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148.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第24節「朝日放送ニチアサアニメのはじまりと東映動画TVオリジナル作品」

 『Dr.スランプ アラレちゃん』の放映が始まった1981年4月東映動画(現東映アニメーション)は演出家志望者8名、アニメーター志望者8名、計16名新人研修者を採用しました。
 以降、契約者やアルバイトなどの採用も増やし、これまで合理化で縮小していた人員が拡大。ベテランが多い現場に若手スタッフが入ることで新たな活気が生まれてきます。
 また、彼らはベテランとの仕事を通じ様々な技術を学び、みるみる成長して行きました。
 3年後の1984年3月、大阪の朝日放送ABC)との初アニメ作品とんがり帽子のメモル』の放映が始まります。

1984年3月発行 社内報『とうえい』第284号

①朝日放送・テレビ朝日系土曜19時『とんがり帽子のメモル』(1984/3/3~9/22 28話)・日曜8時30分(10/7~1985/3/3 22話 全50話)

 この作品は東映動画による社内オリジナル原作の女児向けファンタジーアニメで、鍋島進二ABC)、荻野宏旭通信社・現ADKエモーションズ)、籏野義文東映動画)がプロデューサーを担当しました。

『とんがり帽子のメモル』
©東映アニメーション

 メインスタッフには、シリーズ構成脚本家の雪室俊一、キャラクター原案名倉靖博、キャラクターデザイン鈴木欽一郎、美術デザイナー土田勇、音楽青木望、シリーズディレクターは葛西治を起用し制作を行います。
 そしてこのシリーズの中で、研修者の佐藤順一貝沢幸男が演出助手、鈴木郁乃が小道具デザインを担当し活躍しました。

 オープニングテーマ「とんがり帽子のメモル」はTARAKOが作詞、作曲古田喜昭、エンディングテーマ「優しい友達」は作詞佐藤ありす、作曲小林亜星、両主題歌とも編曲青木望山野さと子がかわいらしく歌っています。 

 このシリーズは秋から時間帯が日曜8時30分に移動しました。

 1985年3月16日公開の「東映まんがまつり」では、研修生の佐藤順一が監督し、第24話、25話を再編集した劇場版『とんがり帽子のメモル』が上映されます。

1985年3月 「東映まんがまつり」『とんがり帽子のメモル』雪室俊一脚本・佐藤順一監督
©東映アニメーション

 1985年7月には、テレビアニメを再編集した総集編と新作短編『土田勇のマイメモル 光と風の詩』(演出・美術監督土田勇・作画監督名倉靖博)を収録したOVAとんがり帽子のメモル マリエルの宝石箱』が東映からLDレーザーディスク)、VHSビデオ)で発売されました。

 『とんがり帽子のメモル』は、時間帯変更後も引き続き人気を集め全50話まで続き平均視聴率8.9%1986年3月に終了します。

②朝日放送・テレビ朝日系日曜8時30分『はーいステップジュン』(1985/3/10~1986/1/22 全45話) 

 後番組として、『とんがり帽子のメモル』と同じプロデューサーで脚本も同じく雪室俊一が担当の大島やすいち原作『はーいステップジュン』がスタートしました。

1986年3月発行 社内報『とうえい』第295号

 この作品は、大島やすいち講談社週刊少年マガジン』に読みきりで発表した後、月刊誌『マガジンSPECIAL』に連載、また『なかよしデラックス』(作画/阿部ゆたか、原作/雪室俊一、原案/大島やすいち)でも連載された漫画が原作です。
 アニメ版には、キャラクターデザイン小松原一男、美術デザイン窪田忠雄、シリーズディレクター設楽博、シリーズディレクター補として佐藤順一を起用し制作にあたりました。
 音楽は前作と同じく青木望で、オープニングテーマ 「びん感かん!メカニック」(作詞篠塚満由美/作曲芹澤廣明/編曲 川上了)、エンディングテーマ「ライバル360度さんびゃくろくじゅうど~恋愛発展可能性0れんあいはってんかのうせい ゼロ~」(作詞・作曲古田喜昭 / 編曲川上了)は、 小林明子(「恋におちて -Fall in love-」の小林明子とは別人)、小林直子姉妹が歌っています。
 第26話から東映動画のプロデューサーが旗野から勝田稔男に代わりました。

 この作品もヒットし、日曜の朝番組にかかわらず平均視聴率10.5%と前作以上の人気を集め全45話続きます。

 そしてこのシリーズの終了後、再び東映動画オリジナル作品メイプルタウン物語』がはじまりました。

1986年3月発行 社内報『とうえい』第306号

③朝日放送・テレビ朝日系日曜8時30分『メイプルタウン物語』(1986/1/19~1987/1/11 全52話)、『新メイプルタウン物語 パームタウン編』(1987/1/18~12/27 全50話)

 1985年3月、玩具会社エポック社は女児向け玩具「シルバニアファミリー」を発売。動物の一家をモチーフにした小型の人形とドールハウスは、この年のヒット商品番付に選ばれるほど大ヒットします。
 この人気に対抗するべく動物一家をモチーフにバンダイが開発した商品「メイプルフレンド」の販促として企画されたアニメ番組が『メイプルタウン物語』でした。

