴の素晴らしい効果
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■3つの傾聴とは?
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1.内的傾聴 相手のためというより自分のために聞いている
2.集中的傾聴 話している言葉の意味に集中している
3.全方位的傾聴 相手が話しているその時その場のすべてを聴いている
コーチングではこのうち3の全方位的集中を使います
というか この姿勢でコーチがクライアントの話を聴かなければ意味がないとさえ言えます
で
2の集中的傾聴はわかりやすいと思います
丁寧に相手の話に耳を傾け その真意を理解する
という感じです
でもそれ以上の全方位的傾聴とは何か?
実は
この全方位的傾聴ですが
文学作品の中にその事例があります
■ヘルマン・ヘッセ作『シッダールタ』
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ヘッセの有名な小説に『シッダールタ』があります
釈迦をモチーフに ヘッセ的解釈により
釈迦であって釈迦でない 道を求めるシッダールタの話です
この小説の中で 晩年近く
シッダールタはある川の渡し船の弟子になります
そして毎日川を見つめるうちに川が自分の声を聴いてくれることに気づきました
そして川は傾聴してくれている存在だと感じます
「この傾聴者(聞いてくれる人)に自分の心の傷を示すのは、傷を川にひたし 川と一つにするのと同じことだ」
シッダールタは思った
「自分の話を傾聴しているのはもはや人間ではない
身動きもせずに傾聴しているこの人は、
木が雨を吸い込むように自分の悲しみと後悔を吸い込んでいる。
身動きもせぬこの人は川そのものであり、神そのものであり、永遠そのものであった・・・」
彼は傾聴者になりきり傾聴に没頭していた
シッダールタは耳を澄ました。
彼は傾聴者になりきり、傾聴に没頭しきった。
ひたすらに吸い込みながら。彼は今や傾聴を究極まで学んだ。
ヘッセ「シッダールタ」高橋健二訳
■ミヒャエル・エンデ作『モモ』
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エンデのモモ
エンデの有名な作品『モモ』の中にはこんなくだりがあります
主人公の家なし子モモのところには、様々な人が訪れます。
困ったことがあったらモモのところにいってごらん、と近所の人は言います。
しかしモモが何かアドバイスするなんてことはありません
モモに話を聞いてもらっていると
急にじぶんお意思がはっきりして来ます
・・・・・・
「彼女はじっと坐って注意深く聴いてるだけです。その大きな黒い目は相手をじっと見つめています。
すると相手には
自分のどこにそんな(素晴らしい)ものが潜んでいたのかと驚くような
考えがすうっと浮かび上がってくるのです。
モモに話を聞いてもらっていると
急に自分の意思がはっきりして来ます。
急に目の前が開け勇気が出てきます。
希望が湧いてきます」
『モモ』ミヒャエル・エンデ著大島かおり訳
■まとめ
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人間って自分が認めれたり
気にしてもらえたりするだけで
変わるエネルギーを持っています
自然の傾聴はすごいのですが
ただ完全に無言なので
コーチの質問がそこに入るとより効果があります
「あなたはどんな人生をおくりたいですか」
こんな根本的な質問に自分の言葉で答えていくと
実に多くの気づきが得られます