レベルの低い国会議員を辞めさせたい
病気でもないのに当選以来一度も登院しない、不祥事を起こしても反省しないなど、国民が辞めさせたい議員がいても、選挙で選ばれた以上簡単に辞めさせることはできません。議員が自発的に辞職願いを出して議院の許可(休会中は議長の許可)を得て辞めることをしなければ、何をしてもクビにはならない。手厚い身分保障が、国会議員には与えられているからです。
ただし、憲法58条2項では「両議院は(中略)院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする」とされています。国会の議決によれば、国会議員を除名すなわち辞めさせることができる訳です。
これを受けて国会法121条1項は、議長は、懲罰事犯があるときは懲罰委員会に審査させ、議院の議決を経て懲罰すると規定。さらに同法122条は懲罰の種類として、
一 公開議場における戒告
二 公開議場における陳謝
三 一定期間の登院停止
四 除名
の4つがあるとしています。戒告、陳謝の懲罰はたまにあり、登院停止もそれなりにありますが、除名は戦後2例しかありません。
衆議院と参議院には「議院規則」という決まりがあり、懲罰についてさらに詳しく定めています。たとえば、衆議院規則には、「議長の制止又は取消の命に従わない者」は懲罰委員会に付すことができる(同規則238条)、「議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者」は除名できる(同規則245条)、などの規定があります。
また、国会法124条は、正当な理由がなく国会に出席しない議員に対しては、議長が招状を発し、7日以内に出席しない者は懲罰委員会に付すとしています。
ガーシー議員の場合は、令和5年1月30日に参議院議長が招状を発しているので、欠席を続けていると懲罰委員会に付されることになります。懲罰委員会は、普段はほとんど注目されないのですが、今回は一から四のどの懲罰を科すことに決めるのか、注目が集まることになります。
懲罰委員会で除名が相当とされ、本会議で出席議員の3分の2が賛成すれば、ガーシー議員は除名されることになります。しかし除名された場合でも、第2位の山本太郎氏が繰り上げ当選になり、NHK党の議席には何の影響もありません。なんとなく釈然としないことではありますが、法律で選挙制度をそのように決めているから仕方ありません。
一方、国民に議員を辞めさせる手立てがないのは罷免制度がないからで、レベルの低い国会議員がいたとしても、次の選挙で落とすしかありません。有権者が国会議員を辞めさせるリコール制は、憲法に罷免権の規定がないので、憲法に反すると言われています。リコール制は、少数政党の議員が多数政党の支持者によって辞めさせられる事態も予想され、少数意見の排除につながる可能性があると指摘されています。