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「ヘラヘラ」というオノマトペ

 わたしはどちらかというと「ヘラヘラ」している人間だ。優しい人はにこにこと表現してくれたりもするけれど、まあそれは置いておいて、「ヘラヘラ」がどんな意味なのか調べてみる。


【一】[副](スル)
1 だらしなくあいまいに笑うさま。「—(と)笑っている場合ではない」「—(と)した態度にむかつく」
2 軽々しくよくしゃべるさま。「—(と)お追従を言う」
3 紙や布などが薄く腰の弱いさま。「—(と)した画用紙」
【二】[形動]【一】3に同じ。「—な下敷き」
[アクセント]【一】はヘラヘラ、【二】はヘラヘラ。

Weblio国語辞典より

 これを機に古い電子辞書の電池を換えようとしたら、ちょうど単4だけありませんでした。web辞書で失礼します。

 1.の用法がわたしがよく言う「ヘラヘラ」だ。都合の悪い話題とか、言われたくないことを言われた時に、「へへ、そうですね〜」などと曖昧に笑って返事をする。だらしないかどうかは自分ではよく分からない。本当なら悲しみや怒りや苦しみを見せたい場面だけれど、それをしてはいけない気がする。だからとりあえず笑って誤魔化す。その時の笑いは、曖昧なもので、本心からのものでもないから、人によってはだらしなく見えるのだろう。
 「ヘラヘラするな」は怒られている時に良く耳にする使い方だ。怒られている人は、様々な感情を抱いているだろう。後悔、恐怖、屈辱、面倒、色々な負の感情が心を占めている人が多いはずだ。そんな人が自分の心を守るために無意識に笑ってしまう。そんな場面が想像された。怒らせたくてわざとヘラヘラする人は少ないのではないのだろうか。
 しかし、ヘラヘラしているつもりがなくてもそう見られる人もいたりする。これは3.の用法があるからじゃないかと思った。怒られている時、怒っている人は相手が直立不動、真顔で表情筋を動かさず、はい、はい、すみません、とはっきり答えることを望んでいるのではないか。しかし常に直立不動とかかっちりした真顔を保てない人もいる。猫背になったり、真顔が笑顔っぽい人もいるだろう。そんな人は「ヘラヘラしている」とみなされやすいのではないか。

 ところで、3.の意味では現代では「ペラペラ」も使われる。日本語は半濁音がなくなる(母は昔パパと読まれていた)と聞いたことがあるが、付くパターンもあるのだろうか。それとも別々に発生したオノマトペなのだろうか。

 「ヘラヘラ」は自分がそうだから、というのもあるけれど、なんだか響きが面白いと思ったのも今回文章を書いてみた理由のひとつだ。ヘラ、という何だか力が抜ける気がする音の並び。まさにヘラヘラだなあ、と思う。
 音と意味(実際には形)はどの言語の人も似たイメージを持っているらしい。キキとブーバの実験として知られるものだ。トゲトゲの図形と丸っぽい図形を見せて、どちらがキキでどちらがブーバですか?と聞くと、ほぼトゲトゲの方をキキだと言うらしい。わたしもそっちがキキだと思う。世界のほとんどの人が同じことを思うなんて不思議だ。

 他の国の人にも、「ヘラヘラ」とか「ペラペラ」を教えたら便利だと思うだろうか。そういえば、流暢に話すことも「ペラペラ」と表現する。薄いだけではない、意外と奥が深いオノマトペである。

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