カヴェコ・クラシックスポーツの名誉のために
カヴェコ・クラシックスポーツの名誉のためにもまず述べておきたいことがある。前記事において私は、クラシックスポーツはツバメノートやMDノートではスキップが生じることがあり、むしろ手帳や長3封筒といった特に万年筆での筆記を想定しているわけではない、いわば普通の用紙のほうが具合がよかったというふうなことを書いた。なお、付属のインクカートリッジを使用していた。
ところがその後、粘度が低いとされるパイロットの色彩雫を試みに入れてみたところ、事情はがらりと変わった。ツバメノートでもMDノートでも、スキップが起こることはもうなくなった。ただの一度もなかったのだ。とてもスムースな、それでいて少ししっとりとしたところもある筆記がたのしめるではないか。
その「しっとりとしたところもある」ことが肝要だと私には思われる。以前の筆記ではそれがなかったために、インクがうまく用紙に載らず、ひいてはスキップしてしまっていたように振り返られる。
そのとき私は、このペンに合わせて、うまく書けるような握り方を模索すればよいだろうと考えていた。それでペンの角度などがわずかにでも変わればスムースに書けるだろう、そのようなツボはきっとあるはずだ、と。
しかし、思いもよらず、インクを変えただけで一転すこぶる書きやすくなった。私は自分の握り方を調整する必要がもうなくなった。握り方を模索するという試みにはそれ自体におもしろさもあるので、やや拍子抜けしたものの、書きやすくなってうれしくないわけはない。
そうしたわけで、今回私は模索、調整を始めるに至らなかったが、恐らくはいまの私とは違う、私が発見できたかもしれない握り方で、このカヴェコ・クラシックスポーツとインクカートリッジを使い、その書き味を堪能しているあまたの諸賢がおられることは想像に難くない。すると冒頭で、私がクラシックスポーツの名誉云々と述べたのは蛇足であった。
かつて私は、カヴェコスポーツを色違いで多数コレクションしているある万年筆愛好家の動画を見、そう何本も揃えたところで使いどころに困るであろうにと訝ったことがある。しかしそのときにも、壮観ともいえるそのコレクションを眺めながら、どこかにうらやむ気持はあった。したいことよりも、できることをまず考えてしまうきらいが私にはある。
そんな私がブラススポーツ、アルスポーツ、クラシックスポーツの三本を立て続けに買い求め、未だにあれもいいなとカタログを前によだれを垂らしているのだから先のことはわからない。これが手にしてわかる、カヴェコスポーツの魅力というものだろうか。
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