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直観みたいなやつ

 わたしは人に勧められたもの、特に作品をすぐに観たり読んだり聴いたりすることは少ない。以前はそれを良くないことだと思っていた。勧めてくれたひとから悪く思われるかも、ただでさえつい「面白そうですね」とか「観てみる」とか言っちゃうのに、と。

 でも今は、勧められたとしてもすぐに受け入れる必要はないだろうと思っている。
 書いてみて、いやそんなの当たり前じゃないか、と気付いたけれど。

 本題はそこではなくて、何らかの作品とわたしには縁みたいなものがあるんだろうな、と感じる、という話だ。

 例えばエヴァはその存在を昔から知っていたにも関わらず観る機会がなくて、たまたま観た時に一気に引き摺り込まれた。三体もどうしようかなあと思っていた時に友人に勧められて一気読みした。

 その一方で今期もやっている「水星の魔女」は3話くらい観て以来観る気になれないし、スパイファミリーもアニメ化以前におすすめされたのに未だに触れていない。

 それらは面白いとか面白くないとかじゃなくて、いま自分にそれを受け入れるキャパシティがあるかどうか、だと思っている。

 例えば水星の魔女も、観て仕舞えば面白いのは分かっている。たぶん。けれどミオリネが父親に言い返すシーンで「わたしはどうして彼女みたいに父親に反抗出来なかったんだろう」としばらく泣いてしまったので、いまのわたしにはこの作品を観る心の余裕はないのだと思う。
 スパイファミリーはあらすじからして、アーニャの姿が辛くて観ていられないだろうと思って触れないと決めた。いまのところTwitterの反応などを見ていてもそれは正しそうだ。少なくとも完結するまでは読めないし観れない。ネタバレを見てどうするか決めると思う。

 ネタバレを見た、という点では鬼滅の刃も同じだ。鬼滅は読んだよ、と周りの人には言っているのだけれど、最後の2巻くらいは読んでいない。いちばんの理由は最終話のネタバレを見て、読み続けるの無理だと思ったからだ。別に鬼滅の刃のオチが悪いとかではなくて、わたしの心に受け入れるだけの余裕がないだけなのだけれど。


 こうやって理由を書いているけれど、触れないでいるいちばんの理由は「気分が乗らない」からだ。だってエヴァは無理かも……と思いながらも最後まで観てしまって、それで本当に良かったなと思ったから。そして観るタイミングはあの時だったなと確信めいた何かがあるから。

 ここに挙げた作品たちや、まだ積読のなかにいる作品たちや保存してみただけの作品をたちも、いつかは触れる機会があると思う。だって、その存在をまだ覚えているから。本当にどうでもいいなら名前すら思い出せないはずだ。心のどこかに引っ掛かっているからこそ、今はやめておこうという気分になるのだ。


 やめておこう、という気持ちは自分を守る為なのだと気がついた。無理したら調子を崩すし、その作品を嫌いになってしまうかもしれない。せっかくのお気に入りが増えるチャンスを台無しにしてしまうのだ。だから自分の直観を信じる。

 こうやって自分の気持ちを言葉にして確かめてやっと、自分を少し認められる気がする。自分を責める声から自分を守ってやれる気がする。

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