【歯を失うこと】老化は悪なのか?
こんにちは。
戸越銀座デンタルケアークリニック 院長の大澤広晃です。
師走を迎えて、戸越銀座商店街も賑やかさを増してきました。
第4回目のnote記事を書いていきたいと思います。
今回は【歯と人生感】をテーマに書いていきたいと思います。
なんでも治療するのが正解ですか?
学校や職場、歯科検診などで「C1」や「C2」という言葉を聞いたことはありませんか?
この「C」は、むし歯を意味する「Caries(カリエス)」の頭文字です。
そして「C」とアルファベットの「O(オー)」、さらに数字の1から4を組み合わせることで、むし歯の進行度を表しています。数字が大きくなるほど、むし歯が進行している状態を示しているのです。
C0やC1は表面のエナメル質に色がついたり(着色)、浅い溝ができたり小さな穴があいた状態のことをいいます。わかりやすいのは奥歯にできる溝です。
こうした着色や溝のある歯はこれまで、経過観察でよいということになっていました。
ところが最近になって、このC0やC1の歯も、とりあえず削って充填しておこうという風潮が見られるようになりました。こうした「治療」を他院で受けた患者さんが、当クリニックに来院されることもあり、それがとても気になります。
なぜかというと歯の表面のエナメル質には、なるべく手を加えない方がいいからです。
本来、歯の表面は天然のエナメル質に守られています。自然のまま何も手を加えないのが、いちばん強いのです。
エナメル質を一度でも削って傷つけてしまうと、その「強度」は元に戻りません。
いくらそこにレジンと呼ばれる歯科材料を充填しても、咬む力によっていずれ外れてしまうのです。
すると「また削り、また埋める」という作業を繰り返すことになります。
溝はどんどん深くなり、「治療」によって歯の硬度も落ちていきます。
昨今は「検査で病気を探す」ことが重視されていて、結果に少しでも問題があれば、手を入れていくという風潮になっています。それもわからないではありません。
でも、まだ虫歯とはいえないC0やC1の歯まで削って充填するというのは、どこか違うのではないかと思うのです。
変色や浅い溝ができたような「虫歯未満」の歯は、定期的にかかりつけ医が見守っていくのが理想です。虫歯の進行するスピードは人によって違いますから「虫歯未満」の歯が、いつ治療の必要な「虫歯」になるのかは分かりません。
かかりつけ医が定期的にチェックしていれば、タイミングを逃さず必要な治療に移ることができます。もし状態が変わらなければ、定期チェックを続けていくのがかかりつけ医の重要な仕事でもあります。
老化は悪いことではない
もうひとつ気になるのは、歯と老化の問題です。
年を取ると目が見えにくくなり、耳が聞こえづらくなるように、歯もぐらぐらします。
そして、いずれどこかのタイミングで抜かなくてはならなくなります。
抜いた後の「処置」については複数の選択肢があるのですが、それについて事前によく知って、どうするか考えておくことが大切です。
見た目を重視すれば「インプラント」をしてキレイに見せることもできます。もちろんデメリットもあり、高額な治療費や手術、定期メンテナンスなどが挙げられます。
他にも、両隣の歯を土台にして人工歯を装着する「ブリッジ」という治療法もあります。
この治療法は、保険適用で経済的な負担を抑えることができますが、土台となる歯が健康であっても、被せるために削らなくてはなりません。
また、入れ歯(義歯)も選択肢の一つです。
口から外して市販の洗浄剤で洗うことができるので「清潔」という点においては最も優れています。
私は定期的に特別養護老人ホームで歯科診療をしているのですが、介護士さんによる身体介護においても、メンテナンスをしやすく清潔が保ちやすいようです。
これがインプラントですと、口を開けて歯磨きをするしかないので、大変な作業ですし、磨き残しがある可能性があります。
最近では新しい技術や素材を使った入れ歯も出てきました。
例えば、金属床入れ歯というものがあり、薄くできるため違和感が少なく、口の中が広く感じられのが特長です。
また「バネ」がないノンクラスプデンチャーと呼ばれる入れ歯も登場してきました。
金属製のバネを樹脂に置き換えることで、装着感がよくなり、入れ歯が目立たなくなる効果もあります。
・インプラント
・ブリッジ
・入れ歯(義歯)
それぞれメリット、デメリットがありますが、自身の歯を抜かなければならないタイミングが訪れたときに、自分で選べるようにしておくといいでしょう。
その際考えていただきたいのが、歯はいずれ老化でなくなっていくものだということです。髪だって白くなるし、抜けていくこともあるんだから、歯も多少抜けていってもいいではないか。
そのような、おおらかな気持ちで受け入れていった方が、生きやすくないでしょうか?
歯は2,3本なら抜けても十分生活していけます。抜けたままにしておくというのもアリだと私は思っています。
何でも「完璧な状態」を目指す風潮があるように感じていますが、それよりも、肩ひじ張らず幸せに生きていくのはいかがでしょうか?
<おまけ4コマ漫画>
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