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マイ包丁

夫婦でキッチンに立つせいか、娘は早いうちから料理に興味をしめした。
はじめにピーラーで人参を鉛筆のように細く削ると、味をしめたようで何でもピーラーで削りたがり、夕飯作りも必ず手伝ってくれるので、我が家の野菜料理は皆しばらく細くなってしまった。


ピーラーに満足すると、次は包丁を使いたいと云いだした。
いい機会だと思い、マイ包丁をプレゼントすると大満足。6才の誕生日にハンバーグを作りたいと云って、妻に教わりながら挽肉からコネコネし、ハンバーグをつくってくれた。
そうして、定期的に台所へ立つようになり、毎日のご飯の一品を担当してくれたりした。


姉の姿が楽しそうだったのだろう。
息子も包丁がほしいと云いだしたので、マイ包丁を贈った。
息子はマイ包丁に慣れると、大人用の普通の包丁にも興味を示し、使うようになった。
やはり6才の誕生日には餃子作りをしたいと云い、妻にサポートしてもらいながらも生地づくり餡づくりから作ってくれた。
すると、姉弟で台所に立つようになり、二人で夕飯を作ってくれたりもした。


今は、平日の夕飯を妻と娘が担当してくれ、週末はぼくが担当している。
息子は部活の時間が夕飯作りを許してくれず、今のところ決まった担当はないが、昼食やちょっとした合間に自分の分はサッとつくって食べているようだ。


食事作りは、生きるための基本能力だ。
人間は食べなければ生きていけない。
そんな、当たり前は、今、ないがしろにされている。
どこのだれが作ったのか判らないモノを、何が入ってるか判らないモノを、便利だから、安いから、パッケージがキレイだから、おしゃれだから、有名店の名前がついているからと中身をチェックすることなく購入し、平気で食べる。
怖くないのだろうか。企業の儲けに自分の命を預けてしまっている事が。


できたよ~、と娘と息子がニッコニコで叫んだ。
目玉焼きとサラダと野菜炒めとお味噌汁。
おおおお、すごいじゃ~ん。おいしそ~。
でっへっへっへ、と二人とも照れくさそうだ。


いっただきま~す、とみんなで食べはじめる。

んん?んんん~? あれえ?
あ、味付けしてないや。

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