【文章】秋桜
「秋桜を見にいこう」
「え?なに?」
「『あきざくら』を見に行こう」
「あぁ、コスモスのこと?」
「ちがうよ、秋に咲く桜だよ」
「秋に桜なんてないよ」
「あるよ。疑うなら見に行こうよ。あの、図書館の裏の庭に咲いてるんだよ」
と君が言うので、僕たちは図書館の裏庭を見に行く。その庭は紅葉まっさかり。庭のはじのほうに、確かに桜のようなものが咲いている。
「これだよ、秋桜。秋に咲く桜」
「本当だ、秋桜だ」
この紅葉の時期に、どのくらいの人がこの桜の存在に気づくのだろう。どうして君は、こういう妙なものを見つけるのが好きなのだろう。
好きな音楽も、映画も、居酒屋も、君が好むのはそういうものばかり。
「やっぱり、君の目は少し変わってるね。多くの人が見えてないものを見つけるのが得意じゃないか」
と僕が言うと
「そうかな?」
と、君はきょとんとした目で言う。
でも、ぼくは君の目に感謝している。多くの人が気にもとめない僕を見つけてくれたのだから。
シロクマ文芸部のお題に挑戦してみました。
よろしくお願いします!