マイルス7枚目「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1」と「ジャズ」
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[Miles Davis Vol.1]「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1」
【録音】1952-05-09, 1953-04-20
【リリース】1955
初期のマイルスはプレスティッジというレーベルから作品を出すことが多かったのですが、この作品はジャズの名門であるブルーノートからのリリースになっています。
マイルスは1952年から1954年の間に年一回のペースでブルーノートでの録音を行っていますが、Vol.1の本作にはその中から1952年と1953年の音源のいくつかが収められています。1952年の彼の公式な形での録音はこのブルーノートに残したもののみとなっています。
この録音の場を設けたのはブルーノート創始者のアルフレッド・ライオンで、彼はマイルスの才能を高く評価していて、当時薬物中毒だったマイルスを救済する目的もあったと言われています。
なお、本作は名盤が多いと言われるブルーノート1500番台の最初の作品でもあるんだとか。
この時期のマイルスは低迷期と言われることもありますが、特に演奏が悪いというわけでもなく、むしろ作品としては質の高いものになっているという印象です。
メロディアスな曲が多く聴いていて心地よい作品で、バド・パウエル作曲の"Tempus Fugit"が個人的なお気に入りです。
気軽に聴ける作品という印象で、こういうものもまた音楽という分野の中の魅力の一つかなと思います。こういう聴き疲れしない音楽というのも貴重なものなのではないでしょうか。
マイルスの音楽にはジャズにとどまらないものも多くありますが、本作およびVol.2は「ジャズ」としてクオリティの高い作品になっていると思います。そういう意味では、マイルスの中でも分かりやすい作品だと感じました。
実はマイルスは自分の音楽を「ジャズ」と呼ばれるのを嫌ったと言われています。
しかし個人的には、それはある意味で一筋縄ではいかないマイルス流のケレン味ある「演出」なのかもしれないと思います。
マイルスは発する言葉にも鋭いものがあり、「あえてそういうことを言う」ことによって、人の心をざわざわさせることに長けていると感じます。そして、それによって彼のイメージを作り上げていった面もあります。なので、マイルスが心から「ジャズ」という言葉を嫌ったかどうかまでは分かりません。
マイルスの音楽の重要な要素にジャズが含まれるのは間違いないし、少なくともここでの彼の音楽はその魅力を体現していると思います。
そういう意味で本作は、あえてマイルスの意向に反して「ジャズ」とカテゴライズすることによって魅力や分かりやすさが伝わる一枚だと思います。