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マイルス3枚目「パリ・フェスティヴァル・インターナショナル」と青春

[In Paris Festival International de Jazz May, 1949]「パリ・フェスティヴァル・インターナショナル」
【録音】1949-05-08~1949-05-15
【リリース】1977

マイルスがタッド・ダメロンらと共にパリの国際ジャズフェスティバルに参加し、初めて海外公演を行った時の録音です。音質は良くないので万人におすすめできるかと言えば微妙なところですが、マイルスにとっては重要な音源だと思います。

「クールの誕生」と近い時期ではあるのですが、本作のサウンドはそれとは異質なもので、これは従来のビバップのスタイルに近いのではという気がします。

とはいえマイルスのプレーに限って言えば"Don't Blame Me"などのバラードでは後のスタイルに繋がるような間を活かした演奏を聴くことができますし、進化しつつあるようにも聴こえます。

当時、パリではジャズの評価が高くマイルスは大歓迎されました。そして、そういった熱い観客を前にして、彼の方も自信に満ちた活気ある演奏を披露しています。

マイルスはこのパリ滞在中にピカソやサルトルと交流したり、歌手のジュリエット・グレコと恋仲になったりといった重要な経験をするのですが、作品の方もそういった彼にとっての素晴らしい瞬間が収められていると感じられるものになっています。

問題なのはやはり音質の悪さですが、それさえ許容できればフェスティバルという場の高揚感もあって楽しめる内容となっています。本作は1940年代のマイルスのライブを知ることができるものとして貴重な音源ですが、歴史的価値だけでなく音楽的にもなかなか良い部分を持った作品だと思います。

マイルスはその後帰国しますが、パリとは違ったアメリカでの評価の低さに失望したことも一因となり、薬物中毒に突き進んでいくことになります。

個人的にはマイルスのキャリアを眺めた時に、このパリは彼にとって少し遅めの「青春」の時期に位置するのではという気がします。

青春とは多くの刺激を吸収する素晴らしい時期ですが、良いことだけではなくて痛みも伴うものだと思います。そして、自分はこの薬物中毒への転落にマイルスの「痛み」を感じます。そこからは自己評価と現実のギャップに悩み傷つく彼のナイーブな一面が見えます。

青春の光と影という言葉もありますが、光が強いほど影も濃く、逆もまた同じなのではないかと思います。マイルスのストーリーを考えると、その後に訪れる青春の影の部分があるからこそ、この作品に収められた光の部分は儚くも輝いて見えるのだと思います。

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