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あれ?!地元の人たちNPCなんかな!?

「新宿から1時間ほどしか離れていないけど山村」に暮らし始めてぼちぼち5ヶ月ってところ。ライブアーティストのT夫妻を訪ねにこの山村に初めて訪れたのは昨年の冬のまっただなか。当時は京都に似てるからって渋めの神楽坂に住んでたんやけど、ある夕方きゅうにドライブっちゅうのんしたなってカーシェアリングで速そうな車借りて向こうた。印象としてはタンって首都高乗って、スーっと中央道進んで、ハッと降りて、ツルツルって山入ってったらついた感じ、1時間くらい、思うてたより近い。なんか自分カッコええなぁ、「京都」「神楽坂」「ドライブ」「カーシェアリング」「首都高」とかいう言葉はいってるだけでごっつ特別なことしてる感じやん、しかも「きゅうに」思いついて「近い」とか言っちゃってるし擬音語おおいし。やっぱりカッコええのってバタ臭いなぁ。カーシェアリングとかなんとかエコノミストな感じするけど車買う金ないし駐車場も高いしやーていうてるやん。
そこで、まぁ、そこの山村が気に入って暮らし始めることになったのです。
正直その日、到着したのが夜、出発したのが夜明け前だったから、自分がどこを気に入ったのか具体的には説明できないですね。夜ついて夜明け前に帰るツアーなんてのはなんか雰囲気がええんでしょうな。雰囲気一発勝負で。

ほんまは深い気付きの話しよおもてたのに、ごっつ軽なってしもた。

暮らし始めて5ヶ月。今日、近所の材木屋さんに家の大黒柱買いにいってる時に気づいたんやけど

この集落の人たち、異常にこの集落に詳しい。

僕の暮らすうちは、山深い集落Yのなかでも「Yの銀座」と呼ばれる地区にあります。となりのとなりに郵便局があったり、向かいが床屋さんだったりするんですが、まぁ隣の家まで4〜50メートルくらいはありそうです。そんな銀座にある屋号がT屋と呼ばれる建物がマイハウス。そこは以前おばあちゃんが一人で切り盛りする「自分で会計を計算する居酒屋」兼「持ち込み自由の集会所」だった場所。非常に公共性の高いかつ非常に長い期間にわたって存在した場所のせいか、出会う人出会う人が皆、まったく様々な角度からその場所のことを、様々な時代に渡って説明してくださる。「手作りのところてんが美味かったんだよ」とまっとうな事から、「二階の窓から川に向かってしょんべんしてたわ」とやめてほしいです、やめてほしかったですといった事も。メニューのラーメンはサッポロ一番味噌ラーメンだったとか、しかもそれがなんだか家で作るより美味しかったなんて。建物の増改築をいつだれがしたか、裏の石垣は俺の親父がやった、川向こうから山水を引いてた、酢ダコはほんまにそれは紅かった、階段が狭いのはおばさんが小柄だったから、、、ほんとうに小学生の教科書1冊分くらいの歴史。この一軒でだ。
なんか自分がロールプレイングゲームの勇者になりたてで、村のNPC(人々)に話しかけるたびに、序盤物語の世界が組み立てられていくあの感じ。まぁ僕は母親が「任天堂爆破する」ってずっと言ってて、ゲーム機買ってもらえへんかったからスーファミのマリオはケース持ちながら攻略ビデオ見てた。けどロープレってそんなんやろ?プレステもってなかったけどメモリーカードだけ持っててん。

まぁそんで、最初はやっぱり自分の住んでる家に興味があるわけやけど、だんだんと外の世界(集落のこと)も気になってくるわけですよ。山から引いてる水道の水圧だとか、ハヤト瓜なる珍味の越冬発芽方法、役場の職員の前職、、、ありとあらゆる事象が。それがねぇ、全部返ってくるんですよ。
まだ暮らし始めて5ヶ月なのに、響いてますよ、重厚な物語が。

京都には30年近く暮らしたんやけど、なんていうか、その地域の奏でる物語の奥行きみたいなのにはあんまり意識させられんかった。あんだけ歴史ある古都やのに、もしかしたらありすぎるんか、深すぎて逆に浅いんかな。やっぱり京都やったから登場人物が多すぎてまとまらんかったんか。親友のおばあちゃんが花街の三味線の先生とか、南禅寺最高とか、この本能寺前は違うとこにあったんやでとか、地下鉄不便やなとか、バス混んでるなとか、なんか単発のネタが連発する感じ。

それがこの集落Yでは全てが繋がってて、ハーモニーがある。
みんな自分の住む村についての知識の偏差値80。ぼく40。

いゃあ、やっぱり面白いんだわ、ここでの暮らし。



新宿も足震えるくらい最高やけど。