仮面ライダーになりたい

 将来の夢は仮面ライダーだった。幼稚園の時とかではなく、中学生でそう思った。スーツアクターや、造形作家や、監督や、脚本家や、とにかく何でも良いから仮面ライダーに関わりたいと思っていた。

 そんな夢をすっかり忘れていた。僕は毎日のタスクに追われ、過去の亡霊に付き纏われ、疲弊しきっている。満足に身体も動かす、憂鬱に押しつぶされてベッドに横たわり、己の運命を呪っていた。

 仮面ライダーになりたい。それは今も変わらない。けれどその形は変わった。仮面ライダーになるには、己の命を何に懸けるのか、その信念を持っているか、それが必要なのだと思う。必要なのはベルトでも仮面でもない。ジャンプ力やキック力や必殺技でもない。ただ一つ、信念が、人を仮面ライダーにするのだと思う。

 そうは言っても少しも簡単なことじゃない。信念なんて、それどころか目の前の小さな事に悩んで立ち止まっている。一歩先は真っ暗闇だ。どこに向かっているのかも分からない。
 それでも仮面ライダーになりたい。なれるだろうか?ベルトを手に入れるよりも、高く跳ぶよりも、ライダーキックをするよりも、信念を心に宿すこと、それが一番困難なことなのだ。


 僕は何を守りたいのだろうか?僕は何と戦いたいのだろうか?僕は何を勝ち取りたいのだろうか?僕は誰と一緒にいたいのだろうか?

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