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豚モツ業者が検証する『ベトナム人の豚盗難事件』 その8 シロモノの処理
豚の内臓は処理をするときに、主にアカモノとシロモノとに分けることを書いた。
そして、アカモノの部位ごとの分け方も書いた。
今回は、シロモノの方。
アカモノと同じ程度の目方と嵩だが、処理はアカモノの比ではない時間と手間を食う。
シロモノは、上部から、まずガツ(胃)があって、小腸があり、そして大腸、テッポウ(直腸)の順になる。
処理に時間がかかるのは、アカモノとちがって内容物が入っているからだ。そしてまた、アカモノよりも汚れやすいということもある。そしてまた、目立つ。赤や黒の車よりも白い車の方が汚れが目立つのと同じことだ。
内容物とは、豚の食べたものということ。それが腹の中に残っているのだ。
ちなみに、屠畜する豚は前日から餌を与えないで腹を空っぽにする。それでも多少は残るが、大量に詰まっているわけではない。ベトナム人豚泥棒たちは、屠畜予定で断食させた豚をつぶしたわけではないので大量の内容物に悩まされたことだろう。実際、内臓処理で出るにおいの元も内容物からくる。
屠場では、上から流されたシロモノ一式は、ガツ(胃)、小腸、大腸と切り離す。テッポウはまだ大腸に付けたままだ。そしてそれぞれの係の元へと振り分けられる。
ガツの係は、大きなバケツの上で切り裂いて中の内容物をそこに落とし込む。そしてガツ本体は水を張った流しに放り込む。それを繰り返し、ある程度流しにたまったら、その中でひっくり返して洗う。粘膜が付いているので、モップを絞るように、左手で作った輪っかに通すように右手で引いていく。
小腸と大腸は機械で裂いていくのだが、豚泥棒たちは手作業でやるしかない。おそらく前回アカモノの記事で説明した玉付きナイフくらい用意していたのだろうと思う。そのナイフを使って、裂いていくのだ。小腸も大腸も筒状になっているので、ナイフの玉の部分を突っ込み、ナイフを持っていない方の手で手前に引っ張って裂いていく。もちろん内容物があるので、下に落ちて汚れても大丈夫な場所で行わなけばならない。
大腸は特に内容物が詰まっているので、汚れがひどい。すでに小腸で水分を抜かれて消化され、軟便のような状態になっている。また大腸は厚みがあって襞状になっているので、ナイフが引っかかって裂きにくい。
テッポウ(直腸)は高価なので、できるだけ長くとる。
これで、とりあえず、内臓をそれぞれ部位ごとに分けるまでは進めた。
しかし、単に分けただけでは売れない。もちろん泥棒の売り物なので、キチンと商品化しているとは思えないが、さすがにバラしたまんまでは無理だ。最低限の手は掛けなければならない。次回は各部位の商品化を書いていこうと思う。
(つづく)
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