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セーラー万年筆のプロフィットスタンダード
セーラーのプロフィットスタンダードは2019年4月に、私がはじめて買った万年筆です。比較的安価な鉄ペンから始めるという選択肢はあったはずですが、当時の私には、万年筆の何たるかをつかむためには、やはりまず金ペンを試してみるべきだという未経験者らしいこだわりがありました。それは、最初に少し出費しておけば嫌でも続けるだろうという、三日坊主の予防策でもありました。
そこで、パイロットのカスタム74、プラチナの3776センチュリー、そしてこのプロフィットスタンダードのいずれかにしようと検討しました。そのなかからプロフィットスタンダードを選んだのは、単にデザインが一番気に入ったからです。
万年筆について右も左もわからぬ私には、それ以外の基準は持ちようもありません。例えばクリップの形状を比べても、三者のなかではセーラーがもっとも洗練されていると当時の私の目には映りました。
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では、なぜこのプロフィットスタンダードを使わなくなってしまっていたのかと振り返ると、二つの理由が思い浮かびます。
一つには、パイロットのカスタム74を使うようになり、その長さに慣れてしまうと、このプロフィットスタンダードはどうも短いぞと感じるようになったこと。
もう一つには、私的感想としては、パイロットはインクの出がたいへん潤沢で、とても滑らかに書ける印象が強く、一方プラチナには、滑らかさを少し抑えることで、紙の感触をしっかりと感じとれる美点があります。セーラーはといえば私のなかでは、滑らかさの面で両者の中間に位置するという、しごく漠然とした印象だけを纏ってしまっていました。
そこで、滑らかに書きたいときはついパイロットをとり、紙のレスポンスをたのしみたいときはプラチナに手を伸ばすなかで、私にとってはセーラーが埋没してしまっていたように思います。
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しかしセーラーにはセーラーの特徴というものがあるはずで、今、改めてこのプロフィットスタンダードを使いながら感じるのは、とても品のある書き心地だなということです(またもや漠然としてしまいました)。
また、ペンの長さについても、今書いていると長さが足りないわけではなく、むしろ、これ以上短いと書きにくいかもしれないなというギリギリのところで書きやすさを担保しているところに、無駄のない洗練を感じます。
私の万年筆ユーザーとしての未熟さから、知らず知らず何か分かりやすい特徴を持つペンばかりに惹かれてしまい、そうしたなか、このプロフィットスタンダードのようないわば穏当なペンが埋もれてしまっていたのではなかったか。どうもそのように思えてきました。
今後はこのプロフィットスタンダードの書き心地についてもしっかりと味わえるようになれたらいいな、と考えているところです。
このプロフィットスタンダードは一度カーペットに落としてしまったことがあり、その後しばらく経ってからですが、どうもインクの出が悪くなってしまったので困惑しました。やはり落としたのがいけなかったのかと悔やみました。
実際には、初歩的なミスですが、こすりとられた紙の屑のようなものが詰まってしまっているのを放置していたらしいと後になってわかり、ペン先をちょっと水に浸けただけで、インクの出も元に戻って、胸を撫で下ろしました。
そうした困惑も経ているので、はじめて買った万年筆でもあり、このペンで気持ちよく書けるのはうれしいですね。