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細字を買い足したエリート95S
前回取り上げたキャップレスはその名のとおり、キャップがなく、それをいちいち外したり、ポストしたりせずとも書きだせるところに特徴がある。概してその点が優位性と捉えられることに反論の余地は少ないだろう。
もっとも私は、ノックするとペン先が繰り出される機構がおもしろくて、いつもためつすがめつしたり、一度収めたペン先を出しなおしたりしているから、その手間がかからないという恩恵に与っているとは言い難い。むしろ書きだすまでに相当の時間を要しているのではないか。
万年筆のキャップを外したり、ポストしたりするのが手間かと問われれば、なるほど手間には違いない。しかし、たとえば同じパイロットの、エリート95Sについて述べるなら、特徴的なバネカツラ方式のキャップを開け閉めするたびに、いつも私は感心する。すなわち、その物理的な手間に消極的な意味合いは皆無なのだ。
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キャップの内側に設えたカツラと呼ばれる金属パーツにバネが仕込まれている。バネの働きによって、閉める際も、ポストする際も、キャップはしっかりと、それでいて優しくスッとホールドされる。そのスッという優しい感触は、キャップを開ける際にも同様に味わえる。
殊エリート95Sについていえば、キャップを外したり、ポストしたりすることは物理的に手間であるには違いないが、その手間自体が私にとっては都度楽しい体験である。そこに、このペンを使う醍醐味があるといっても、あながち的外れではないはずだ。
私は七月にエリート95Sの中字を購入したが、キャップを外したり、ポストしたりする感触の虜になり、九月にはこの細字を買い足した。冷静に考えれば、その感触を楽しむためだけなら一本で十分である。だから、その素早い追加は、私が肝心の書き味も気に入ったことの証左となるのではないか。