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145.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第23節「国民的ブームを呼んだ1980年代東映動画作品①」

 1974年8月東映社長岡田茂の幼なじみで厚い信頼を持つ今田智憲(ちあき)が東映動画代表取締役社長に就任します。
 東映の営業畑で実績を積んできた今田は一時東映を離れていましたが、岡田から呼び戻され東盛商事(現東映ビデオ)社長に就いていました。
 今田
版権事業を始めとする営業の強化をはかることで経営の安定を導くとともに、1970年代後半から様々な国民的ブームを作り出します。

1977年8月発行 社内報『とうえい』第200号
1977年8月発行 社内報『とうえい』第200号

 ただ、ブームは一時的なものであり新たなブームを生み出すため、今田は、若手の起用を図り新しい企画に取り組みました。
 今節では、1980年代国民的ブームを呼び、今もリメイクや話題に上る東映動画作品を紹介いたします。

1.集英社『週刊少年ジャンプ』作品

①フジテレビ系水曜19時『Dr.スランプ アラレちゃん』(1981/4/8~1986/2/19 243話+スペシャル2話)

 1980年2月集英社週刊少年ジャンプ5・6合併号から連載が始まった鳥山明作のギャグマンガ『Dr.スランプ』は、斬新なデザイン、かわいいキャラクター、秀逸なギャグセンスで青少年の人気を集めていました。
 企画部に配属された若手高橋尚子がこの作品のアニメ化を提案し、今田は企画を進めるべく指示します。
 東映テレビ部から異動して来た七條敬三が企画を担当し、フジテレビ旭通信社(現ADKホールディングス)とともに集英社の説得にあたり、何とか許諾を受けることができました。
 そして、1981年4月から水曜19時枠にて『Dr.スランプ アラレちゃん』というタイトルで放映が始まります。

『Dr.スランプ アラレちゃん』
©鳥山明/集英社・東映アニメーション

 『Dr.スランプ アラレちゃん』は平均視聴率22.7%、最高視聴率36.9%を記録、キャラクター商品も爆発的に売れ大ヒットしました。
 菊池俊輔作曲の主題歌『ワイワイワールド』もオリコンTVマンガ・童謡部門年間1位を記録するなど大人気となります。

 テレビ放送243話+スペシャル2話全245話4年11か月続きました。

 「東映まんがまつり」では、
1) 1981年7月18日公開 『Dr.スランプ アラレちゃん ハロー!不思議島岡崎稔監督(25分・井上敏樹脚本デビュー作
2) 1982年7月10日公開『Dr.SLUMP ほよよ! 宇宙大冒険永丘昭典監督(90分)
3) 1983年3月13日公開『Dr.スランプ アラレちゃん ほよよ!世界一周大レース岡崎稔監督(52分)
4) 1984年12月22日公開『Dr.スランプ アラレちゃん ほよよ!ナナバ城の秘宝芝田浩樹(48分)
5) 1985年7月13日公開『Dr.スランプ アラレちゃん ほよよ!夢の都メカポリス竹之内和久芦田豊雄監督(38分)
と5作品公開されます。

テレビ放映終了後も1993年東映アニメフェア」で
6) 1993年3月6日公開『Dr.スランプ アラレちゃん んちゃ!ペンギン村はハレのち晴れ貝澤幸男監督(40分)
7) 1993年7月10日公開『Dr.スランプ アラレちゃん んちゃ!ペンギン村より愛をこめて橋本光夫監督(32分)
8) 1994年3月12日公開『Dr.スランプ アラレちゃん ほよよ!!助けたサメに連れられて…橋本光夫監督(25分)
9) 1994年7月9日公開Dr.スランプ アラレちゃん んちゃ!!わくわくハートの夏休み橋本光夫監督(20分)
4作続いた人気作品でした。

 1997年11月からは作者の鳥山明が原作、監修とキャラクター原案を担当、キャスト及びスタッフも一新した『ドクタースランプ』(1997/11/26~1999/9/22 75話+スペシャル1話)が、同じくフジテレビ系水曜19時にて始まります。
 放映に合わせ、集英社の月刊誌『Vジャンプ』では1997年12月号から2000年7月号まで連載されました。
 放映途中の1998年10月東映動画東映アニメーションに商号変更します。

東映アニメフェア」では
10) 1999年3月6日公開『ドクタースランプ アラレのびっくりバーン山内重保監督(50分)
が上映されました。

②日本テレビ系日曜10時『キン肉マン』(1983/4/3~1986/10/1 137話+スペシャル1話)

 1979年5月集英社週刊少年ジャンプ第22号から連載を開始したゆでたまご作『キン肉マン』は、当初は下ネタやベタなギャグが満載のマンガでしたが、プロレスファンのゆでたまごが当時ブームのプロレスの戦いを取り入れたことで、小学生の子供たちの人気を集めていました。
 東映渡辺亮徳は、かつてプロレスアニメ『タイガーマスク』で一緒に仕事をした日本テレビに提案し、バンダイをスポンサーに日本テレビ系読売広告社東映製作アニメ『キン肉マン』の放映が決まります。

『キン肉マン』
©ゆでたまご・東映アニメーション

 アニメは東映動画が制作し、プロデューサーは 田宮武(東映動画)、武井英彦(日本テレビ)、木村京太郎(読売広告社)が担当し、シリーズディレクターには山吉康夫川田武範今沢哲男の3人を起用、神谷明がキン肉マンの声を務めました。
 1983年4月より日本テレビ系日曜朝10時枠にて放映が始まります。
 当初、朝の時間帯としてはまずまずの視聴率でしたが、8月にバンダイからゴム人形型消しゴム(通称キン消し)が発売されると、子供たちの間で大ブームとなり、みるみる視聴率が上昇、集英社のコミックも爆発的に売れました。

