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  • パイロット、カスタム823

    私の好きなパイロット、カスタム823についての感想です。

最近の記事

カヴェコ・クラシックスポーツの名誉のために

カヴェコ・クラシックスポーツの名誉のためにもまず述べておきたいことがある。前記事において私は、クラシックスポーツはツバメノートやMDノートではスキップが生じることがあり、むしろ手帳や長3封筒といった特に万年筆での筆記を想定しているわけではない、いわば普通の用紙のほうが具合がよかったというふうなことを書いた。なお、付属のインクカートリッジを使用していた。 ところがその後、粘度が低いとされるパイロットの色彩雫を試みに入れてみたところ、事情はがらりと変わった。ツバメノートでもMD

    • カヴェコ・スポーツシリーズから追加注文

      前記事に述べたとおり、私は先ごろ手にしたカヴェコ・ブラススポーツの書き心地にある興趣を催した。そうして、その私にとって好もしい書き心地を実現している要素の一つは、真鍮軸であるそのペンのけっこうな重さではないかと当たりをつけた。 その茫漠たる仮説を検証するには、同じ形のもっと軽いペンを使ってみればよい。私はプラスチック軸のクラシックスポーツと、アルミ軸のアルスポーツを買い足すことにした。プラスチック軸はいちばん軽く、アルミ軸はもっと重いが真鍮軸ほどではない。 とりわけアルミ

      • ブラススポーツの堅牢性について

        おみそれした、と心の裡でつぶやきつづけている。何も知らぬというのに私は、カヴェコの優位性はそのデザインにあり、書き味などはそこそこといったところであろうと勝手なイメージを形成してしまっていた。カヴェコが評価されるのは殆どはファッション性の文脈においてであり、書き味はおまけ程度に語られているのではないか、と。無知のきわみである。 私自身、このブラススポーツの購入を決めたのは、お守りとしての役割を期待してのことであった。書き味のほうはそこそこ書けるのならば十分だと軽く考えていた

        • カヴェコ・ブラススポーツ

          カヴェコ・ブラススポーツ。その名のとおり真鍮製のペンである。いつか使ってみようとリストアップしてから、ずいぶんと月日が流れてしまっていた。私としては、実用面でそのペンが無いと困るわけではなく、購入は自然と先送りされた。 今回、いよいよ購入に至ったのは、常に机に置いておき、あるいは旅先にも携帯する、何か眺めるだけで心の拠り所となってくれるペンが欲しい、そんな心情が不意に湧いたからだ。カヴェコ・ブラススポーツはその要求にうってつけと思われた。 それにしても拠り所を求めるとは、

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        • パイロット、カスタム823
          5本

        記事

          私が帰るカスタム823

          結局そこに戻る。そんなペンがあるとすれば、私の場合はパイロットのカスタム823だろう。はじめ手にしたトランスペアレントブラックの中字がいたく気に入った私は、後にアンバーの細字も追加した。 実は私には中字くらいの字幅を好む傾向がある。それに一本目の中字が目になじんでいたこともあって、細字には最初、〈細すぎるかな〉という印象を持った。が、使ううちにすぐにそれもなじんできた。 見た目もアンバーのほうは最初、〈何だか蝉のようじゃないか〉とどちらかといえば消極的な感想が去来したもの

          私が帰るカスタム823

          雑記(パイロット・キャップレス TWSBI ECO 野原工芸シャープペンシル)

          本稿のタイトルを「雑記」としたのには訳がある。今、たまたま机に載っていた三本のペンについて述べておこうと考えたからだ。恐らくは、とりとめのない記事となることを断っておきたかった。 まずは、二本の万年筆が私に目配せする。パイロット・キャップレスと TWSBI ECO である。それらは私が直近に手に入れた二本であるから、「たまたま机に載っていた」という前言には多少の脚色がある。新たに購入したものをまずは使いたいという心情をあたかも忘れてしまったかのように「たまたま」などと云うの

          雑記(パイロット・キャップレス TWSBI ECO 野原工芸シャープペンシル)

          Light and Lively

          何か楽しい。ただただ楽しい。昨日届いた TWSBI ECO のことである。まずはキャップをかちりと安定的にポストすることができ、脱落の心配が少ない点が気に入った。 クリア色のボディは、入れたインクの色が楽しめてよいなどとよく聞くが、常々私は「それはいいね」と応じつつも、そんなこと些末事ではないかしらと考え、時に小さな冷笑を浮かべさえした。ところが、この TWSBI ECO を手にし、インクを入れたとき、自らの浅薄を大いに恥じることとなった。 インクを横目に書くのも、机に置

          Light and Lively

          近ごろ生まれた変化について

          私は万年筆が好きで、それと比べればボールペンにはさして関心もなかった。だが、万年筆も使い始めて四五年も経つと、どんな場面にも何がなんでもそれを使うのだという、焦燥にも似た気持もようやくにして治まってきた。 そうして幾分落ち着いてみると、やはりインクの性質から、万年筆は持ち運ぶのにはあまり向かず、移動が多いときにはより堅牢なボールペンがその力を発揮することに改めて思い至った。薄々勘づいてはいたことを、ついに認めたわけである。 万年筆を旅行に携帯して大きな問題が生じたことはな

