
『波止場日記』抄②
十一月四日
朝食の時、ある節でとりあげる行動力と創造力の対立の問題を考えた。一般に、発現を阻止された行動への衝動が、創造力に転化するのである。全然何もしないことが自動的に文学、美術、音楽等々を発現させるのではない、行動にかりたてる熱烈な欲求と、その現実化が不可能な事態がなければならない。このような妨害をうけた人間が、個々の天賦の資質によって、革命家とか、作家とか、芸術家とかになる傾向がある。どのような見方をしても、創造力は内的な緊張から生れるものである。この緊張に加えて、さらに才能がなければならない。才能が全くない場合には、緊張はそのはけ口をさまざまな行動に求めることになる。
蒙を啓かれるなあ。