〜大きなパリ〜 欧州旅行記⑤
蚤の市からまた、ノートルダム大聖堂がある駅へと戻り、そのまた近くにポスター専門店があることが分かり向かうことにした。
大聖堂近くに着いた頃には、先程までに感じていた憤りや不安などは幾分和らいだ。歩く人達は上品で、恐ろしさなどは感じなかった。
ポスター専門店に着いた。そこは地下と2階のある比較的大きなお店で、映画のオリジナルのヴィンテージポスターから音楽アーティストのポスター、マティスやピカソ、ウォーホルといった絵の展覧会で売られていたオフィシャルのポスターが揃うとても良いお店であった。
かなりの時間ここでどのポスターがいいかと迷った。お店で飾りたいものなどもあったり好きな映画、ミュージシャン、マティスの絵で迷ったりしていた。
結果的に、一回頭を冷やそうと奥さんと話して近くのカフェで昼食を取った。アルゼンチンビーフのステーキとコーヒーを2人とも食べた。お店の店員さん達はとても優しく、僕らはとても癒された。そしてここのお店はパリに来て1番トイレが綺麗で広かった。やはり良いお店はトイレが綺麗である。
お会計の際に、店員の男からムッシュあなたはコリアンですかと聞かれて、違うよ日本人と答えたら、ソーリーソーリーと言われたのを思い出した。後のことであるがマルセイユに行った際にもうちの奥さんが中国人ですか?と挨拶なしに急に道端で聞かれるなどあったりもした。どちらにせよ、だとしたらなんなのだろうと我々は頭を捻った。
しかしながらこのお店の方々からは大変に親切な感じが伝わったのでとても良かった。
ポスター専門店に戻り、大きな絵を欲しいと思い、大きなマティスの絵と悩んだりしたが、結局、トリュフォーとデューク・エリントンの大きなオリジナルのポスターを買うことになった。
デューク・エリントンに関して言えば値札にディジーガレスピーと書かれていたので、明らかに人を間違えており、これはこのポスターの価値を知らないだろうなと思い格安で買えたというのもあったのである。
物欲を満たし。我々はパリ最後の夜に何をするかと計画を立てた。すぐに決まった。
パリ最古のジャズクラブに行こうとなった。
そこのジャズクラブは21時に開くからそれまでそのジャズクラブ近くのアイリッシュパブでビールを飲んだりして時間を潰した。ドラフトのビールはやはり美味しかった。どんなビールであったかは覚えていないのだが。
時間になりお店に向かったらもう既に10人以上は雨の中並んでいてちょっと慌てた。並んでいる間は我々の期待が高鳴った。無事に入ることが出来て中に入ったが驚いた。店内は洞窟のようになっていて趣味のいいステンドグラスの大きな丸いライトが印象的でそれに平行してバーカウンターが伸びていた。我々は白ワインを2杯頼んだ。先に席を取った方がいいということで私が先に席を取りに向かった。演奏を行うところは地下になっており地下もまた歴史を感じる洞窟のような空間でとても素敵であった。後列の比較的見やすい位置に席を取ることができた。奥さんがワインを持ってきてくれた時にはもう満席であった。人が入るとまたより美しい空間になるなと思った。
本日演奏するメンバーが8人くらいの叔父様バンドで、良い感じに渋いフランス人グループであった。軽いジョークを交えた挨拶を行い演奏を一気に演奏した。
すぐにディキシージャズだと分かり、生でこんな歴史的な空間でこういった歴史的な音楽を聴くのは凄い贅沢だなと思った。若い子も叔父さんのお客さんも皆んな楽しく笑顔になっていった。
そう思った時に、客席と舞台で囲われた中央のとても目立つフロアに2人の老婦人が手を取り合って何やらダンスを始めた。
そのダンスはとても上手で我々お客さんから口笛や拍手などが送られる、10分くらいするとまた別の夫婦が踊り始めた、そう思ったら我々の近くにいた若い人達も徐ろにフロアに行きダンスを始めた。どうやらここはダンスの社交場のようでもあるらしい、そして皆んなとても上手であった。
素敵なダンスはずっと続いた、既に満席であるのにも関わらず先程よりもお客さんが増えて立ち見の人達も増えてきてこの愉快な洞窟の中に人が溢れていた。僕は気分が良くなってお酒をおかわりしに2階に戻ってディプロマティコのラムをオンザロックでもらった。上まで音楽が聴こえててその間も最高の時間であった。
下に戻りまた演奏を聴きながら楽しそうに踊るフランス人達を観ていた。気がついたら踊る人達はどんどんと増えていき、フロアの空間には隙間がなくなっていった程であった。とても音楽とも合っていて見飽きることはなかった。僕らは今映画の世界にいるんだなと錯覚をしていたと思う。そのくらい全てのものが画になっていた。
結果的に我々は2セットまで観て最高の状態でお店を出た、お店のオリジナルのマグカップが可愛いかったのでそれもお土産にした。
我々が観たパリの中で最もエネルギッシュで美しい夜であったことは間違いないだろう。
そして僕らは明日にはもうパリから出てリヨンに向かわねばならないと思ったら少し寂しくなった。
最高の夜をありがとうパリ。
僕と一緒に居てくれてありがとう奥さん。
ここで〜大きなパリ〜を終える。
まだ我々の旅行は続いていく。
次は欧州旅行記⑥〜リオン編〜に続く。