かかりつけ医とは「町の定食屋」
こんにちは。
戸越銀座デンタルケアークリニック 院長の大澤広晃です。
ようやく秋めいてきました。
第3回目のnote記事を書いていきたいと思います。
日々診療している中で、ふと疑問に感じることがあります。
かかりつけ医とは<町の定食屋>
飲食店では、フレンチのお店はフランス料理しか出しません。
お好み焼き屋さんであれば、お好み焼きのほかに、焼きそばと、せいぜいたこ焼きぐらいでしょう。
それは、どこのお店も自分の店で出す料理の「専門性」にこだわっているからです。
高級な寿司店にいって「焼きそばをくれ」といっても、あきれられるだけです。
専門性についてそんなあたり前のことが、歯科の業界ではちょっとおかしくなっているように感じるのです。
私の歯科クリニックは「戸越銀座商店街」にあり、街中から口腔の悩みを抱えた患者さんが集まってこられます。
そのお悩みは、虫歯や、歯周病、知覚過敏や、入れ歯があわなかったりと、もういろいろです。そのいろいろなお悩みを一手にお引き受けするのが私の役目だと思ってきました。まるでいろんな料理が食べられる「町の定食屋」みたいですよね。
ところが最近になって、周りで同じように「町の定食屋」として口腔のお悩み相談役を引き受けてきた歯科さんが、突然、「インプラント専門」という旗を掲げたり、「歯列矯正専門」の看板を出したりするようになったのです。
そうかと思うと逆にいままで「インプラント専門」「歯列矯正専門」を掲げてきた歯科が一般歯科診療をはじめたりしています。
原因は「歯科の競争激化」です。
歯科の数が増えて「コンビニの数より多い」といわれる状況になって、飲食業界では絶対に起きないようなことが、いま歯科業界では起こっています。
そこに私は大きな疑問を感じるのです。
しかも、自由診療は医療機関側が治療費を設定できるため、同じ治療であっても「地域差」が生じています。
例えばお寿司もそうですが、銀座とそれ以外では大きく価格が異なります。
お寿司の場合は、場の雰囲気やサービスなどの違いから「あえて銀座」を選択していると思いますが、歯科の場合は違います。
患者さんは歯の悩みを解消するために、自宅近くの歯科にいくこともあれば、職場や学校近くの歯科に通うこともあると思います。
それがたまたま「銀座」のような地域のクリニックに行った場合、治療費は高くなります。
こういう状況の中で損をするのは、結局「患者さん」です。
こんなことが起こっているのが現在の歯科業界です。
また、ぜひ多くのみなさんに、こうした歯科業界の現状を知っていただいたうえで、ご自分にあった歯科選びをしていただきたい。そう切に願います。
もちろん当クリニックにいらっしゃる患者さんの中にも、インプラントや歯列矯正を希望される方はおられます。その場合、こうしたことをご理解いただいた上で、信頼できる専門の開業医を紹介しています。
大学病院などは、どの先生が担当するかわからないところがあります。
私が技量を知っている開業医の専門医なら、より安心して患者さんを任せることができます。
かかりつけ医をもつことの重要性
少し前にこんなことがありました。
長い間、私をかかりつけ医として定期的に通院してくださっていた患者さんが遠方に引越しされたときの話です。
引越しにともない、その患者さんは新居の近くの歯科にいったそうです。
そうしたら「7カ所も虫歯がある」といわれたのだそうです。
その患者さんは、あわてて当クリニックに来院されました。
さっそく口の中を見せてもらうと、私が診ていた頃とあまり変化はなく、ほとんどは以前からある着色部分でした。こういう着色部分は、まだ虫歯ではないというのが私の考えです。
これを虫歯と診て治療するという判断もあります。
その部分を削って詰め物をする治療をするのです。
しかし、その治療をしても削りが浅いため、詰め物はすぐにとれてしまうでしょう。そうすると更に削って詰め物をするため、自分の歯がどんどん無くなってしまうのです。
それよりも、なるべく削ったりせずに自然のまま様子を見た方がいい。
それが私のかかりつけ医としての判断でした。
かかりつけ医で「定期健診」することの重要性
定期検診とは、歯科医によるお口の中の「定点観測」です。
6カ月に一度、あるいは一年に一度というスパンでお口の中を見せていただいていれば、深刻な状況になる前に手を打つことができます。
大事なのは「同じ歯科医(=かかりつけ医)」が定点観測することです。
かかりつけ医でないと気付くことができない変化があります。
この記事を読まれた方も、ぜひかかりつけ医をお持ちになり、定期検診をお受けになることをお勧めします。
こうした考えから、当クリニックでは6カ月毎にメールで定期検診のお知らせをしています。
「提示された治療法は一つではない。その時点で既に二つある」
歯科治療というのは、基本的にすぐに「命にかかわるもの」ではありません。
ですから、歯科医から提示された治療を「やらない」というのも一つの選択肢なのです。
治療を提案する歯科医の側は「削るしかない」とか「抜くしかない」とか、限定的な表現をすることがあります。そのように言われると、真面目な人ほど悩んでしまいます。
しかし、常に「やらない」という選択肢があるのです。
「提示された治療法は一つではない。その時点で既に二つある」というのは、そういう意味なのです。
では、歯科医から「この治療しかない」と言われたら、現実的にはどう対応すればいいのでしょうか。そういうときは、まずはこう聞いてみることです。
「その治療をしなかったら、どうなりますか」
それに対して納得できる答えがかえってくればよし、もし納得できなければ、さらに質問を重ねてください。そうすることで歯科医とのコミュニケーションが深まっていきます。
そうすれば、最終的に提案を受け入れた場合でも、より納得した気持ちで治療を受けることができます。
もちろん、こうしたコミュニケーションだけで治療を受けるか判断する必要はありません。今は身の回りに情報は溢れています。
ご自分で情報収集し、自分で判断する。
それが可能な時代がきているのです。
<おまけ四コママンガ>
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