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子育てで後悔していること


はじめに

 ごめんなさい、完全に釣りタイトルです。というのもわたしは子どもの方の立場で、親になったことなどないからです。この記事は子どもの立場から、家庭環境の影響でうつ病になった人間として、子育てでこんなことを気をつけて欲しいなということを書くものです。ただ、母親が後悔していると話したことも書くので、その部分に関しては「子育ての後悔」かなと思います。

どんな家庭だったか

 わたしの父親は典型的なモラハラをする人でした。「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」「お前は頭が悪い」「何でこんなことも出来ないんだ」と毎日のようにわたしの母親やわたしたちきょうだいを怒鳴っていました。感情が制御できずキレやすい、常に自分が正しいと思っている、昔ながらの男尊女卑的な考え(女が家事育児をすべき、男は台所に入らない)を持っている人間でした。
 そんな父親に支配され、ほかの家族は父親の顔色を窺って生活していました。母親は仕事もしていて、収入は父親より多いくらいなのに、家事や育児もひとりでしていました。生活費などもほとんど母親が出していました。母親は、モラハラや経済的DVの被害者でもあります。

わたしが受けた影響

 そんな家庭で育ったわたしは、幼い頃から他人に怒られることに怯えていました。誰かが不機嫌になれば自分のせいかもしれないと思い、保育園では先生の言いつけを必死に守り、家では良い子として振る舞うよう努力していました。
 もともと考えすぎな性格でもあるのかもしれませんが、父親に怒鳴られないように出来るだけ先を読んで行動していました。自分で言うのもおかしいですが、子どもにしてはよく気がつくタイプだったと思います。父親のビールがなくなればすぐに次を持ってきたり、愚痴大会が始まればひたすら聞き役に徹したり、母親と喧嘩になりそうになれば仲裁したりしました。
 しかし、そんな努力で怒鳴らなくなるような父親ではありません。わたしの努力は失敗ばかりでした。だから自分は何もできない価値のない人間だと思うようになりました。周りの人を苛立たせる出来損ないの人間です。だから小学生の頃には死にたいと思うようになりました。自分もこんな生活辛かったし、きっと自分が生きてても迷惑をかけるだけだと。
 そんな中でも、勉強だけは褒めてもらえると気がついたのでひたすら勉強をしていました。中学受験も大学受験もうまく行きました。その頃は死にたいという気持ちは薄れ、人生も順調に思えました。しかし、大学生活を送るうちに、人が怖くなっていきました。他人のどんな些細な言動も、わたしへの不満のように感じられたのです。それは教授と直接関わる研究室に入ってからどんどん酷くなり、最後にはうつ状態で研究室に行けなくなって辞めてしまいました。同じ時期に下のきょうだいも不登校になりました。それが家庭の問題について考えるきっかけになりました。

何が問題だったのか

 わたしの精神状態に影響を与えているのは、ひとつは父親のモラハラです。これは分かりやすいと思います。パワハラやセクハラもそうですが、ハラスメントによって人格を否定されたように感じて、自己肯定感が下がり、悪いとうつ病など精神疾患を発症します。ハラスメントはされている間気がつきにくいものですが、少しでもおかしいなと思ったら、誰かに相談して必要であればパートナーから離れて欲しいです。どんなことがハラスメントに当たるかはインターネットにたくさんの情報がありますが、「自分はこんなに酷いことをされてはいない」と思ってしまいがちです。自分が傷ついたという気持ちの方が大事です。傷ついた気持ちを信頼できる人や専門家に話してみて、出来るだけ客観的に判断してもらうのも良いと思います。

 父親のモラハラは分かりやすいし、酷いのですが、わたしがより傷ついたのは「母親に見捨てられた」と感じたことです。母親は自分や子どもがモラハラをされても逆らうことも離れることもしませんでした。わたしたちに対しても、父親を怒らせないようにと何度も言っていました。それが一番みんなのためになると思っていたそうです。子どもたちから父親を奪うのは良くないとも思っていたとも言っていました。しかし、その言動によって、わたしは父親だけでなく母親にとっても迷惑でどうでもいい存在なのかもしれないと思うようになりました。それが死にたいという気持ちに追い討ちをかけました。

面前DVについて

 近年は知られるようになりましたが、夫婦喧嘩やDVの場面を子どもに見せることも虐待に当たります。父親からは大声で怒鳴られたり脅されたりといった心理的虐待を受けていたわけですが、面前DVに関しては両親とも虐待していたと言えます。(「虐待」という言葉が重すぎるかもしれないので、「マルトリートメント」という言い方もあります、と付記しておきます)
 母親はDVの被害者ですが、面前DVでは加害者です。これが事態を複雑にし、母親が今後悔することになった最も大きな要因だと思います。もし面前DVが虐待であると知っていれば、早いうちから行政に相談したり、離婚したりといった行動を取ることができたかもしれません。

虐待が子どもに与える影響

 虐待と聞くと、ニュースで見るように子どもに大怪我をさせたり死なせてしまったりというイメージが大きいと思いますが、虐待(マルトリートメント)の影響は大人になってからも続きます。
 ひとつは脳への影響です。子どもの頃に虐待を受けると、そうでない子どもに比べて脳の発達が変化してしまいます。その結果、不安を感じやすくなったり、人の声を聞き取りにくくなったり、精神疾患になりやすくなります。これは暴力だけでなく、怒鳴ることや面前DVでも起こります。
 また、身体的な病気になりやすくなることも指摘されています。心筋梗塞や、免疫系の病気になる確率が虐待経験のない人よりも高いのです。
 幼い頃から辛い環境に耐えてきたのに、大人になってからも様々な病気に苦しむ可能性が高いのはやってられないなと思うし、だからこそわたしと同じ思いをする子どもが減って欲しいです。

周りの大人たち

 わたしの父親が怒りっぽいということは、親戚や友達の親も知っていました。しかし、誰もこの状況がおかしいと指摘したり、母親にアドバイスしたり、わたしたちきょうだいを守ろうとしてくれる人はいませんでした。よその家のことだし、少し変な気がしても、首を突っ込むことは出来ないという気持ちはよく分かります。けれど、誰かひとりでも、これはおかしいと行動してくれていたら変わっていたのかなと思います。それはDVの加害者と戦うなどといった労力のいることでなくとも、例えば子どもに「あなたは悪くないんだよ。こんなことで怒鳴られるなんてあってはならないことだ」と伝えるだけでも十分意味があると思います。実際、わたしは成人するまで父親がおかしいと気がつきませんでした。もし気がついていたら、母親に家を出ていこうと頼めたかもしれません。

最後に

 これはわたしが体験した、ごく個人的な出来事に過ぎません。他にも色々な家庭で育ち、苦しんでいる子どもや大人がいると思います。もし、そんな人が減って欲しいと思ったり、自分の子どもを守りたいと思ってくれた人がいたら、「自分がこんなことをされたらどう感じるだろう」と考えること、そして「虐待/ハラスメントの具体的な例やそれがもたらす悪影響について知る」ということを心のどこかに置いていて欲しいと思います。今は専門家や福祉も増えつつあるので、自分のことや子どものこと、少し心配な他の人のことを相談できることを覚えておいてくれると嬉しいです。

子ども虐待防止 オレンジリボン運動

こども家庭庁HP 相談窓口案内


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