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パイロット・エリート95S
パイロット・エリート95Sはショートサイズの万年筆で、収納時の全長はといえば12㎝にも満たない。それが、筆記時にキャップをポストすると15㎝弱の、丁度持ちやすい長さになる。まあ、ショートサイズの万年筆としてはありきたりなのだろうが、それを使ったことのなかった私は、そこに仕掛的なおもしろさも感じた。
エリート95SのSはショートサイズを指し、95はパイロット創立95年の年に発表されたという意味だそうだ。
そもそもは1968年に発表されたエリートSというモデルがあり、エリート95SはそのエリートSの2代目(1974年モデル)をベースにした復刻版であるとのこと。
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実は、エリート95Sはもう長い間気になっていた。しかしながら、エリートという名称にどうも気後れしてしまうところがあり、購入には踏み切れない。それでも、筆記動画を眺めたり、情報に触れたりするたびに欲しいという気持は高まった。
今回は、「名前なんぞにこだわって手を出さないというのは、そりゃあ君、少々大人げないのじゃないかい?」と自らを諫め、いよいよ購入に漕ぎ着けた。
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エリート95Sが気になっていた大きな理由の一つは、バネカツラ方式という嵌合式でキャップを開け閉めする点。よくあるタイプの嵌合式では、首軸に凸部があり、キャップ内側には溝(凹部)が切られている——それらがカチッと音を立てて嵌まるという方式がとられているのではないか。
一方、バネカツラ方式では、首軸に凹凸はなく、キャップ内側に設えたカツラと呼ばれる金属パーツにバネが仕込まれている。キャップが首軸の太いほうにに向かって進むと、バネの働きによってしだいにフィット感が増大していく。ついには首軸はキャップにしっかりと押さえられ、あるいはキャップは首軸にホールドされる。そうした仕組であるようだ。
また、キャップをポストする際も同様に、このバネを働かせる仕組でしっかりとホールドされる。
収納時も、キャップをポストする際も、方向こそ真逆だが共通していわゆるキャップ「止め」の役割を果たす鍔のようなものが設えてある。その鍔に最後にキャップが当たるときにはカチッという音がする。
しかし、このカツラという金属パーツが首軸と音を立てることはない。その音も立てずスッとキャップが収まる感触が何ともいえずよい。緻密さが感じられる設計が好もしく、私としてはこのバネカツラ方式が味わえるだけでも買った価値があったと思った。
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もっとも、仮に書き味が残念なものであったならば、先述したキャップの開け閉めの心地よさなどは結局台無しになってしまうだろうが、実際に書いてみて、書き味のほうも気に入った。
首軸と一体のペン先ということもあってか、しなりのようなものは感じない。むしろ硬直的なペン先といえるが、だからといって紙に接地する際のアタックが気になることはない。長時間にわたり書きつづけたとしても、手が疲れる心配はなさそうだ。
一言でいえば、このペン先は「しならないが、手に衝撃は来ず、滑らかに走る」ということになる。私はとても気に入った。
エリート95Sの字幅はEF、F、Mがラインナップされており、私はMを選択した。なお、今回の筆記では、インク:パイロット・ブルーブラック(CON-40)、用紙:MDノートA5を使用している。