『メイプルタウン物語』
©東映アニメーション

 プロデューサーは鍋島ABC)、春日東旭通信社旭通)、山口康男東映動画)に、アシスタントプロデューサーとして佐川祐子旭通)、高橋尚子東映動画)が付きます。
 脚本は朝倉千筆他、キャラクターデザイン二宮常雄、美術デザイン小林祐子有川知子、シリーズディレクターには佐藤順一を起用しました。
 「あなた」の小坂明子が音楽を担当し、オープニングテーマ 「メイプルタウン物語」、エンディングテーマ「パティの日曜日」と初めてアニメの主題歌を作詞、作曲します。
 両曲とも編曲は信田かずお、『とんがり帽子のメモル』の山野さと子が明るく歌いました。

 1986年7月公開の「東映まんがまつり」では劇場版新作メイプルタウン物語』が上映されます。

1986年7月「東映まんがまつり」『メイプルタウン物語』脚本朝倉千筆・監督貝沢幸男
©東映アニメーション

 カナダが舞台の『メイプルタウン物語』は1年間全52話続き平均視聴率11.8%と大ヒット、玩具「メイプルフレンド」の売り上げも好調でした。

 1987年1月、最終回で引っ越したアメリカの西海岸を舞台にした続篇『新メイプルタウン物語  パームタウン編』が始まります。

『新メイプルタウン物語 パームタウン編』
©東映アニメーション

 今作では、ABC鍋島、旭通の春日佐川がプロデューサー、山口は企画を担当しました。
 脚本は朝倉他、オリジナルキャラクターに有川二宮、美術デザイン小林、前作で7話作画監督を務めた安藤正浩をキャラクターデザイン、シリーズディレクターには設楽博を起用します。
 音楽も好評だった前作に引き続き小坂明子が任され、オープニングテーマ「南の国のパームタウン」、エンディングテーマ「もっとフレンド」の作詞作曲を行い、両曲とも編曲は有澤孝紀、今作も山野さと子がさわやかに歌いました。

 1987年3月公開の「東映まんがまつり」では、前作の最終回と今作の第1話を再編集した『新メイプルタウン物語 パームタウン編 〜こんにちは!新しい町〜』が上映されます。

 この年『メイプルタウンの交通安全』(柳川茂脚本・久岡敬司演出)『メイプルタウンの消防隊』(柳川茂脚本・山吉康夫演出)2作の教育映画も制作されました。

 10月11日第39話から後半15分に『ビックリマン』が放映され、番組タイトルが『新メイプルタウン物語とビックリマン』に替わります。

 『新メイプルタウン』は1年間全50話続き、『ビックリマン』が加わったこともあり、平均視聴率13.9%と大ヒットしました。 

 エポック社シルバニアファミリー」、タカラ3年2組のなかまたち」、ヨネザワプリムプラム」など同様な商品が市場にあふれたこともあり、バンダイメイプルフレンド」と提供番組「メイプルタウン物語シリーズ」は終了します。

 その後この枠では第1期研修生貝沢幸男がシリーズディレクターを担当した『ビックリマン』(1987/10/11~1989/4/2 全75話+SP1話 平均視聴率14.2%)、『新ビックリマン』(1989/4/9~1990/8/26 全72話 平均視聴率14.1%)とヒット作が続きました。

1988年3月 「東映まんがまつり」『ビックリマン』冨田祐弘脚本・角銅博之監督
©LAD・NAS・東映アニメーション

 『とんがり帽子のメモル』から始まったABCニチアサ8時30分アニメは、現在の『わんだふるぷりきゅあ!』まで絶えることなく続いています。

 『メイプルタウン物語』でシリーズディレクターとなった佐藤順一は、その後『悪魔くん』『もーれつア太郎』『きんぎょ注意報!』、そして「美少女戦士セーラームーンシリーズ」や『夢のクレヨン王国』のシリーズディレクターとして活躍しました。
 1998年東映動画を退社した佐藤は、『ケロロ軍曹』など他社作品でも多くの名作を監督します。
 また、退社以降も『おジャ魔女どれみ』や『HUGっと!プリキュア』など東映動画東映アニメーション作品のシリーズディレクターを務めました。
 2023年には東映アニメーション制作のNetflixアニメ悪魔くん』の総監督を担当するなど、佐藤順一は現在に至るまでアニメ演出家として幅広い活動を行っています。

1994年12月 「東映まんがまつり」『おさわが!スーパーベビー』佐藤順一監督
©東映アニメーション

 演出家志望第1期研修生では、佐藤順一のほか「ドラゴンボールシリーズ」の西尾大介、「ビックリマンシリーズ」の貝沢幸男、「おしりたんていシリーズ」の芝田浩樹などの人材が、数多くの作品のシリーズディレクターを担当、今もアニメ演出家として活躍しています。また「キン肉マンシリーズ」などを担当した梅澤淳稔(あつとし)は、プロデューサーに転進した後に東映アニメーション執行役員に就任するなど、研修生それぞれが東映動画を支える存在となりました。

トップ写真:『とんがり帽子のメモル』©東映アニメーション