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カヴェコ・スポーツシリーズから追加注文

前記事に述べたとおり、私は先ごろ手にしたカヴェコ・ブラススポーツの書き心地にある興趣を催した。そうして、その私にとって好もしい書き心地を実現している要素の一つは、真鍮軸であるそのペンのけっこうな重さではないかと当たりをつけた。

その茫漠たる仮説を検証するには、同じ形のもっと軽いペンを使ってみればよい。私はプラスチック軸のクラシックスポーツと、アルミ軸のアルスポーツを買い足すことにした。プラスチック軸はいちばん軽く、アルミ軸はもっと重いが真鍮軸ほどではない。

Kaweco Brass Sport Medium nib / Waterman Absolute Brown / Life Noble Note A5 Section

とりわけアルミ軸は、キャップや首軸の接合部のネジがアルミ=金属であり、その部分の精密さが担保されている。やはり接合部が金属である真鍮軸と——接合の堅固さは措いて――、重さによる書き心地の違いを吟味するのにもってこいだろう。

以上のように書くと、検証のためだけにペンを買い求めるのだとしたら、それは本末転倒ではないか、と眉をひそめる諸賢もおられるかもしれない。

けして、そしりを見越して言い訳するわけではなく、実のところ私はただ、このカヴェコ・スポーツシリーズの、ブラスとは別の素材のペンも使ってみたくなった。そのように素直に白状するほうが、ほんとうの心持をより言い当てているように思われる。検証云々は、もちろん半分は事実であるが、半分はペンの追加購入を正当化する理由として用意した側面がある。

Kaweco AL Sport Medium nib / Sailor Shikiori Shimoyo / Life Noble Note A5 Section

クラシックスポーツのボディ色は、ボルドーやグリーンにも惹かれたが、好きな色を聞かれてまず思い浮かぶ赤を選択した。実際にペンを目にした私は、その選択が間違っていなかったと満足した。

アルスポーツは、やはりディープレッドには大いにそそられたが、結局マット加工などの表面処理を施しておらず、素材感が楽しめるものを選択した。ブラスほど顕著ではないだろうが、経年変化があるのがおもしろいと考えたのだ。

Kaweco Classic Sport Medium nib / Kaweco ink cartridge Royal Blue / Life Noble Note A5 Section

さて、ブラススポーツは殊更重いとはいえ、キャップをポストしてもさほど長くないからか、その重みを手に心地よく受けとめることができる。遠心力に振り回されることにはならないし、自重で紙の上を走りだそうとするペンを指の力で引きとどめる必要もない。

それよりはずいぶんと軽いアルスポーツも、手にその心地よい重みを受けとめながら書くことができるという点において、ブラススポーツに似た感覚で走らせることができるようだ。

ところが、クラシックスポーツまで軽くなると少々事情が異なってくる。紙にペン先をしっかりと着地させる意識を持っておかないと、ともすればペン先が浮いてしまい、スキップを招くことがあった。

ブラススポーツやアルスポーツのペン先が自然とうまく紙に着地するのに比べて、クラシックスポーツは、着地するベクトルへの意識を持ちながら書き進めなければならないので、私にとってはやや煩雑に感じられた。

もっとも、紙やインクを統一して比較したわけではない。また、今回私はブラススポーツやアルスポーツでの書き方に慣れた後にクラシックスポーツを使った。その順番のためにクラシックスポーツでの書き方を探るのに時間を要した面もある。

自分の手でしっかりと書きたいか、私のようにある程度はペンの側に書く作業を委ねてしまいたいかという好みの違いが、クラシックスポーツに不利に働いたことも否定できない。よって、評価を下すにはまだ早いことは強調しておきたい。

Kaweco Classic Sport Medium nib / Kaweco ink cartridge Royal Blue

上の写真は長3クラフト封筒に書いたものである。万年筆で使いよいとされるツバメノートやMDノートよりも、もっと普通の紙に書くと、スキップも起こらず存外書きやすいと思われた。

クラシックスポーツについては現時点において、特に万年筆での筆記を想定しているとも思われない手帳を含め、いわゆる普通の紙への筆記が私の期待の中心に浮上したが、それだけでは些か物足りない。引き続き、ツバメノートやMDノートでの書き方や、インクとの相性も探ってみたい。

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