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LanLanRu映画紀行|決算!忠臣蔵

舞台:1701-1702年 /  日本

何をするにもお金が必要と、大人になってお金の大切さを、本当にしみじみと感じる今日この頃だが、かの忠臣蔵の赤穂浪士が討ち入りをするためにも、どうやら予算確保は切実な問題だったらしい。

「決算!忠臣蔵」

2019年公開/中村義洋監督作品
大石内蔵助
が残した決算書「預置候金銀請払帳」を元に、赤穂浪士の吉良邸討ち入りをお金の面から描いた、山本博文氏の『「忠臣蔵」の決算書』を映画化したのが本作ということだ。
「忠臣蔵」といえば、歌舞伎や浄瑠璃にはじまり、これまで幾度も映像化されてきた、かつての日本の冬の風物詩。王道から外伝まで、さまざまな視点で多彩な作品が作られてきているが、「お金」をテーマに描いた忠臣蔵はこれがはじめて。限られた予算の中で仇討を果たそうとする赤穂浪士たちの苦労を描いた時代劇コメディとなっている。

見事仇討ちを果たした 赤穂浪士の忠義の物語 「忠臣蔵」

だが、そもそも「忠臣蔵」とはどういう話なのか。本題に入る前に少し触れておきたい。江戸時代から人気の「忠臣蔵」ではあるが、実はしっかり話の筋を知らないという人も、結構多いのではないかと思う。
時は江戸、元禄時代。赤穂藩の藩主、浅野内匠頭が江戸城内、松の廊下にて刀を抜き、吉良上野介を切りつけたのが事の始まり。本来ならば、「喧嘩両成敗」で両者に非があるはずなのだが、一方の浅野内匠頭だけ江戸城内で刃傷沙汰を起こした罪で、江戸幕府から切腹を命じられて、赤穂藩浅野家は御家取潰しの憂き目にあうことに。
それから1年10か月後、この浅野内匠頭の家臣たち、大石内蔵助ら四十七人が、主君の無念を晴らすため、吉良の屋敷に討ち入って見事仇討ちを果たした。「赤穂事件」という、ほんとにあった大事件である。
忠義を尽くした浅野の家臣たちを江戸中の人々が「義士」と称えるなか、江戸幕府から彼らに切腹が命じられ、元禄16年2月4日、赤穂義士たちはこの世を去った。そして、この「赤穂事件」から、後世まで語り継がれる物語「忠臣蔵」が生まれたのだった。

お金も大事 忠臣蔵

さてさて、御家取潰しなどといったら、現代ならば会社倒産。しかも、松の大廊下の刃傷沙汰で、主君は切腹、藩は解散。こんな中で「仇討ちや!」といくら赤穂浪士たちが意気込もうとも、先立つものはやはりお金…。というのがこの映画「決算!忠臣蔵」だ。

もっとも、大石内蔵助も、はじめから吉良邸に討ち入るつもりはなく、浅野内匠頭の弟の浅野大学を継目に、浅野御家再興の道を探していたらしい。そこで、勘定方が地道な苦労で集めた御家再興予算は、およそ9491万円。
ところが、主君の墓代に、藩士たちの退職金、御家再興の運動費、などなど。……色々なところでお金はかかるもので、はじめは潤沢かと思われた資金も、残金はどんどん減っていく。そんな中で、とうとう御家再興の望みが潰えて、かくなる上はと、討ち入り決行が決まるのだ。

予算の都合もあった 討ち入りプロジェクト!

ところが討ち入りにも、やはり莫大な資金が必要だった。
例えば、江戸までの旅費。赤穂藩は今の兵庫県赤穂市・相生市近辺にあったので、討ち入りメンバーが江戸に行くだけでも、けっこうな旅費がいる。それに江戸に滞在するための家賃に食費。それから吉良の動向も探らないといけないし、討ち入りにはもちろん武器や道具も揃えなければいけない。敵味方の区別のためには揃いの服も必要だ……。
討ち損じては赤穂藩のメンツに関わるので、万全の装備を調えて全力で戦いたい「番方浪士」と、経費削減に頭を悩ませる「勘定方浪士」の葛藤は、コメディの形はとっていても、ある意味とても現実的で、たとえば討ち入り人数が47人だった訳、彼らが12月14日に討ち入った訳など、今まで美談だと思っていたのが、なるほど、予算の都合だったかと、妙に納得したりしたのだった。

さいごに

この映画、従来の「忠臣蔵」からは大きく離れているので、華々しい討ち入りシーンなど期待している人にとっては、物足りないと思うかもしれない。
その代わり、「決算!忠臣蔵」のハイライトは、終盤の討ち入り諸経費の見積もりシーンだ。華々しく討ち入りを、と浪士たちが盛り上がる傍で、勘定方がかかる経費は…と、てんてこまいで算盤をはじくと、キャプションの残額表示がみるみる減っていくのである。そしてあわや赤字かと思いきやー。

なんだか、主君の仇討つ忠義を遂げたというよりも、「討ち入り」というプロジェクトを無事達成できたことに、満足してしまうような「忠臣蔵」なのだった。

■「忠臣蔵」関連作品
忠臣蔵の関連作品などありすぎてとても書き切れるものではない。
だがその中でも代表的な作品といえば、おそらく・・・
「仮名手本忠臣蔵」(歌舞伎・人形浄瑠璃 , 1748年-)
  ※赤穂事件が題材だが、人物や時代背景は室町時代に仮託している。
『赤穂浪士』(大佛次郎 , 1927年)
『四十七人の刺客』(池宮彰一郎 , 1992年)
「元禄太平記」(NHK大河ドラマ , 1975年)

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