          近ごろ生まれた変化について

          ケリー

          ぺんてるのケリー。私がこのペンの書き心地に感心したことは、じつはない。グリップする部分がつるつるしていて、どこか心許ないのだ。 なるほどペンの腹、中央あたりにはギザギザのパーツがあるが、殊シャープペンシルの場合はもう少し先というか下――やはりこのペンではつるつるの部分を持つのが一般的ではなかろうか。 だからといって、書きにくいかといえば、そんなこともない。グリップのホールド感の薄さなどは、私のように専ら日々のちょっとしたメモに間欠的に、簡潔に、しかし頻繁にシャープペンシル

          細字を買い足したエリート95S

          前回取り上げたキャップレスはその名のとおり、キャップがなく、それをいちいち外したり、ポストしたりせずとも書きだせるところに特徴がある。概してその点が優位性と捉えられることに反論の余地は少ないだろう。 もっとも私は、ノックするとペン先が繰り出される機構がおもしろくて、いつもためつすがめつしたり、一度収めたペン先を出しなおしたりしているから、その手間がかからないという恩恵に与っているとは言い難い。むしろ書きだすまでに相当の時間を要しているのではないか。 万年筆のキャップを外し

          細字を買い足したエリート95S

          ふつうのキャップレス

          パイロットのキャップレス。もう長い間、私の欲しいものリストに入っていたペンである。これは私の好みで、感覚的なことだが、この山吹色のキャップレスが欲しかった。 購入が延び延びになっていたわけは、一つには、キャップレスデシモが既に手元にあったことがあるだろう。ノック式というキャップレスの特徴的な機構については十分に検分していたから、果たしてもう一つ必要だろうかという点に自信が持てなかった。 もう一つの理由として、このキャップレスはデシモのような金ペンではない。合金である。万年

          ふつうのキャップレス

          ぺんてるシャープペン、スマッシュ

          こんなにも多くの人に使われ、支持も得ているこのペンについて、今更私に何が云えるのか(何も云えはしまい)。が、好きなペンについてはやはり何か云っておきたい。 それよりも私は、何かを云うために体験を振り返り、それを再構成するなかで、ただ好きだという茫漠とした自身の感興の拠り所を、あわよくば見つけられるのではないかと期待しているのだ。 だからこれは自分のために書くノートでもある。 私がふだん積極的にシャーペンの情報を取りに行くことは殆どない。このスマッシュ(0.5mm)にした

          ぺんてるシャープペン、スマッシュ

          フェイク・パーカー・ソネット

          元来私は太いペンが好きだ。指と接する面積も大きいので、しっかりと密着してくる感じがある。それで、指とペンが一体となって動いている感覚が得られ、安定感がある。 だが、他ならぬこの細身のペンがきっかけで、私は本当に太いペンが好きなのかしらん、と、疑念を抱くようにもなった。 このペンを持つときは、自分の指がベッドマットになったように感じる。そこに、このペンが背中から落ちてくる。接する面積はさほど大きくないが、こちらにはその背中をそっと受けとめる手応えがある。 おそらくこのペン

          フェイク・パーカー・ソネット

          プラチナ・プレジール

          プラチナのプレジール。売りは豊富なカラーバリエーションを備えたアルミのボディと、キャップを閉めた状態で、一年間使わなくてもインクが乾かないという「スリップシール機構」を搭載したところか。 私自身は、インクは乾くものだと捉えているので、そのスリップシール機構の恩恵を実感しているわけではない。経年変化しない皮革製品や、日持ちする鮮魚に似た薄気味悪さを覚えるといえば言い過ぎだろうか。 字幅は中字(0.5)、細字(0.3)の二種。個体差はあるだろうが、私の手元の二本については、中

          プラチナ・プレジール

          パイロット・エリート95S

          パイロット・エリート95Sはショートサイズの万年筆で、収納時の全長はといえば12㎝にも満たない。それが、筆記時にキャップをポストすると15㎝弱の、丁度持ちやすい長さになる。まあ、ショートサイズの万年筆としてはありきたりなのだろうが、それを使ったことのなかった私は、そこに仕掛的なおもしろさも感じた。 エリート95SのSはショートサイズを指し、95はパイロット創立95年の年に発表されたという意味だそうだ。 そもそもは1968年に発表されたエリートSというモデルがあり、エリート

          パイロット・エリート95S

          野原工芸のシャーペンと、パーカーのIMコアライン万年筆

          最近どうも、もりもりと書く機会を持てていません。そうしたなか、私のなかで俄然存在感を増しているように思えるのが、この野原工芸のシャーペンと、パーカーのIMコアライン万年筆です。 私としては、やはりもりもりと書くには万年筆が一番都合がよく、〈やっぱり万年筆はいいな〉という感想はずっと身近なものでした。が、もりもりと書いていない最近は、そんな感想も浮かびようがありません。 ぱらぱらと間欠的に二三枚記すというシチュエーションにおいては、全く事情も変わってきます。インクの乾きを気

          野原工芸のシャーペンと、パーカーのIMコアライン万年筆