【ニューロダイバーシティ】発達障害の雇用推進とスティグマの取り組み


 今年3月に経済産業省が、障害者雇用で収益を上げている企業に関する調査レポートを公開しました。
【レポートタイトル】イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査: 調査結果レポートhttps://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversityreport2021.pdf
 
レポートは64ページに及び、企業向けに書かれています。そこでNPO MindRecoveryは、A4版1ページの概要を、一般向けに作成して公開しています。ここでは、レポートのあらすじと私の意見・感想を述べます。
 
【レポートのあらすじ】
  IT分野で人材不足は喫緊の課題である。海外で生まれた概念「ニューロダイバーシティ」を、日本企業に導入し、未開拓の「ニューロダイバースな人材」を雇用していく取り組みが必要である。
  ニューロダイバーシティは、発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害、など)の特性を、先天的な脳神経の正常な変異、と捉える概念である。「ニューロダイバースな人材」は、「脳神経の正常な変異」により、生まれつき高い能力を備えた発達障害者である。「ニューロダイバースな人材」は数理的思考と高い精度の技術力を備え、デジタル分野のスペシャリストの適性があるといわれており、海外の企業で採用に成功している事例が増えている。
 近年、発達障害と診断される人が増えている。潜在的な高い能力を備えた発達障害者を、デジタル分野のスペシャリストとして、一般社員と同等の条件で、一般業務で雇用する取り組みが必要である。

【意見】
・高い能力が際立つ発達障害の人はいます。しかし、全員ではありません。 

・デジタルは不得意で、農業・手工業などで高い精度の仕事をする発達障害の人たちがいます。

・発達障害の診断がつく人が増えているからといって、「ニューロダイバースな人材」が日本で増えているわけではありません。成人してから診断がつく場合、発達障害と精神疾患の弁別が難しく、診断名が変わることはよくあります。
 
【感想】
  レポートでは、採用条件に「障害受容」と「勤怠自己管理」をあげています。
  発達障害の人たちに関わってきた私の経験の範囲では、「高い能力を備え、かつ障害受容と勤怠自己管理ができる人」は、ごくわずかです。高い能力を備えながら、就労前に二次障害(精神疾患)を患い、「障害受容」と「勤怠自己管理」のできない人を多く見受けます。
  二次障害を引き起こす大きな要因は、日本社会の障害に対するスティグマ(偏見、差別)である、と私は考えています。

  レポートの視点は、経済政策の柱であるIT分野での人材補給にあります。これまで活用されなかった人材を活用していく取り組みは評価できます。
  私は、活用に成功する最も重要なカギは、スティグマ(偏見、差別)の低減だと考えています。活用に成功している海外企業は、スティグマ低減のために、職場で受け入れチームをつくり、社内教育と研修を積み上げています。さらに、成功している企業を抱える各国は、スティグマ低減のキャンペーンや教育に長年取り組んでいます。

経済産業省は、個々の企業に「スティグマ低減の取り組み」を求めるだけでなく、自ら「スティグマ低減の取り組み」を他の省庁と連携して強く進めていくべきでしょう。

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