法令遵守でピストバイクも自分仕様に仕上げ、自由に楽しむ!■2023年04月11日更新
広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。
このところ、ピストバイクを欲している『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
ぶっちゃけ欲しい車種は決まっていますが、製造終了しているため新車で手に入りません。
中古での購入も検討したものの、某ブランドから私の理想的なフレームがリリースされるのではないかと期待しつつ、ブランド公式サイトを毎日チェックしています。
自分の新たな愛車を探すこの時間って、何歳になってもワクワクするものです。
■中古で買ったピストバイクをカスタマイズしたい!
ということで、ユーザーさんからご依頼をいただきました。
【CINELLI】(チネリ)
GAZZETTA(ガゼッタ)
全体的に状態の良い個体に巡り合えたようですが、
「せっかくなので状態が良いうちに自分のこだわり仕様に仕上げて乗り出したい。」
とのことです。
通常の点検では見えない部分のチェックも兼ねて、いきなりオーバーホール兼カスタマイズとなります。
新品でも中古でも、自転車を手に入れたら乗り出す前にはプロによる車体の点検は必要です。
中古で手に入れた場合は特に最初にできるだけ分解して細かい部分もチェックしておくことで、後々カスタマイズや修理をする時に役立ちます。
■まずは徹底分解
新車ではないので、どこまでが『ちゃんと使える』状態かがわかりません。
分解していくことでいろいろと見えてきます。
ベアリングは特に早めにチェックしておきたい部分のひとつです。
軽くウエスで拭ってみると、状態もある程度わかります。
これは運良く再利用できる状態かも。
グリスも古くなると劣化しますよね。
シートピンも抜き取って洗浄します。
フォークも無事でした。
再利用できるそうなものは洗浄します。
本格的に洗浄してみた結果、よく見たら再利用できないということもあるので油断はできません。
キレイになって改めて入念にチェック!
ちゃんと再利用できそうです。
シートポストもちゃんと分解できる状態でした。
稀に、フレームとシートポストが固着していることもあり、
そうなるとシートポストは犠牲になります。
分解したらもちろん洗浄します。
シートピン等の錆びやすいパーツは、防錆効果を期待できるオイルでコーティングします。
ヘッドカップを抜き取りました。
ここにはグリスが使われていなかったのか、それともグリスが落ちてしまったのか…。
とりあえず固着していなくて良かったです。
■未来を見据えて入念に下処理
愛車と長く付き合うには日々のメンテナンスが重要なのは言うまでもありません。
しかし、最初の組立の精度でも車体の寿命は大きく異なります。
内部のバリを除去し直したところです。
シートチューブにも下処理をして、シートポストにキズが入りにくいようにします。
これから5年、10年と乗っていくかもしれません。
修理やカスタマイズで後々困らないよう、BBシェルにも下処理をしておきます。
リムフラップに残っていたホイール(リム)のバリ(金属片)です。
リムベッドも手で触ってチェックし、ホイール内部に残留したバリも取り除きます。
ホイール全体もブンブン振ってゴミを取り出す作業はガラガラ抽選会のようです。
リムセンターをチェック。
スポークテンションを保ちつつ、ホイールの振れ取りも済ませます。
タイヤも組み付けました。
固定ギヤが固着しないように、専用のケミカル類を塗布しておきましょう。
まずは一旦締め付けて固定。
それから少し緩めてから改めてすぐに固定し直すことで、よりしっかりと固定ができます。
コグ(リアギヤ)もバッチリ固定できました。
■組み立て本番
大まかな下処理が済んだらいよいよ組立です。
ヘッドカップ装着前にグリスを塗布しています。
これで固着のリスクはかなり減らせるでしょう。
【WAKO'S】(ワコーズ)のバリアスコートで、艶を出します。
汚れ防止にも繋がるのでオススメです。
ベアリング受けとなるヘッドカップには入念にグリスを注入済み。
玉押しとなるクラウンレースにもグリスはたっぷり使います。
フォークとヘッドパーツの作業完了です。
シートポストの固着防止にグリスを塗っておきます。
シートピンもキレイになり、シートポストを装着!
リアホイールを仮止めです。
これはフレームのパイプ内部にサビ止めスプレーを噴射しています。
用途に応じてケミカル類も使い分けます。
BBは今回のクランクセットに付属していました。
【SIXTH COMPONENTS】(シックスコンポーネンツ)のKairos 2pc.Single crank set N/W 42Tです。
チェーンリングの固定ボルトも一旦外し、グリスアップして組み直します。
クランクセット装着完了です。
チェーンリングがナロー・ワイドタイプなのでチェーンがビシッとはまります。
ブレーキレバーのアジャストボルトにも、
ブレーキインナーワイヤーにもグリスアップ!
このハンドルバーはレアものです。
その名はBATBAR(バットバー)。
ハンドル幅が600mmを超えるので、そのままでは自転車に乗って歩道を通行できません。
カットの目印を付けつつ、ブレーキレバーを装着します。
また、前後のブレーキをどちらのレバーで操作するのか、これもユーザーさんの好みに合わせます。
ペダルにも固着防止剤を塗布し、組み付ければ完成です。
■完成
仕上がりました。
ライトとベルはこのように付けています。
BAT Bar(ハンドルバー)のデザインがまたいい感じに合いますね。
ハンドル幅は『普通自転車』の基準に適合するように、カット済みです。
ブレーキは【DIA-COMPE】(ダイアコンペ)のBRS 101を採用しています。
ブレーキキャリパー(本体)の固定方式は沈頭ナットタイプです。
固定ナットの選択をミスって上手く組めないという例も多いので、パーツ選びは慎重に行いましょう。
リアライトも装着し、合法的に堂々と街中を走れます。
バルブキャップはユーザーさんのこだわりカラーのものです。
コラムスペーサーもこだわりカラーでコーディネイト
クランクセットも随分軽くなりました。
ペダルは【MKS】(ミカシマ)のラムダです。
チェーンリングは42T
コグは21T
よって、ギヤ比はジャスト2.0です。
トリックで遊ぶのにも使いやすいでしょう。
ギヤ比はユーザーさん(と車体をどう使うか)次第なので、打ち合わせをしっかり重ねました。
ブレーキインナーケーブルの末端処理は当店独自技術のMEF(マーブルエンドフィニッシュ)で仕上げています。
■ピストバイクも楽しい!
自転車としてシンプルなピストバイクは、自分でイジりやすいのも魅力のひとつと言えるでしょう。
構造が比較的簡単であること、そして部品代も競技用自転車と比較すると安く済むことが理由です。
ただし、気軽にイジれるということは気軽に整備不良を引き起すというリスクもあります。
まずは道路交通法の基準を満たし、安全に乗れる状態にすることが最優先です。
それから長く愛車と付き合うためにも、できるだけ早い段階で長持ちするような下処理を済ませてあげましょう。
自分でいろいろイジるのはそれからでも遅くはありません。
また、『ちゃんとわかっているユーザーさん』は、保安部品さえもセンス良く取り入れています。
どの自転車にも言えることですが、ルールを守って楽しみましょう。
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