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マイルス2枚目「クールの誕生」と意志の力

[Birth Of The Cool]「クールの誕生」
【録音】1949-01-21, 1949-04-22, 1950-03-09
【リリース】1957

1948年~1950年頃のマイルスはホルンやチューバなどのジャズでは珍しい楽器も用いたノネット(九重奏団)を率いて今までのビバップとは異なったアンサンブルを重視した音楽を作り始めていました。本作はそのノネットのスタジオ録音が収録されたものになります。

作品のタイトルはSPで発売されていたものがまとめられてLP化されるときに付けられたものだといいます。リリース年の1957年というのは今の作品の形になってからのものということになります。

この作品のアレンジ担当の一人に後に長きにわたりマイルスの盟友となるギル・エヴァンスがいました。また、発売当時の売り上げは良くはなかったという話です。

マイルスがビバップから離れ自分の音楽を表現し始めた第一歩として重要な作品である一方で、マイルスのノネットおよびその作品は音楽としての平板さ・退屈さが指摘されることもあり、評論家の中でも賛否両論があって評価しないという声も聞きます。

しかし、自分はこの作品に関してはそのように思われかねない要素も含めてマイルスやアレンジャー陣の「狙い」だったのではないかと考えます。

この作品が持つ一聴しての波の少なさは聴き心地の良さにも繋がっていて、その魅力と表裏一体の関係にあるとも言えると思います。つまり、良くない部分として指摘されるこの作品の特性が、その反面では優れている点でもあるということが言えるのではないでしょうか。

では聴き心地が良いだけの音楽なのかと言えば、決してそうではなく、確かに派手さはありませんが演奏内容は新鮮だと感じられます。

なんとなくふんわりした作品になってしまったのではなく、そこにはこういうものを作ろうという明確な意志の力みたいなものを感じますし、それが本作を芯のあるものにしています。

本作の成り立ちについては説明すると長くなるのですが、ざっくり言うとこの作品は新しい発想による音楽の革命を目指す若者たちが集ってたどり着いたカウンターとしての音楽だったという側面があります。

そのように成り立った音楽の中身がこういった穏やかなものだというギャップはとても面白いものに感じますし、何より「かっこいい」と思います。

全体的にソフトでエレガントな感触があり、音楽の質もなかなか高いのではないかと感じます。個人的には少し評価を見直してもいい作品なのではないかと思いました。

また、本作にはコンプリート盤もあり、それにはニューヨークのロイヤル・ルーストでのノネットのライブが収録されています。

ノネットの結成は1948年で、その時に第二次レコーディング・ストライキがあったため、スタジオレコーディングは1949年~1950年に行われました。そのためこのライブの方が時系列的に先になっています。音質は良くはないですが、貴重な音源だと思います。


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