【第1節】あきらめない、満足しない、やりきる
あけましておめでとうございます。
J1、J2から遅れること2週間、やっとJ3が開幕した。
昨年の鹿児島ユナイテッドFCは昇格圏と勝点1差の3位だった。
それだけにもやもやしたシーズンオフを過ごすかと思ったのだけれど、主力のほとんどが残留してくれて、逆に新シーズンへの期待は高まっていた。
補強もうまくいった印象で、早くこのチームの試合が観たいと思いながら、冬を過ごしていた。
ようやく春の兆しを感じられるようになってきた3月4日、ホームである白波スタジアムで開幕戦を迎えた。
初戦はどうしても固くなりがちだから、とにかく勝てれば内容はどうでもいいとすら思っていた。
それなのに、5,999人が詰めかけたスタジアムで待っていたのはあまりに劇的な結末だった。
あと少し
スタジアムに着いたのはキックオフの2時間ちょっと前。
バックスタンド側から入場口へ向かうと敷地ぎりぎりぐらいまで待機列最後尾を示すコーンが立っていた。
多くの人が新シーズンに期待してるんだと思うと、自然と足が速くなった。
バックスタンドに上るといつものように中央の辺りの席を確保して、いったんスタジアムを出る。
これまたこれまでと同じようにぐるっとスタジアムの外周を回って向かう先はスタグルの出店が並ぶユナマルシェ。
この日、選んだのはたこ焼き風さつまあげと(写真はないけど)ブラジルの揚げ餃子・パステウ。
新シーズンだからというわけではないのだけれど、初めてのメニューにした。
たこ焼き風さつまあげは、たこ焼きとさつまあげのいいとこどりの絶品だった。猫舌なのであつあつのたこ焼きは苦手なんだけど、これなら熱くてもおいしく食べられた。
スタグルを食べていると、決起集会のサポーターたちの声が聞こえてきた。
Jリーグのコロナガイドラインが変わったからなんだろう。
コロナ前は当たり前だった光景がまた一つ戻ってきた。
バックスタンドに戻って、試合が始まってからも、懐かしい光景があった。
昨シーズンの途中から再開された声出し応援は限られたエリアでしかできなかった。
それが今シーズンはどの席でもできるようになった。
コロナ前によく聞いていた「鹿児島、がんばれ」の声が響いていた。
マスクの着用はまだ必要だけれど、その制限がなくなるまであともう少し。
ゴールが決まって瞬間に思わず声を出してしまうことを、後ろめたく思っていたころが思い出になるのにそれほど時間はかからないだろう。
ふわふわ
開幕戦独特の空気もあって、試合が始まるまでどこかふわふわした気分だった。
普段はスタメンが発表されたら、試合の展開を予想したりするのだけれど、なにも思い浮かばなかった。
試合前の練習もぼんやりと見ていた気がする。
試合のキックオフを告げるホイッスルもそんな気分で聞いた。
声出し応援が全席で解禁された影響でホイッスルの音も昨年より聞こえにくかった気がするけれど、それは自分の気分のせいなのかよくわからない。
だからだと思う。
開始2分で鹿児島ユナイテッドが失点したときも、なにがなんだかよくわからなかった。
ただ、そのときは大丈夫なんじゃないかと思った。
ボールが転がった先が悪かった事故みたいな失点だったし、ボールを握っている時間はユナイテッドのほうが長い。
すぐに追いつけるはずだと信じていた。
ただ、そうはならなかった。
リードを許したまま前半が終わり、後半も時間だけが過ぎていく。
攻撃的な選手を次々と投入するけれど、ゴールネットは揺れない。
時計の針が後半40分を過ぎたころには、なんとか引き分けにして勝点1だけでも取ってほしいと思うようになっていた。
気持ちはつながる
勝利を半分以上、あきらめながら試合の流れを追っていたのだけれど、間違いだった。
ピッチ上の選手たちはみじんもそんな気持ちを持っていなかった。
それがはっきり見て取れたのは後半44分。
途中出場の五領選手のコーナーキックはきれいな弧を描いて、中央に入り込んできたキャプテンの広瀬選手の頭に合った。
ボールがゴールに転がっても選手たちは喜ばない。
すぐにボールを回収するとポジションへと戻る。
その光景を見て、デジャブだと思った。
昨年の最終戦。昇格するには十数ある得失点差を覆さないといけない状況だった。
先制したのは前半15分と早い時間だったのに、すぐにボールを拾って試合再開にそなえていた。
奇しくも得点の形は今節と同じ、五領選手のコーナーキックから広瀬選手のヘディングだった。
あのとき足りなかった勝点1を拾うように、今年の鹿児島ユナイテッドはたたみかけた。
シーズンが変わっても、気持ちはつながっていた。
逆転ゴールはアディショナルタイムに入った後半46分だった。
薩川選手の左足から生まれた。
後半アディショナルタイムにサイドバックの選手がゴール前まで入ってきて、腰を回し切ってシュートを放つというのはすごいとしかいいようがない。
今年のチームは始動時から走ることをテーマにしているとは聞いていたから体力面は相当強化されているのだと思う。
ただ、やっぱり精神面のタフさがあのシュートにつながったはず。
負けていてもあきらめずに、同点にしても満足せずに、勝つためにやりきる。
言葉にするのは簡単だけれど、実際にやってみせるのは難しい。
それを目の当たりにできて、幸せだった。
異動やらなんやらがあって3月はどうしてもやることが多い。
その分、仕事で妥協してしまったり流してしまったりしがちだけれど、あきらめない、満足しない、やりきる、を大事に、乗り切っていこう。
それに週末にサッカーが見られると思うだけでがんばれる気がする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?