 串田アキラが歌うオープニング主題歌「キン肉マンGo Fight!」(作詞 - 森雪之丞 / 作曲 - 芹澤廣明 / 編曲 - 川上了)も大ヒットします。
 人気が沸騰したこともあり、第125話からは火曜19時枠に時間帯が移動し、3年6か月137話+スペシャル1話全138話続く人気番組となりました。

 「東映まんがまつり」では、
1) 1984年7月14日公開『キン肉マン 奪われたチャンピオンベルト白土武監督(48分)
2) 1984年12月22日公開『キン肉マン 大暴れ!正義超人白土武監督(48分)
3) 1985年3月15日公開『キン肉マン 正義超人vs古代超人山吉康夫監督(45分)
4) 1985年7月13日公開『キン肉マン 逆襲!宇宙かくれ超人山吉康夫監督(39分)
5) 1985年12月21日公開『キン肉マン 晴れ姿!正義超人川田武範監督(60分)
6) 1986年3月15日公開『キン肉マン ニューヨーク危機一髪!川田武範監督(45分)
7) 1986年12月20日公開『キン肉マン 正義超人vs戦士超人山吉康夫監督(51分)
と7作公開され、配給収入で10億円を超える大ヒットもありました。

 1988年1月日本テレビ系日曜10時30分枠にて『キン肉マン』のスピンオフアニメ『闘将!!拉麵男』(たたかえ!!ラーメンマン1988/1/10~9/11 全35話)の放映が開始します。
 1988年7月9日公開「東映まんがまつり」で明比正行監督による劇場版が公開されました。

 1991年10月には、再び日本テレビ系日曜朝10時30分枠にて読売広告社東映製作『キン肉マン キン肉星王位争奪編』(1991/10/6~1992/9/27 全46話)がスタートします。 
 当時『週刊少年ジャンプ』でのマンガ連載はありませんでしたが、これまでに描かれていた原作をアニメ化し、プロレスの進化に伴い、打撃技や関節技などリアルな表現が取り入れられました。
 第23話からは日曜11時に時間帯が移り、1年間全46話続きます。

 今シリーズでは映画化はありませんでした。

 『キン肉マン』は2024年7月から東映アニメーションも参加のキン肉マン製作委員会の製作、Production I.G制作でTBS系日曜23時30分にて放映開始しています。

③フジテレビ系木曜19時『北斗の拳』(1984/10/11~1987/3/5 全109話・総集編7話含む)『北斗の拳2』(1987/3/12~1988/2/18 全43話)

 1983年9月、漫画家の原哲夫と漫画原作者武論尊集英社週刊少年ジャンプ第41号から連載を開始した「北斗の拳」は、核戦争後の世紀末を舞台に、北斗神拳の伝承者ケンシロウの闘いを描き、その過激な表現とストーリーが若者の人気を集めました。

 過激な暴力描写や残虐シーンのため、テレビでは放映が難しいと考えられていましたが、アニメ化を目指した東映動画は、高見義雄がプロデューサーとなり表現方法を工夫、極端な誇張などでリアリティを消すことによってフジテレビゴールデンタイムでの放映にこぎつけます。

『北斗の拳』
©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983,東映アニメーション 1987

 1984年10月木曜19時からアニメ『北斗の拳』がはじまると表現に対するクレームもなく大ヒットしました。

 シリーズディレクターは芦田豊雄ケンシロウの声はキン肉マン神谷明が担当し、倒された相手が叫ぶ「ひでぶ」「あべし」などの悲鳴や、ケンシロウのセリフ「お前はもう死んでいる」が大流行。
 クリスタルキングが歌うオープニング主題歌「愛をとりもどせ‼」(作詞中村公晴・作曲山下三智夫・編曲山下三智夫飛沢宏元) の「youはshock」という雄叫びは多くの人々の記憶に刻まれました。

 1986年3月8日には劇場版『北斗の拳』(芦田豊雄監督)が『ジャッキー・チェンの醒拳』と併せて公開され、配給収入9億円とヒットします。

1986年『北斗の拳』
©武論尊・原哲夫/NSP・東映アニメーション 1986

 1987年3月からはタイトルを『北斗の拳2』として翌年2月まで全43話放映され、前作と合わせ3年5か月全152話、テレビ史に残る作品となりました。

 『北斗の拳2』終了後、フジテレビ系木曜19時枠では『週刊少年ジャンプ』連載中の宮下あきら原作『魁!!男塾』(1988/2/25~11/14 全34話)が東映動画制作で続きます。

『魁!!男塾』
©宮下あきら/集英社・東映アニメーション

 1995年4月22日東映ビデオ東北新社共同製作の実写映画「Vアメリカ」として『北斗の拳』が公開されました。

『北斗の拳』
©武論尊・原哲夫/コアミックス ©東映ビデオ/東北新社

 日本語版ではケンシロウの声を神谷明が担当しています。

 その後「北斗の拳」のアニメ化作品は、2003年から翌2004年にかけて オービー企画新・北斗の拳製作委員会製作のOVA『新・北斗の拳』(全3巻)がリリースされ、レンタル専用ソフトは東映ビデオが扱いました。
 また、2006年から2008年にかけてノース・スターズ・ピクチャーズトムス・エンタテインメントが『真救世主伝説 北斗の拳』(全5作)を製作、東宝が映画配給及びOVA販売を手掛けています。

トップ写真:東映ビデオ「キン肉マン一挙見Blu-ray キン肉マン初の世界制覇&ツアー編」©ゆでたまご・東映アニメーション